(以下引用)
菊池桃子さんがPTAに問題提起 「よく言ってくれた」共感広がる
菊池桃子さん「PTAは任意」 発言に広がる共感なぜ?
学校のPTAは、入っても入らなくてもどっちでもいいはずなのに、全員参加の雰囲気がある――。先月、タレントの菊池桃子さんのこんな趣旨の発言が、ネット上で話題になった。活動するもしないも個人の自由のはずなのに、なぜPTAの世界ではそれが難しいのか。
■共感の投稿相次ぐ
菊池桃子さんがメンバーを務める政府の「1億総活躍国民会議」終了後だった。発言は3月25日にあった会議で語った内容を明らかにしたものだ。ネット上で注目され、ツイッターには「よく言ってくれた」「正論だ」など共感するコメントが相次いだ。
菊池さんの発言に反響があったのは、PTAが一般的には「事実上の強制加入」だからだ。子どもが入学すると、入会するかどうか意思確認をせずに自動的に会員としたり、退会の規定がなかったりする学校がほとんど。会員になるだけでなく、「全員が一度は役員を」「一人一役」といったルールもある。活動を休んだり役員を断ったりすると、「不公平だ」「授業参観には来るくせに」などと言われることもあるという。建前は「任意」でも、「入会しない」選択は難しいのが実情だ。
この春に東京都世田谷区の小学校に長女が入学した女性(33)は、入学前の学校説明会でPTAの説明を受けた。入会の意思確認は何もなく、「毎年一つは係をしてもらいます」などと書かれた紙が配られた。PTA活動は任意と聞いたことはあったが、「子どもに何か不利益があったらと考えると、参加しないと言い出せる雰囲気ではなかった」。
■「加入義務はない」
首都大学東京の木村草太教授(憲法学)は「PTAに加入する義務は法的にはない。憲法21条が保障する結社の自由は、加入しない自由も保障している。任意であるものを強制かのように見せたり、子どもへの影響をちらつかせて強制したりすれば、詐欺や脅迫行為だ」と指摘する。
2014年には、熊本市内の男性がPTA加入の際に意思確認がなかったことを不服として、会費の返還などを求めてPTAを提訴するという訴訟沙汰になったこともある。熊本地裁は今年2月に請求を棄却したが、男性は控訴している。
大津市が今春、市内55の小中学校を対象にアンケートを実施したところ、8割の学校がPTAが任意団体であることを保護者に説明していなかった。会費の徴収方法も、2校をのぞくすべてが「学校徴収金と同時に保護者口座から引き落とし」だった。子どもの学習のためのお金と一緒くたに集めていることも判明した。
■規約に明記の動き
そんな中、任意性のあいまいさを問題視する動きも出ている。
横浜市PTA連絡協議会は今月13日に開いた新任PTA役員向けの研修会で、任意性の指導をした。任意性を取り上げるのは今年で5年目。だいぶ浸透してきたという。浜松市内には、今年度から規約の冒頭に、「入退会は自由」と明記した小学校がある。今年4月までPTA会長を務めた越智浩さん(50)は「入会申込書もなく、『入って当然』という雰囲気がまかり通っていた。規約は自由な活動への第一歩だ」と話す。
「運営からトラブル解決まで PTAお役立ちハンドブック」著者でフリーライターの田所永世さん(41)は「フルタイムで働く親が増えているのに、専業主婦を前提としたまま。『参加しにくい』『入りたくない』と感じる人が増えている」と指摘したうえで、「必要なのは、無駄な活動を見直し、負担を軽くすることで、さまざまな環境の人が参加しやすい形にしていくことだ」と話す。
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■菊池桃子さんの発言要旨
働く母親にとって、PTA活動の負担が大きく、仕事に支障を来しているとの声があがっている。任意参加なのに全員参加することが暗黙の了解となっているケースが多い。政府が積極的に関与・指導をし、女性の就業問題の議論を深めて欲しい。
(朝日新聞デジタル 2016年4月27日05時00分)