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「女か虎か」前編

今では私自身が書き込むことさえできなくなった「徽宗皇帝の娯楽的語学ブログ」に載せてあった『女か虎か』を、保存のためにこちらに載せておく。短編小説だが、全2回の予定である。
もともとは中高生の語学学習の材料になるかな、と思って書いたものなので、そういう体裁になっているが、訳文のところだけ読めばいいし、単語の注釈などは英語の語彙を増やす役にも立つのではないか。ただし、いつも言うように私の英語力は中学生に毛が生えた程度であるから、英語学習の部分は無視したほうがいいかもしれない。
フランク・ストックトンのこの短編は、今ではどんな外国短編小説アンソロジーでもほとんど読めないかと思うので、その翻訳は、たとえ私ごときの訳でもなかなか貴重だと思う。
で、私が知りたいのは、この小説の最後の問いかけに対して、あなたが王女の立場だったらどうしただろうか、ということだ。特に、男性と女性とで、どう答えが分かれるか興味深いところである。





 


The Lady, or The Tiger ?  


                                   FRANK STOCKTON


 


In the very olden time there lived a half-barbaric king. He was a man of tremendous fancy, and, also, of an authority so irresistible that, at his will, he turned his varied fancies in fact. He was greatly given to meditating with himself ; and when he and himself agreed upon anything, the thing was done. So long as all things moved in their appointed course, he was smooth and gentle ; but if there was a little difficulty and something was not quite right, he was smoother and more gentle still, for nothing pleased him so much as to make the crooked straight, and crush down uneven places.


 


*さて、今日から「女か虎か」で翻訳練習をするが、私にとってはなかなか難しい文章だ。まず、1文1文が長すぎて、意味がつかみにくいし、どうやらひねくれたユーモアがこめられた文章のように思える。たとえば、この段落の最後の部分など。「命じた物事がうまくいっていると、この王様は上機嫌だが、あまりうまくいかないと」の後、不機嫌になるのかと思うと、「いっそう上機嫌になった」と来る。(私の誤読でなければだが)……やっかいな文章のようだが、まあ、難しいからこそ楽しいとでも思うことにしよう。


今回のシリーズでは、私の試訳も毎回付けることにする。原書には、まったく注が無いので、辞書を引いてもよく分からないところは、適当に訳するつもりである。


 


(注)


olden:古語・詩語で「昔の、古い」の意味     half-barbaric:半野蛮の


a man of tremendous fancy:巨大な空想力を持った男(ひどく夢想的な男)


meditating:もくろむ、企てる、熟考する、瞑想する    so long as:~である限り


smooth:穏やかな     crooked:ねじ曲がった 


(研究)


for nothing pleased him so much as to make the crooked straight, and crush down uneven places.


・全体の中心構造は「~ほど彼を楽しませるものはなかった(からである)」だろうが、「to make crooked straight」は、「曲がったものをまっすぐにすること」か。「and」以下も「彼を楽しませるもの」の追加分、ということだろうか。とすれば、この両者は似たような趣味嗜好を表すものだろうから、「and」以下は「高さの異なる場所を壊して平らにする」というようなことだろうか。つまり、ある種の人間にあるような、シンメトリカルな構造や均整への好みかと思われる。この王様には、偏執的な気質がありそうだ。


 


[試訳]


 


遠い遠い昔、ある半野蛮な王がいた。彼は巨大な夢想を持った男で、また誰も逆らえぬ権力者であったから、彼は自分が望むままにその様々な夢想を実現した。彼は自分自身の夢想の世界に耽り、彼が自分でよしと認めたことは何でも実行された。彼の命じたことが適切に行われれば、彼は穏やかで優しかった。しかし、仮にちょっとした困難や非常に不適切な物事があった場合でも、彼はいっそう穏やかで優しかった。というのは、曲がったものを真っ直ぐにし、不揃いのものを平らにすることくらい彼を楽しませるものは無かったからである。


 


 


 


Among the borrowed ideas by which he spread his barbarism was that of the public arena, in which, by exhibitions of manly and horrible courage, the minds of his subjects were refined and cultured.


But even here the tremendous and barbaric fancy showed itself. The arena of the king was built not to give the people an opportunity of hearing the last words of dying soldiers, nor to allow them to view the inevitable end of a conflict between religious opinions and hungry jaws, but for purposes far more useful in widening and developing the mental energies of the people. This vast arena was an agent of poetic justice, in which crime was punished, or virtue rewarded, by the commands of an impartial and incorruptible chance.


