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「組織悪」と「自分軸」

「大摩邇」所載の「マスコミに載らない海外記事」の一部で、ジョン・ミアシャイマーという、わりと最近高く評価されている軍事評論家(か?)の書いた文章らしいが、私は下の引用文の赤線を引いた部分に来て、それ以降を読む気を失った。
先に、その文章から載せる。

(以下引用)

 第一に、ジェノサイドは他の戦争犯罪や人道に対する罪とは区別されるが「そのような行為全ての間にはしばしば密接な関係がある」と強調している。(1)例えば、第二次世界大戦でイギリスとアメリカがドイツと日本の都市を爆撃した時に起きたように、戦争に勝つために民間人を標的にすることは戦争犯罪だがジェノサイドではない。イギリスとアメリカ合州国は、標的にされた国々の「かなりの部分」、あるいは全ての人々を絶滅しようとはしていなかった。選択的暴力に裏打ちされた民族浄化も戦争犯罪だが、ジェノサイドではないが、イスラエル生まれのホロコースト専門家オメル・バルトフが「あらゆる犯罪の中の犯罪」と呼ぶ行為だ。4

(以上引用)

いや、これは「ジェノサイド」と呼ばれる行為をあまりに狭く定義したものだろう。一般的理解では、「他民族への大量殺戮行為」をジェノサイドと認識していると思う。ヒトラーですら、ユダヤ人全員を絶滅させようとしたわけではない。自分にとって利用価値のあるユダヤ人は殺していない。そもそも、ユダヤ人の定義すら明確ではない。
広島や長崎への原爆投下や、日本の諸都市、あるいはドレスデンなどへの無差別爆撃がジェノサイドでなくて何なのか。つまり、最初から「膨大な民間人が死ぬことを当然の予測として行われた殺戮」はジェノサイドなのであり、そうでないなら、旧約聖書に書かれた古代ユダヤ人の他民族殺戮行為以外にジェノサイドは無い。何しろ、「女は処女だけ(戦後に繁殖牝馬的に利用するために)残し、男は全員殺す」のである。

話は変わるが、ミアシャイマーがこういう記述をしたのは「言葉の定義に正確であろうとした」のかもしれないが、その心底には英米人としての自己弁護の気持ちがあったのではないか。
これは、私が常々言っている「組織悪」の一種である。自分が属する組織(大きくは国家)を自分と同一視して考える心理である。その心理は、「自己愛」という人間の根本的心理に根があるだけに強力で、しかもほとんど無意識に発動される。
念のために言っておくが、私は自己愛を否定しているのではない。その無意識の発動の危険性を言っているのである。私も(自分が日本人だから当然だが)ほとんど無意識のうちに日本や日本人と自分を同一視しており、外国人が日本や日本人を褒めると、自分自身が褒められたように嬉しいし楽しいのである。(ただし、「日本政府=日本」でないのは当然だ。ネトウヨや工作員はそういう馬鹿思想を植え付けようとするが。)
最近はやりの「自分軸」という言葉も、実は自己愛の美名であるとも言える。これは要するに「自分中心」と同じことであり、「軸」と「中心」で何が違うのか。どちらも、自分が軸、あるいは中心になって他者が廻るのである。「自分中心」を「自己中心」と言っても同じだろうが、これを「ジコチュー」と言えばあっと言う間に悪口に変わるのであるwww 「お前ってほんとにジコチューだよな」と言われてあなたは嬉しいかwww 「あなたは自分軸がしっかりしていて素晴らしい」も内実は同じである。ついでに言えば、組織の下にいながら自分軸を持てる(心の中に持っているつもりでも、それを行動で示せる)人間などほとんどいないだろう。


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