Sonia Ossorio of NOW-NYC addresses the crowd at a protest against US laws allowing child marriage.
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Sonia Ossorio of NOW-NYC addresses the crowd at a protest against US laws allowing child marriage.  © 2016 Susan Landmann


(ニューヨーク、2017年2月14日)—ニューヨーク州議会と知事は、ニューヨーク州の児童婚に終止符を打つための法案を支持すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは同州の政治家に宛てた書簡内で述べた。 2001年〜2010年の間にニューヨーク州で結婚した18歳未満の子どもは3,850人にのぼる。
 


児童婚とは、18歳以下のすべての婚姻のこと。ニューヨーク州の現行法は結婚が認められる婚姻適齢を18歳以上と定めているものの、16歳・17歳の子どもは保護者の許可、14歳・15歳の子どもでもそれに加えて裁判官の許可を得られれば、例外的に結婚することができる。米国の州の大半で、一定の条件がそろえば18歳未満の結婚が許可されている。


ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利担当上級調査員ヘザー・バーは、「ニューヨーク州が14歳の結婚を認めているのは、正直言って衝撃的だ」と述べる。 「このような法律は世界の流れに逆らうものだ。児童婚率の高い国でさえ、18歳未満の結婚が有害であるとの認識が一般にあり、法改正などによる児童婚廃絶の努力が進められている。」




It is frankly shocking that New York permits the marriage of 14-year-olds. Such a law is out of step with the rest of the world. Even in countries with high rates of child marriage, there is usually recognition that marriage under age 18 is harmful, and an effort to prevent these marriages, beginning with reforming the law. 
Heather Barr

Senior Researcher on Women’s Rights



法案A.5524は、2017年2月10日にニューヨーク州議会へ提出された。17歳未満の結婚を禁ずることで児童婚率を減らすことを目指すものだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは全米女性連盟(NOW)Sanctuary for FamiliesTahirih Justice CenterUnchained at Lastと協力し、ニューヨーク州の議員に対して同法案を可決するよう要請した。バージニア州では2016年6月に児童婚を抑制する法律が施行された。ニュージャージー州でも同様の法案が提出され、すでに議会を通過しており、メリーランド州もこれに続いている。


 


ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまで、アフガニスタンバングラデシュマラウィネパール南スーダンタンザニアイエメンジンバブエなどの国々で、既婚の子どもたち数百人に対する聞き取り調査など、世界各地の児童婚問題に関し広範な調査を行ってきた。また、インドネシアイランイラクマレーシアナイジェリアパキスタンサウジアラビアなどの国々で、児童婚の廃絶を提言している。これらの国で14歳の結婚を法的に認めているのはイラン、サウジアラビア、イエメンのみである。


世界的では少女の4人に1人が18歳未満で結婚。毎年1500万人の少女が18歳未満で結婚している。18歳未満で結婚し、今日まで存命の女性の数は7億2000万人で、男性は1億5600万人。児童婚率は低下しているものの、世界人口が増加し続けるなかで、仮にこれが今日のペースで続いていく場合、2050年までに子どものうちに結婚した女性の数は12億人にものぼる計算だ。児童婚は世界各地のどこにでも存在する。既婚者の圧倒的多数は少女であり、配偶者は年上であるのが一般的だ。時にかなり年上の配偶者と結婚するケースもある。





積み重ねられた調査の結果が示すのは、いかなる場所においても、児童婚が子どもに悪影響を及ぼし、その害は時に重大であるということだ。2010年の調査の結果、19歳未満で結婚した米国の少女または若い女性の高校中退率は、そうでない女生徒よりも50%超高く、大学を卒業できない可能性も4倍と判明。そして16歳未満で結婚した少女たちは、のちの人生で貧困に陥る可能性が平均より31%高い。また児童婚と精神的・身体的健康障害との密接なつながりも明らかになった。ある調査結果によると、米国で10代のうちに結婚した女性の発病リスクは、平均より23%も高い。米国以外での調査では、児童婚と家庭内暴力との相関関係も示されている。虐待的あるいは不幸な結婚から逃れることは、多くの少女にとって成人女性よりも難しいことであり、かつ避難シェルターや法的支援といったサービスにアクセスするにもより困難が伴う。


 


前出のバー上級調査員は、「児童婚が子どもやその家族に重大な危害を加えていることはこうした調査からも明らかだ」と指摘する。「米国は対外支援プログラムを通じて、アフリカやアジアといった地域での児童婚廃絶で促進に指導的な役割を果たしてきた。それなのに米国の州レベルで児童婚が依然として継続している事実は衝撃に価する。」


保護者が少女に結婚の圧力をかけたり、強制している場合は、ニューヨーク州が保護者の同意を義務づけても子どもの保護にならない。ニューヨーク州の現行法では16歳未満の児童婚にのみ法的審査が求められているが、そもそも16歳未満の結婚など、いかなる条件下でも認められるべきではない。





児童婚は複雑な問題であり、その廃絶には政府の強力な指導力が求められる。同時に社会的な変化をもたらすために、宗教指導者やNGO、地域社会と政府の連携も欠かせない。しかし、政府と指導的立場の人間が、児童婚の問題性を認識して受け入れることがもっとも重要だ。この問題は協調的な取り組みを通じてこそ、解決されうるものだ。



バー上級調査員は、「飲酒や入隊、銃の所有にある年齢制限と同じ基準を婚姻年齢にも適用して子どもを保護する必要がある」と指摘する。「婚姻適齢を18歳以上とすることへのコンセンサスは、世界的に高まっている。」