 


(注)


borrowed:採用された  arena:闘技場  manly:男らしい 


the minds of his subjects:彼が自分の課題(?)としていることへの関心(?)→◎訂正「subject」には「臣民」の意味があった。したがって、「彼の臣民たちの心」と訂正する。お恥ずかしい。 


hungry jaws:ライオンなどの獰猛な獣の顎 *かつて、キリスト教徒がローマの闘技場でライオンに与えられたことをイメージしているのだろう。 inevitable:不可避の agent:代行者 impartial:公平な  incorruptible:腐敗しない、買収されない  *「impartial and incorruptible chance」が何であるかが、この話のキモのはずである。


 


[試訳] 


 


 


彼に採用されたアイデアの数々によって、彼はその野蛮性を撒き散らしたのだが、その中には公共の闘技場があって、そこで人々は男らしさや恐るべき勇気を観衆に見せ、そしてそれによって王の臣民たちの心は洗練され陶冶されるのであった。


だが、ここにおいてすら、王の巨大で野蛮な夢想が姿を見せていた。王の闘技場は、死に行く兵士の最後の言葉を人々に聞かせる機会を与えるためや、宗教的意見と飢えた顎の争闘の不可避の結末を観衆に見せるためではなく、もっと有益な目的、すなわち人々の精神的な活力を拡大し向上させるために建てられたのであった。この広大な闘技場は詩的な公正さの代行者であり、ここには、偏りもなく買収されることもない機会があり、その裁定によって罪は罰せられ、美徳は報酬を与えられたのである。


 


 


When a subject was accused of a crime of sufficient importance to interest the king, public notice was given that on an appointed day the fate of the accused person would be decided in the king’s arena – a building which well deserved its name ; for, although its form and plan were borrowed from afar, its purpose came from this man only, who, every inch a king, knew no tradition to which he owed more faith than pleased his fancy, and who added to every form of human thought and action the rich growth of his barbaric ideas.


 


*この段落はセミコロンで区切られただけの長い一文でできており、そのまま日本語にすると意味が非常につかみにくいので、いくつかの文に分けて訳すことにする。勝手に文を分けるのは原文への冒瀆である、などと言われるかもしれないが、もともと違う国の言葉をそのままの形で訳すこと自体が不可能に近いのではないだろうか。


 


(注)


accuse:告発する  notice:掲示、公告  fate:運命  deserved:値する  afar:遠い、遠方  every inch a king:あらゆる点で王である、すみずみまで王である  owed:おかげをこうむる  the rich growth:豊かな拡張  


(研究)


and who added to every form of human thought and action the rich growth of his barbaric ideas


・彼(王)は「every human thought and action」に「the growth of his barbaric ideas」を付け加えた、という趣旨だろうが、「every human thought and action」というのが、今一つよく分からない。直訳すれば「すべての、人間の思考と行動」ということになるのだろうが、文意がつかみにくい言い回しだ。であるから、ここは「この闘技場におけるあらゆる事柄」と訳しておく。


 


[試訳]


 


王の臣民の一人が、王を面白がらせるのに十分な重要性を持った罪で告発されると、ある予定された日に、告発された臣民の運命が王の闘技場で決定されるという公告が掲示された。この建築物は「王の闘技場」という呼び名に恥じないものであった。なぜなら、その形態やプランこそはるか遠い所から借りてきたものではあったが、その目的は、あらゆる点で王であるこの男一人に出たものであり、自分自身の愉快な夢想以外にはいかなる伝統にもその起源を負うてはいなかったからである。そして彼はこの闘技場で行われるあらゆる事柄に、彼の野蛮な夢想による豊かで拡張されたアイデアを付けくわえたのであった。


 


 


 


When all the people assembled in the arena, and the king, surrounded by his court, sat high up on his throne of royal state on one side, he gave a signal, a door beneath him opened, and the accused subject stepped out. Directly opposite him, on the other side of the enclosed space, were two doors, exactly alike and side by side. It was the duty and the privilege of the person on trial to walk directly those doors and open one of them. He could open either door he pleased; he was subject to no guidance or influence but that of the earlier mentioned impartial and incorruptible chance. If he opened the one, there came out of it a hungry tiger, the fiercest and most cruel that could be got, which immediately sprung upon him and tore him to pieces, as a punishment for his guilt. The moment that the case of the criminal was thus decided, sad iron bells were rung, great cries went up from the hired mourners posted on the outer edge of the arena, and the vast audience, with bowed heads and unhappy hearts, went slowly on their homeward way, mourning greatly that one so young and fair, or so old and respected, should have deserved such a dreadful fate.


