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佐野事件についての中仕切り(あるいは総括になるか)

佐野研二郎問題について、「はてなブログ」から転載。
書き手はデザイン業界の一員だが、しがらみは少ないのである程度自由に発言できる、ということで、今回の問題について一番客観的な意見ではないだろうか。
記事の中で、「ネットで話題になった扇のエンブレム」というのがよく分からない。ネット記事を詳しく見ているわけではないから、勘違いかもしれないが、それが「涼」の字の「口」の部分を団扇にした「ポスター」(エンブレムではなかったと思う。)を、団扇を扇に変えたあれを指すならば、あれは「改悪」だと私には思えたのだが、プロはそうは見ないのだろうか。だが、「エンブレム」と言っているから、別に扇を使った作品があるのかもしれない。
なお、佐野事件がここまで紛糾したのは、何よりも、あの五輪エンブレム自体が冴えない、低レベルな作品だったという意見があるが、私もそれに同意見である。下の文章の書き手もあのエンブレムのレベルの低さはある程度認めてはいる(レベルが低いと言わず、「一般受けしない」と言う言い方は、プロの「上から目線」を感じさせて不愉快だが。)ようだ。「今後の展開やブランディングを視野に入れて」のものだろう、というあたりが「プロ」らしく聞こえるが、それ以前に、あんなダサイ作品では日本の恥だろう。ネットがあれほど過熱したのは、まさにあれが「国辱」だ、と思ったからではないか。特に、「日の丸」の扱いがひどい。


(以下引用)

2015-09-01

佐野氏のこと

追記しました。


http://anond.hatelabo.jp/20150904121847



都内で細々と自営のデザイン屋をやっております。今回のエンブレムの騒動もここにきて(とりあえず)一つの区切りがついたようなので、この一連の出来事において個人的に感じたことなどを忘備録も兼ねて書き留めておきます


まず、佐野研二郎という人物についてですが、今回の騒動でまぁ国民に広く知れ渡るほどの知名度を得ましたけど、デザイン業界においてはスーパースター的な知名度が元からありました。まぁサッカーの日本代表スタメンに入るようなイメージですかね。ちなみに僕はJ2にも入れないぐらいですね。サッカー観ないからよく知らないけど。まぁ所詮業界内だけのことを国民的なスポーツに置き換えるのもアレなんですけど。


で、そんな彼がこんな形で騒がれ始めて、まるで自分自分のやってる仕事に対していちゃもんつけられてるような気になって一人で勝手に心を痛めていたわけです。しばらくは。


今回のエンブレムが発表されて最初に感じた個人的感想は「これはちょっとやばいぞ」でした。何がやばいかというと、一般ウケしないのは一目瞭然だったんですよ。まぁ皆さんがダサい理由としてあれこれ上げてらっしゃることと同じ理由で。でも選ばれた理由幾何学的な要素だけで構成された、今後の展開やブランディング視野に入れてのことなんだなというのは初見でなんとなくわかりました。


はいえですよねぇ。今回のオリンピックボランティアユニフォームはダッセーって騒ぎになったしスタジアムはまぁあんなゴタゴタですし。もっとかのぼるとAKB開会式に出すんじゃねーの?やめてよね!みたいな機運もあったり。もっとかのぼると、そもそも毎回オリンピックやるたびに選手団ユニフォームダサいって槍玉に挙げられてるし。もう国民感情ちょっとでも変なもん出したらただじゃすまねーよって空気が既に醸成されてたわけですよ。


そんななかあのエンブレムでしょ。「こりゃやばいぞ」と思うわけです。


でも正直ここまで大ごとになるとは思ってなくて、なんだかんだいって世間も落ち着いて、そのうちあのエンブレムがいろんな使われ方をして面白い展開がされていくなかで、徐々に世間から受け入れられていくんだろうなと楽観してたんですよね。


ダサいかダサくないかは正直これからの使われ方次第、というのが僕のデザイナーとしての見方でした。


そこにきてあのベルギー劇場ね。パクりかパクりじゃないかというと、個人的見解としてはパクりじゃないですねアレは。


ただ、あのとき記者会見で完全な悪手を打ったのは間違いないです。どういうことかというと、デザインプロセス素人にもわかるように説明しなかったからですね。


例えを出すと、アルファベットの「E」とカタカナの「ヨ」、ひっくり返ってるだけですごく似てますよね。でもこれらはまったく違う文化文脈プロセスを経てたまたまアウトプットが似てしまっただけなのはわざわざ説明するまでも無いんだけど、これぐらい明確に多くの人が納得出来るアウトプットまでのプロセスを開示してくれれば良かったんです。(ダサいダサくないは別な議論として)


ちなみにこの辺りではまだ僕は100%佐野さん擁護立場でした。


そのあとトートバッグの件とかあれこれパクりだなんだと掘り返されてく騒動を見てて、明らかにいちゃもんだろってのも多かったんですけど、こりゃ完全に黒だわってのもボンボン出てきて。ほんと正直な話をしちゃうと、程度の差はあれネットから無断で画像拝借して勝手に使っちゃうって経験ほとんどのデザイナーにあると思うんですよ。


からトートバッグの頃まではもちろん悪いことだけど同情も禁じ得ないみたいなね。下のデザイナー勝手にやっちゃったんだろうなーと。だからこの辺までは個々の問題は切り分けて議論すべきという立場で、まだ擁護派でした。


