不思議なのは、子供たちが母親の教育方針にほとんど反抗や抵抗をしなかったらしいことで、9割くらいの「教育ママ」は子供の成長過程のどこかで子供の反抗に遭って挫折するのではないかと思う。
下の佐藤ママの場合は、自分自身の人生そのものを子供を東大に入れるという目的に特化し、いわば自分の人生を犠牲にしているわけだから、子供も「反抗する大義名分が無かった」わけだろう。子供自身は社会についての知識などゼロに近いのだから、親が「東大に行くことが絶対に必要だ」と言うなら、(他に大人を知らないなら)その言葉に従うしかない。周囲の同世代の人間も東大に行くことが最優先であるような進学校の生徒ならば、東大に行くことを否定する発言は「逃げだ」とされるだろう。
私が興味があるのは、この佐藤ママの教育の中で「読書」はどのように位置づけられ、どのようにコントロールされていたか、ということである。文学だろうがライトノベルだろうが漫画だろうが、社会や人生についての知識を与え、疑問を持たせ、哲学的煩悶に導くものだ。つまり、「精神年齢を高める」ものである。精神年齢が高まれば、どうしても自分の「受験ロボット」としての有様に疑問を抱くしかないだろう。では、そこをどうして潜り抜けさせたのか、興味深い。
なお、私は、この佐藤ママの行為は「人生の黄金期である子供時代と青春時代を単なる受験ロボットにした」という、非常に罪深い行為だと思っている。
いわば、子供を牢獄に閉じ込めたままで人生の前半を過ごさせたようなものである。子供の人生の後半がどのようなものになるかも予測できそうな気がする。
(以下引用)
息子3人東大の佐藤ママ、長女も理3合格! 娘が語る母への感謝 「恋愛よりスマホが一番の敵だった」
withnews 3/10(金) 17:19配信
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東京大学の合格発表が10日、本郷キャンパス(東京都文京区)でありました。息子3人が東大理科3類(医学部)に進学し、「恋愛は受験に無駄」などという教育方針が話題になった「佐藤ママ」こと、佐藤亮子さんの長女(18)=私立高3年=も今年、理3を受験。兄3人と同じく、見事合格をしました。「長男から26年間続いた子育ての集大成になりました」と感無量の佐藤さん。長女も「全てを捧げてくれた母に感謝したい」と話し、佐藤家の絆の強さを見ました。
【画像】赤本バラバラ…子ども4人全員が理3、佐藤ママ直伝の勉強法!
佐藤さんは奈良県に住む専業主婦です。津田塾大学を卒業後、私立高校で2年間の英語教師を経て夫の勤務先である奈良県に。上の3兄弟は国立小学校から中学受験をして、灘から理3に進みました。長男と次男は今春に大学を卒業し、研修医として新たな一歩を踏み出します。
その教育方針が大きく話題になったのは、2015年8月です。著書「受験は母親が9割」(朝日新聞出版)の出版講演会で語った「恋愛は受験に無駄」という発言がテレビやネット上で賛否を巻き起こしました。
「志望校を決めたら、あとは合格しかない。勉強以外に時間を使うことは無駄」と徹底している佐藤さん。受験モードに入ってからは長女に対しても、その方針は変わりませんでした。長女は昨秋の東大模試で、理3志望の成績優秀者に名を連ね、「お兄ちゃんたちよりも順調だった」と佐藤さんは振り返ります。
12月からは、3兄弟と同様にセンター試験対策。世界史と国語にほぼ専念し、佐藤さんが二十数年分の赤本を1年ごとに留め直して、長女がそれを解く生活を試験日直前まで続けました。今年はセンター試験が例年より早かったため、「問題量が少なかった」と話しますが、それでも自己採点では、総合で9割を超える得点率だったそうです。
センター試験が終わると、2次試験への最後の追い込みです。あえて手をつけなかった東大の過去問25年分をひたすら解く毎日。「無理がきいた」3兄弟とは違って、娘の東大受験は初めてなので、毎日の体調に気遣いながら勉強時間などは設定したそうです。それでも2月はほとんど外出させず、マンツーマンで乗り切りました。
そして3月10日。今年は数学が予備校も「易化」と評するほど、差がつきにくく、佐藤さんも長女も「ドキドキ」で合格発表を迎えました。4年ぶりに掲示された合格者の番号から、自分の番号を見つけた長女は「涙が自然にばーっと出た。感無量です」。会場で話を聞きました。
――東大の理3を目指した理由は?
「兄たちが理3に進んだことがきっかけですけど、せっかく受験をするのだから、一番難しいと言われている所を目指したいと思いました。そうすれば、途中でやりたいことが見つかっても、理3を目指す学力があれば、その道に進むことができるので。でもずっと理3を意識してきたので、医学の道に進む姿を想像していました」
――受験勉強の中で一番大変だった時期は?
「高3に進級してすぐに体調を崩して、2週間ぐらい勉強できなかった時が大変でした。『高3になって頑張るぞ』という時に出ばなくじかれて、夏ぐらいまでスランプになりかけました。あと、直前期もしんどかったですね」
――そういう時期を乗り越えたのは、お母さんの存在が大きい?
「頑張ったのはもちろん私ですし、毎日頑張ったから合格したんですけど、頑張れる環境を作ってくれたのは、母の存在が大きい。私にとって家族は、大きな心の支えです」
――お母さんは「受験勉強以外に時間を使うのは無駄だ」と話していましたが、勉強以外の誘惑はなかったですか?
「いや、ありますあります。スマホは本当によくないですね。私たちの世代には、スマホが一番の敵だと思います」
――スマホで何をするのですか?
「私の場合はLINEよりネットサーフィンでしたね。何か調べ物をした時に、ついつい関係のないサイトを見てしまう。母から「いい加減にしなさい」と怒られたこともあります」
――お母さんは「恋愛は受験に無駄」とも話していましたが?
「それはどうなんですかね。彼氏はいませんでしたけど、恋愛禁止と言われたことはありませんでした。ただ、彼氏がいたとしても連絡を取ったり、遊びに行ったりするエネルギーはなかったと思います」
――お母さんの受験勉強のやり方で嫌になったことは?
「思春期の親子げんかは人並みにはあったんですけど、こういう母だからといって、大きく反抗したことはなかったです。母が私のためにしてくれているということは、嫌というほど分かるし、誰でもできることじゃないと思うので、感謝しています」
「自分が『やる』と決めたことを取り組む時に、他のことを犠牲にするのは、当然だと思いますし、それは受験に限らない。母は自分の身をもって教えてくれました。子どものために全てを捧げてくれることって、なかなかすごいことだと思いますし、合格できて本当に良かったなと思います」