 


*ここで物語の鍵となる二つのドアのうちの一方の説明がなされている。


 


(注)


assembled:集められた  court:廷臣  throne:王座  privilege:特権  pleased:好きなように   subject to:条件として(このsubjectは形容詞だろう)  but~:~以外には  fiercest:獰猛な  the hired mourners:雇われた泣き女たち(mournは悼むこと、喪に服することだが、ここでは「hired mourners」だから、職業的に、葬儀などで泣いて死者を悼む気持ちをアピールする「泣き女」あるいは「泣き男」であろう。ジャズの名曲である「モーニング」は、「朝」ではなく、亡くなった恋人だか知人だかを悼む意味である。) fair:美しい(「My fair lady」のfairである。端正な美しさという感じか。古語の「清らなり」や、沖縄方言の「ちゅらさん」を想起させる。) 


 


[試訳]


 


すべての人々が闘技場に集められ、王が廷臣に囲まれて、闘技場の一方にある、王の尊厳を表す高い玉座に座ると、王は合図をし、玉座の下にある扉が開けられて、告発された廷臣が歩み出る。罪人の向こう正面の側には仕切られて閉ざされた空間があり、そこにはまったく同じ形の二つの扉が並んでいる。この扉にまっすぐに歩み寄ってどちらかの扉を開けるのが裁かれる人間の義務であり、特権であった。彼は自分の望み次第でどちらの扉を開けてもよいが、自分がこの扉を開けることで公正な裁きの機会を得るのだとあらかじめ述べられる以外には、その扉の向こうに何があるかについて何一つ案内も暗示も与えられていなかった。もしも彼がその一つを開けた場合、手に入る限り最も獰猛で冷酷で腹をすかせた虎がそこから飛び出して彼を襲い、彼の罪への処罰として即座に彼を八つ裂きにする。罪人の判決がこのように下った瞬間、鉄でできた鐘が悲しげに鳴らされ、闘技場の端に位置した雇いの泣き女たちの泣き声が沸き起こり、無数の観客たちは、若く美しい人間や年を取って尊敬されていた人間がかくも恐ろしい運命を受け取らざるを得なかったことを深く悼み、頭をうなだれ、悲しみの心とともに、足取りも重く帰途に就くのであった。


 


 


 


But if the accused person opened the other door, there came forth it a lady, the most suitable to his years and station that his Majesty could select from among his fair subjects; and to this lady he was immediately married, as a reward of his innocence. It mattered not that he might already possess a wife and family, or that his affections might be upon an object of his own selection: the king allowed no such arrangements to interfere with his great scheme of revenge and reward. The exercises, as in the other instance, took place immediately, and in the arena. Another door opened beneath the king, and a priest, followed by a band of choirboys, and dancing maiden blowing joyful airs on golden horns, advanced to where the pair stood side by side; and the wedding was promptly and cheerfully carried out. Then the gay brass bells rang forth, the people shouted happily, and the innocent man, preceded by children scattering flowers on his path, led his bride to his home.


 


*長い段落だが、あまり難しい所は無いようだ。


 


(注)


the most suitable to his years and station:彼(被告人)の年齢と地位にもっともふさわしい  innocence:無罪、潔白  affections:愛情、好意  scheme:計画、案、図式    exercises:儀式  as in the other instance:もう一つの場合には  choirboys:少年聖歌隊員  preceded:先導されて


 


[試訳]


 


しかし、もしも告発された者が別の扉を開けたならば、そこからは一人の美女が出てくる。告発された者の年齢と地位にもっともふさわしい美女で、国王陛下が彼のもっとも美しい臣民の中から選りぬいた女である。そして被告人は彼の無罪への報酬としてこの女と即座に結婚することになっていた。彼がすでに結婚し、家族を持っているかどうか、あるいは自分が結果的に選んだこの女に愛情や好意を持つかどうかはまったく問題とされなかった。王は、自分が描いたこの偉大な報復と報酬の図式に対するいかなる変更も介入も許さなかったからである。この、もう一方の扉が選ばれた場合には同じ闘技場が即座に儀式の場に変わった。王の玉座の下の別の扉から、合唱隊の少年たちと、楽しげに黄金の角笛を吹き鳴らしながら踊る少女たちを伴った僧侶が進み出て、被告人とその伴侶となる女が並んで立っているところまで歩み寄る。そして結婚式がすぐに、楽しく執り行われる。そうして真鍮の鐘が鳴り続け、人々の歓呼の声に送られて、その通路に花を撒く子供たちに先導されながら、無罪を勝ち取った男はその花嫁を自分の家へと導くのであった。


