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風の中の鳥 30

第二十九章 冗談のような成り行き

 さて、雪の降り出した中をフリードの軍隊は出発した。
 国境の山脈の間道を通って大急ぎで進軍した結果、五日後に彼らはパーリャ郊外に到着したが、ちょうどその日の夕方にエルマニア国とフランシア国の大決戦は終わっていた。
 結果は、共倒れであった。
 エルマニアの五万の兵と、フランシアの三万の兵は互角に戦い、消耗し尽くしたのである。どちらも、自分の軍が有利に戦いを進めていると思って戦況を見ていたため、戦をやめるきっかけが掴めず、気が付くと、お互いに数百名の近衛隊だけを残すだけとなっていた。
 やがて夕暮れになり、戦闘は自然に一段落した。この時にはどちらも、自分の軍が負けたと思い込んでいたのである。
 エルマニア国王は夕闇に紛れて逃亡しようとしたが、その時、降りしきる雪の中を背後から近づく大軍隊があった。フリードの軍である。大軍隊どころではなく、たった二千名の小部隊であったが、その時のエルマニア国王にはフリード軍はまったく大軍隊に見えたのである。
 一方、こちらも自軍が負けたと信じ込んでいたフランシア国王も王宮に戻って逃亡の支度をしていた。
 そこへ、味方の兵士からの伝令が来て、次のように言った。
「国王、救援軍が来ました! ローラン国のフリード王です。ジャンヌ様の婿殿です。ローラン軍はエルマニア軍をさんざんに打ち破って、我が軍を勝利に導きました!」
 マルタン国王は飛び上がって歓喜の声を上げた。
 やがて王城に入城してきたフリードを、フランシア国王は腰を低くして丁重に迎えた。
「あなた方の御蔭で、我が国は救われました! この御恩は何と言っても言い足りないほどです」
「いやいや。何とか間に合ったようです。これで義父上への義理が果たせました」
 フリードは鷹揚に、感謝に答えた。

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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