引用した記事はまさに喜劇だが、どの国で起こっても不思議ではない話である。
(以下引用)
ロシア村長選で役場の清掃係が当選 無投票回避するため現職に出馬頼まれ
サラ・レインズフォード、BBCニュース(モスクワ)
ロシア田園地帯にあるポヴァリヒノ村で過去4年間、役場の床掃除を続けてきた女性が、使い慣れたモップを片付け、役場トップに当選した。
女性はマリナ・ウドゴズカヤ氏(35)。9月にあった村長選挙で、現職を再選させる目的で候補者リストに名前を載せたところ、なんと当選してしまった。
村には元警官で、与党・統一ロシア所属のニコライ・ロクテフ村長(58)という現職がいる。しかし、選挙が迫っても対立候補が出なかった。
そのままでは選挙にならないため、ロクテフ氏はウドゴズカヤ氏を説得。自分の「ライバル」候補者として届け出をさせた。
そうして投票日を迎えたが、ふたを開けるとウドゴズカヤ氏が62%近くの票を獲得。わずか34%の現職に圧勝したのだった。
当選に仰天
「ニコライ・ロクテフは誰も彼女に投票しないだろうと思っていた。そのまま自分が再選されると。しかし住民は彼にうんざりしていて、マリナ・ウドゴズカヤを選んだ」。地元選挙管理委員会のメンバーで匿名希望の女性は、BBCの電話取材で話した。
「ロクテフはびっくりしていたし、ウドゴズカヤは仰天していた!」と、匿名を希望したこの女性は笑いながら話した。
この女性は、ロクテフ氏がウドゴズカヤ氏に立候補を依頼したやりとりを、直接耳にしていたという。
ウドゴズカヤ氏の当選が全国的なニュースになると、同氏の電話は鳴り止まなくなったという。
「何もしなかった」
それ以来、ウドゴズカヤ氏は電話に出るのをやめた。そして、今週後半の就任まで、できるだけ目立たないように心がけている。
当選後まもないインタビューでは、自らを「フェイク(偽の)」候補だったと言い、急に村長になる「準備はできていない」と語った。
テレビ取材には、「住民が私に投票するとは思わなかった」、「私はまったく何もしなかったのに!」と話した。
まともな選挙運動をしなかったのは、現職も同じだった。ポスターやビラは作らず、有権者との集会も開かなかった。住民らは、どうせ全員が知り合いなのだから、選挙運動には意味がないとしている。
ウドゴズカヤ氏は今後、人口242人のポヴァリヒノ村の村長として、周辺のさらに小さな30村も併せて治めることになる。
一方のロクテフ氏はBBCに、「村長としてやるべきことはすべてやってきた。村には何の問題もなかった」と、落選を信じられない様子で語った。
「住民は明らかに変化を求めていた」
「村全体が応援する」
今回の選挙結果については、統一ロシア党への抗議の表明だとの見方が出ている。同党は全国的に支持率を落としており、ポヴァリヒノ村があるコストロマ州の議会選でも、得票率は32%にとどまった。
一方で、ウドゴズカヤ氏が当選したのは、職責を果たさなくなった現職への不満が高まったためとの声も聞かれる。
「彼女はやっていけると思う。村全体が応援する。もちろん、たくさん学んでもらう必要があるけど」と商店主のイリナは話した。
ウドゴズカヤ氏が村長就任を辞退できるかというと、容易ではない。彼女を支援したロシア年金党によると、もし就任を辞退した場合、再選挙の全費用を彼女が負担しなくてはならないという。
同党はウドゴズカヤ氏を、アクシデントで生まれた勝者ではなく、シンデレラのような人物として描き出そうとしている。
「彼女は役場で掃除人として働き、物事がどのように進められるのかを見てきた。もちろん彼女の内心では、政治に参加しようという気持ちがあった」と同党の広報は話し、経験不足は問題ではないとした。
「(ベラルーシ大統領選に立候補した)スヴェトラーナ・チハノフスカヤも主婦で、何も知らなかった! それが今や大人気だ」と、この広報は話した。
村長就任まで、ウドゴズカヤ氏は掃除人の仕事を続けると言われている。その間に、現職のロクテフ氏は村長室の荷物をまとめる。
「動転はしていない」とロクテフ氏は強調する。「住民は彼女に投票した。彼女に仕事をやらせるまでだ」。
「彼女がこれまで掃除していた場所の責任者となることに、何も悪いことはない。役場の何がどうなっているか、よく知っているのだし」