 


 


 


This was the king’s method of administering justice. Its perfect fairness is obvious. The criminal could not know out of which door would come the lady: he opened either he pleased, without having the slightest idea whether, in the next instant, he was to be eaten or married. On some occasions the tiger came out of one door, and on some out of the other. The decisions of this tribunal were not only fair, they were definitely determined: the accused person was instantly punished if he found himself guilty; and if innocent, he was rewarded on the spot, whether he liked it or not. There was no escape from the judgments of the king’s arena.


 


(注)


administering:執行する  was to~:~することになった  tribunal:裁き、裁判所  definitely determined :明確に決定された


 


[試訳]


 


これが、王が正義を執行するやり方であった。その完璧な公正さは明白である。被告人は、どの扉から美女が出てくるか知ることはできない。彼は、その向こうに何があるかまったく知らぬままに自分の好きな扉を開け、次の瞬間、彼は食われるか、あるいは結婚する。ある時は扉から虎が出てくるし、ある時には美女が出てくる。この裁きでの判決は公正であるだけでなく明確に決定されたものである。告発された者が、自分が有罪だと知ったその瞬間に彼は処罰され、無罪なら、彼がそれを好もうが好むまいが、その場で無実の罪の償いを得る。この王の闘技場の裁きから逃れる術は無かった。


 


 


 


The institution was a very popular one. When the people gathered together on one of the great trial-day, they never knew whether they were to witness a bloody death or a gay marriage. This touch of uncertainty lent an interest to the occasion which it could not otherwise have got. Thus the masses were entertained and pleased, and the thinking part of the community could bring no charge of unfairness against this plan; for did not the accused person have the whole matter in his own hands?


 


(注)


institution:慣習、制度  popular:人気がある  lent:貸す  the thinking part:考え深い人々(?) *あるいは、直訳で、「考える部分」とするか?  charge:責める、非難する *chargeは多義語だが、基本の意味は「負わせる」こと。「荷車に荷を積む」こと。


(研究)


; for did not the accused person have the whole matter in his own hands?


・この部分は、セミコロンの前で書かれたことに作者自身が答えている。だから、完全に独立した一文ではなく、セミコロンで結んだ半独立文になっているのだろう。


 


[試訳]


 


この制度はとても人気のあるものだった。この偉大なる裁きの日に集められた人々は、自分たちが血生臭い死に立ち会うのか、楽しい結婚式に立ち会うのか、けっして知ることはない。この不確かさの要素が、さもなくば持ち得なかったような面白さをこの儀式に与えていたのである。こうして大衆の大部分は楽しみ、喜んだし、国民の中の思慮深い人々も、このやり方を不公正のゆえに非難することはできなかった。なぜなら、告発された人間の手に、すべてはゆだねられているではないか?


 


 


 


This half-barbaric king had a daughter as fair as fair, and with a soul as commanding as his own. As is usual in such cases, she was the apple of his eye, and was loved by him above all humanity. Among his courtiers was a young man of that fineness of blood and lowness of station to the ordinary heroes of romance who love royal maidens. This royal maiden was well satisfied with her lover, for he was handsome and brave above all others in this kingdom; and she loved him with a strength that had enough of barbarism in it to make it exceedingly warm and strong. This love affair moved on happily for many months, until one day the king happened to discover its existence. He did not hesitate in regard to his duty. The youth was immediately cast into prison, and a day was appointed for his trial in the king’s arena. This, of course, was an especially important occasion; and his majesty, as well as all the people, was greatly interested in the workings and development of this trial. Never before had such a case occurred; never before had a subject dared to love the daughter of a king. In after years such things became common enough; but then they were, in no slight degree, unusual and startling.


