昨日から世間は意味不明の「ヒッグス粒子」のことで騒いでいるので、井口博士が何か解説してくれるかな、と期待していたが、まだ書いていない。そこで、「In deep」からヒッグス粒子の意味ではなく、「ヒッグス粒子報道の意味」を説明した文章を転載する。
まあ、たいていの科学記事というか、「何かが発見された(らしい)」という記事はたいていが大学や研究所の予算獲得のための宣伝活動である、ということだ。マスコミもそれが分かっているくせに、ニュースの無害な埋め草で、場合によっては「科学的詐欺ビジネス」にもつながるので大いに協力するわけである。どんなものであれビジネスが拡大することが社会上層部にとっての「最大善」なのだから。
ついでに、「ローマの歴史」(I・モンタネッリ著)という面白い本の一節を紹介する。
「メルクリウス(夢人注:マーキュリーのこと)。商人、弁論家、泥棒の守護神。ローマ人はこの三種の職業を同一視していた。」
経団連や橋下がメルクリウスを信仰しているかどうかは知らない。
(以下引用)
というわけで、またどうでもいい話から始まりましたが、帰ってみると、CERN のニュースは確かに大きく報道されているのですが、その見出しを見て、「またか」と、思いました。
ヒッグスに関しては「永遠にこの繰り返し」でもいいのかも
ヒッグスに関しての報道は見られた方も多いと思いますが、これらの見出しが並びます。
「発見か?」
「~とみられる」
という文字が続きます。
英語だと下のような「99パーセント、ヒッグスに違いない」などが並びます。
実は一昨年からずっとこの繰り返しなんですが、なんとなく不思議な感じがしませんか?
つまり、普通の、他のいろいろな科学の発見で、「~と見られる」とか「発見か?」とか「ほぼ間違いないと思われる」というような暫定段階での研究成果がこんなに大きく報道されることがあるでしょうか。
普通だと、科学的発見というのは、
「確定」
ということになって、大発表になるはずだと思うのです。
報道では、
CERNは統一見解で、暫定的な結果としながらも「新粒子を観測したことは画期的で、その意味は非常に重要だ」と強調。年内にもヒッグス粒子かどうか確定するとの見通しを示した。
とあり、「暫定的」と自ら述べて、さらに、「年内にも確定」と、確定していないことを宣言しています。
それがどうして、こんなに大きく報道されるのか。
その理由はいくつかあると思いますが、ひとつは報道側が、この「新しい神の登場」の重大性をあまり意識していないということもあるかもしれませんが、それよりも「何らかの強力なプッシュ」はあるのだと思います。
プッシュというか、「報道してほしい」と。
どうしてか?
どうして暫定結果を世界的報道としなければならないのか。
ここからは否定的な意味で書くのではなく、こういうことはすべての科学の研究には必要なことなんですが、「予算の確保」なんです。 CERN は世界で最も大きな予算を編成している科学組織で、年間予算は大体 800億円~1000億円くらいです。
下の収支は10年くらい前のものですが、以後も大体同じような予算です。スイスフランで書かれてありますが、非常に大ざっぱにというと、この数字に「億円」をつければ、桁としての大体の目安となると思います。
これを見ると予算のほとんどが「加盟国からの分担金」でまかなわれていることがわかると思います。つまり、単独運営をしている組織ではないのです。
コトバンクの CERN には以下のようにあります。
この分野の実験的研究には巨大な粒子加速器が不可欠であるが,加速器の建設には莫大な費用がかかるので,アメリカとソ連以外の国は単独ではこの負担に耐えられない。
この「加速器」とある中の、LHC というものには2兆円などの莫大な予算がかかっています。
上に「ソ連」とあるのは、CERN が創設された 1950年代はロシアは旧ソ連だったからですが、上にあるように、この CERN というのは、各国から予算を集めて運営している組織です。
しかも、それでも赤字を計上したりしていて、とにかく、お金のかかる実験をしているのですが、いずれにしても、「成果を出し続けていかなければならないという宿命」を負っています。
1000億円といえば、南太平洋あたりの小国の GDP にも匹敵する金額で、決して小さいとは言えない額です。
特に資金を出している主体がヨーロッパの国々です。
それで、「今年は何の成果もありませんでした」というわけにはいかない。
現在のヨーロッパの経済的問題は書くまでもないと思います。
場合によってはユーロ崩壊などとも言われている中で、どこかの国の誰かが、
「CERN へ金出すのをやめればいいんじゃないか?」
と言ってそれを実行したら、他の国も追随してしまうわけで、そうすると CERN は機能しなくなってしまうのです。さすがに、今の経済状態の中で、科学研究に単独で 1000億円を出せる国はあまりないはずです。
なので、それを避けるために、 CERN は成果を発表し続けなければならない。
次々とノーベル賞クラスの発見をしなければならない。