でもそのあとさすがに出てきすぎだよね。僕ぐらい小さな仕事しかしてないデザイナーでも人の目に触れるような仕事では他人の素材を勝手に使うのは怖くて出来ないのによくやるなーと。お客さんによっては「予算無いから素材購入はそっち持ちで。撮影?無理無理www」みたいなのとか「ネット画像適当に使っちゃってよ、どうせバレないっしょwww」なんてケースもけっこうあります。やんないけど。でもあれほどのビッグクライアントがそんな予算渋るとは思えないしね。あり得ないよね。


で、佐野氏を結構擁護してた僕なんですけど原案を見て「もうダメだわ」となりました。


だって当初発表していたデザインコンセプト自体が後付けだったってことがはっきりしちゃったので。亀倉さんへのオマージュなんてどこにも無いじゃん!みたいな。あー、どうりで最初の会見でプロセスをはっきり説明出来なかったんだなーと。この時点でもう擁護するのが面倒になりました。心ももう痛まないです。


まぁ結果的に取り下げになったのは佐野氏にとっても委員会にとっても国民にとっても良かったんじゃないかなと思います。というか空港画像の件、取り下げる理由を探してた委員会としてはとても良い言い訳が見つかってホッとしてるんじゃないかなと。


話がまとまってないけど、あのネットで話題になった扇のエンブレムね。あれを汚いって中島英樹氏は言ったけど、あれはデザインが悪いという意味とはちょっと違いますね。多分だけど。あれはあの丸のレイアウト幾何学的な法則性がなくて、なんとなく配置してるだけなんですよ。だから揃うべきところが揃ってない。あと配色もなんとなくで決めてるのがわかりますしね。その点佐野氏のデザインは円と正方形のみでちゃんと計算されたエンブレムなので、そういう意味での完成度は明らかに違います。(ダサいダサくないは別な議論として)


最後に「デザインわからん素人は黙ってろ」というこっち側人間に多く見られた反応ですけど、あれは呪詛ですよ。絶対にやってはいけない。


僕もネットの心無い書き込みを見て「素人がなんも知らんくせに」という感情が何度も湧き上がったのは正直に告白します。でもそれを言ったらもう終わりなんですよね。わからんやつは黙ってろじゃなくて、わからせるためにこっちは何が出来るか、わかってもらうための努力まで込みで考えてものを作るのがデザイナーアートディレクター仕事だと思うんです。


から出産直前で佐野擁護発言をした森本氏がこれから新しい命が誕生する前になんでこんな呪詛を振りまくんだろうと不思議で仕方なかったです。あれなんて典型的な「素人黙れ」発言だったので。


普段あまり文章を書く習慣の無い人間ありがちな、非常にまとまりのない文章すみませんでした。


でもデザイン業界側の人間で僕みたいな捉え方してる人ってわりと多いんじゃないかと勝手に思ってるので、多少そんな人たちの代弁ができたんだとしたらいいなと思ってます


おまけ:マスコミは全部ネットの後追いしてるだけで、彼ら仕事してないよね。


追記も併せてぜひ。


http://anond.hatelabo.jp/20150904121847






(夢人補足)「扇」の件は下記の話なのか、よく分からないが、もし下の話なら、佐野氏のデザインは「改悪」だ、と私は見る。
団扇を使ったデザインは、団扇を含む字全体がうまく「涼」の字を作っていて、面白い。ただ、周囲の字が(必要に迫られたとはいえ)邪魔になっているだけだ。
佐野氏のデザインは扇を無理に「口」にあてはめた時点で無理がある。扇の三角形では「口」の四角形を連想させることは困難だし、元デザインのように、団扇の柄の部分が字の一部を形成するという巧みさも無い。涼の字のバランスが全体で崩れているのも見苦しい。「小」の字の右の点を縦にして滴(しずく)にしたのも生きていないと思う。字の形を壊して不細工にしただけだ。
さらに言えば、元のデザインは「涼」の字が、うまく「かすれ」ていて清涼感があり、「さんずい」の下の点の形も、鋭く跳ね上がる水の感じがあって、佐野氏のものよりずっといいと思う。(これは「小」の字の点も同じ。佐野氏のものはどよんとしている。)微妙な差だが、書家はどう思うか、聞いてみたいものだ。
こうして並べると、元のポスターの良さだけが私には感じられるのだが、「プロ」のデザイナーの意見は違うのだろうか。そうすると、ここでも「専門家」が一般大衆から遊離した感覚になってしまっている、ということではないか。



佐野氏デザインまた「酷似」 京都の老舗、ブログから削除へ

京都新聞 9月2日(水)23時10分配信

 2020年東京五輪・パラリンピック公式エンブレムの撤回を受け、扇子製造販売老舗の京扇堂(京都市下京区)は2日、エンブレムを制作したデザイナーの佐野研二郎氏が2012年5月に雑誌で発表した社名入りのデザインに転用の疑いがあるとして、ホームページのブログから削除することを決めた。
 雑誌に掲載されたデザインは、「涼」の「口」部分に扇子の画像をあしらい、「京扇堂」と記している。京扇堂によると、雑誌の企画で出版社から社名使用の依頼を受け、許可したという。京扇堂の文字は商標登録済みだった。
 このデザインに似ているのが秋田県横手市で12年6月にあった団扇(うちわ)展の宣伝チラシで、「涼」の「口」部分が団扇の絵になっている。主催した横手駅前商店街振興組合によると、チラシは雑誌発売前の5月から公開していたといい、「似ていて驚いた」という。
 京扇堂の斉木健雄専務は「当時は社名を貸してほしいと言われただけだった。酷似しており、困惑している」と話している。



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