 


*長い段落だが、一段落を分けて書くのも不細工だから、一息で片付けることにする。注釈や訳文の中には、もちろん自信の無いところもあるが、一々それを書くのも面倒だから、怪しげな部分は眉に唾をつけて読んでもらえばいい。


 


(注)


As is usual :通常そうであるように  the apple of his eye:掌中の珠、目に入れても痛くない存在   humanity:人間、人類   in regard to :~に関して   workings and development:働きと成り行き   startling:仰天させる


(研究)


as fair as fair


・前のfairと後の fairが同じ意味なら、「美しいが上にも美しい」という強調として考えられる。二つのfairを別の意味とするのは無理がありそうだ。含意や暗示としてはあるだろうが。少なくとも、「公正」などの意味ではないような気がする。


Never before had such a case occurred


such a case had never occurred before の倒置形。もっとも、通常の文がこれでいいのか、よく分からないが。


 


[試訳]


 


この半野蛮な国王には一人の娘がいて、その娘は美しいが上にも美しかったが、また王と同じくらいに驕慢でもあった。こうした場合には常にそうであるように、この娘は彼の掌中の珠であり、この世の誰よりも愛されていた。彼の廷臣の中に、こうしたロマンスではよくあるように、血筋はいいが地位の低い若者がいて、彼は王の娘を愛した。彼は王国の誰よりもハンサムで勇敢だったので、王の娘はこの恋人に満足していた。そして彼女は恋人を深く愛したのだが、その愛は野蛮性を伴ったものであり、だからこそいっそう暖かく強いものでもあったのだ。この恋愛は数か月の間幸福に続いたが、或る日、王の発見するところとなった。王は彼の義務を果たすことをためらわなかった。若者は即座に投獄され、王の闘技場での審判の日取りが決められた。これは言うまでもなく特別に重要な審判であり、すべての国民と同様に、王もまた審判の成り行きに非常な興味を持っていた。これまでこのような事件は起こったことがなかった。これまで臣下が王の娘をあえて愛するようなことは無かったのである。年月が経つうちに、こうした出来事もありふれたものになってきたが、当時はまったく異常な出来事であり、人々を仰天させるような事件であったのだ。


 


The tiger –cages of the kingdom were searched for the most savage and cruel beasts, from which the fiercest animal might be selected for the arena; and the ranks of maiden youth and beauty throughout the land were carefully surveyed by proper judges, in order that the young man might have a fitting bride in case fate did not determine for him a different destiny. Of course everybody knew that the deed with which the accused was charged had been done. He had loved the princess, and neither he, she, nor anyone else thought of denying the fact; but the king would not think of allowing any fact of this kind to interfere with the workings of the tribunal, in which he took such a great delight and satisfaction. No matter how the affair turned out, the youth would be disposed of; and the king would take a beautiful pleasure in watching the course of events, which would determine whether or not the young man had done wrong in allowing himself to love the princess.


 


(注)


fiercest:もっとも獰猛な  throughout~:~のすみずみまで  deed:行為  tribunal:裁判所、法廷、裁きの場  be disposed of:処理される


(研究)


The tiger –cages of the kingdom were searched


・「虎の檻が探された」のではなく、「虎の檻に入れる虎が探された」ということだろう。


and the ranks of maiden youth and beauty throughout the land were carefully surveyed by proper judges


・「maiden」に後付けされた修飾部分が長いので、意味が取りにくいが、修飾部分を括弧に入れるとand the ranks of maiden youth and beauty throughout the land were carefully surveyed by proper judgesとなるだろう。


in case fate did not determine for him a different destiny


a different destinyとは、「虎に食われる方の運命」のこと。


neither he, she, nor anyone else


・彼と彼女だけでなく、すべての人が(その事実を否定するつもりは)なかった。


 


[試訳]


 


王国の虎の檻には、もっとも野蛮で冷酷な野獣の中でも選り抜きの獰猛なものが何頭か集められ、また、若者の運命が野獣の餌食になるものでなかった場合に備えて、若者の花嫁になるのにふさわしい、国中でもっとも若く美しい乙女たちのランク付けが適当な審判者たちによって注意深く進められていた。もちろん、誰もが、この若者が何の罪で告発されたかは知っていた。彼は王女を愛し、そしてそのことを否定するつもりは彼にも彼女にも、他の誰にもなかった。しかし王は、自分に絶大な喜びと満足を与えるこの裁きのシステムに、いかなる「事実」をも介入させるつもりはなかった。事件の内実がどうであろうが、この若者は闘技場での裁きによって処理され、彼が王女を愛するという悪事を働いたか否かに関わらず、王は若者の運命を決定する裁きの儀式を見ることで、美しい喜びを得ることになるはずだった。


 









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プロフィール

HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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