そういうあたりが、暫定的な発表に繋がっているのだと思います。
正直、心情はよくわかります。
まあ、たいていの科学記事というか、「何かが発見された(らしい)」という記事はたいていが大学や研究所の予算獲得のための宣伝活動である、ということだ。マスコミもそれが分かっているくせに、ニュースの無害な埋め草で、場合によっては「科学的詐欺ビジネス」にもつながるので大いに協力するわけである。どんなものであれビジネスが拡大することが社会上層部にとっての「最大善」なのだから。
ついでに、「ローマの歴史」(I・モンタネッリ著)という面白い本の一節を紹介する。
「メルクリウス(夢人注:マーキュリーのこと)。商人、弁論家、泥棒の守護神。ローマ人はこの三種の職業を同一視していた。」
経団連や橋下がメルクリウスを信仰しているかどうかは知らない。
(以下引用)
というわけで、またどうでもいい話から始まりましたが、帰ってみると、CERN のニュースは確かに大きく報道されているのですが、その見出しを見て、「またか」と、思いました。
ヒッグスに関しては「永遠にこの繰り返し」でもいいのかも
ヒッグスに関しての報道は見られた方も多いと思いますが、これらの見出しが並びます。
「発見か?」
「~とみられる」
という文字が続きます。
英語だと下のような「99パーセント、ヒッグスに違いない」などが並びます。
実は一昨年からずっとこの繰り返しなんですが、なんとなく不思議な感じがしませんか?
つまり、普通の、他のいろいろな科学の発見で、「~と見られる」とか「発見か?」とか「ほぼ間違いないと思われる」というような暫定段階での研究成果がこんなに大きく報道されることがあるでしょうか。
普通だと、科学的発見というのは、
「確定」
ということになって、大発表になるはずだと思うのです。
報道では、
CERNは統一見解で、暫定的な結果としながらも「新粒子を観測したことは画期的で、その意味は非常に重要だ」と強調。年内にもヒッグス粒子かどうか確定するとの見通しを示した。
とあり、「暫定的」と自ら述べて、さらに、「年内にも確定」と、確定していないことを宣言しています。
それがどうして、こんなに大きく報道されるのか。
その理由はいくつかあると思いますが、ひとつは報道側が、この「新しい神の登場」の重大性をあまり意識していないということもあるかもしれませんが、それよりも「何らかの強力なプッシュ」はあるのだと思います。
プッシュというか、「報道してほしい」と。
どうしてか?
どうして暫定結果を世界的報道としなければならないのか。
ここからは否定的な意味で書くのではなく、こういうことはすべての科学の研究には必要なことなんですが、「予算の確保」なんです。 CERN は世界で最も大きな予算を編成している科学組織で、年間予算は大体 800億円~1000億円くらいです。
下の収支は10年くらい前のものですが、以後も大体同じような予算です。スイスフランで書かれてありますが、非常に大ざっぱにというと、この数字に「億円」をつければ、桁としての大体の目安となると思います。
これを見ると予算のほとんどが「加盟国からの分担金」でまかなわれていることがわかると思います。つまり、単独運営をしている組織ではないのです。
コトバンクの CERN には以下のようにあります。
この分野の実験的研究には巨大な粒子加速器が不可欠であるが,加速器の建設には莫大な費用がかかるので,アメリカとソ連以外の国は単独ではこの負担に耐えられない。
この「加速器」とある中の、LHC というものには2兆円などの莫大な予算がかかっています。
上に「ソ連」とあるのは、CERN が創設された 1950年代はロシアは旧ソ連だったからですが、上にあるように、この CERN というのは、各国から予算を集めて運営している組織です。
しかも、それでも赤字を計上したりしていて、とにかく、お金のかかる実験をしているのですが、いずれにしても、「成果を出し続けていかなければならないという宿命」を負っています。
1000億円といえば、南太平洋あたりの小国の GDP にも匹敵する金額で、決して小さいとは言えない額です。
特に資金を出している主体がヨーロッパの国々です。
それで、「今年は何の成果もありませんでした」というわけにはいかない。
現在のヨーロッパの経済的問題は書くまでもないと思います。
場合によってはユーロ崩壊などとも言われている中で、どこかの国の誰かが、
「CERN へ金出すのをやめればいいんじゃないか?」
と言ってそれを実行したら、他の国も追随してしまうわけで、そうすると CERN は機能しなくなってしまうのです。さすがに、今の経済状態の中で、科学研究に単独で 1000億円を出せる国はあまりないはずです。
なので、それを避けるために、 CERN は成果を発表し続けなければならない。
次々とノーベル賞クラスの発見をしなければならない。
そういうあたりが、暫定的な発表に繋がっているのだと思います。
正直、心情はよくわかります。
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