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町の名は (2)-2

刑士郎は東城長官の私設オフィスに電話をした。用心のためにホテルから離れたところの電話ボックスの電話を使う。
「北**市の旭組はたしかに一心会の傘下の組だが、あんたの足がついたという話は無いな。別件だろう。旭組は今、叶組傘下の明治会と抗争中だから、その応援の者とでも間違われたのではないかな。警官とヤクザは兄弟みたいに似ているからな、ハハハ。そうだ、ついでと言っては何だが、あんたに仕事を頼もう。旭組と明治会が今、潰し合っているところだから、うまくその中に入って、双方の被害をできるだけ大きくしてくれないか。理想は、双方全員死亡だが、まあ、できるかぎりでいい。あんたの好きそうな仕事だから、楽しいだろう。支払いは、組員一人につき10万円、若頭クラスなら50万円でどうだ」
「それぞれの組の構成員の人数は」
「旭組が80人くらい、明治会が60人くらいかな。使い走りの高校生やチンピラなどは除いてだ」
「一人で140人を相手ですか。命が幾つあっても足りませんな」
「バックアップはする。北**署の池島署長は私の息のかかった人間だ。旭組と明治会には長年手を焼いている。そいつらを一掃するのは彼の悲願だ。北**市の大掃除のためならたいていのことには目をつぶるし、武器も融通してくれるだろう」
「あのねえ、黒澤の映画じゃないんだから、一人の人間がヤクザ組織をぶっ潰せるわけがないでしょう」
「そうでもないさ。現代の戦争に人数は関係ない。原爆一つで100万人が殺せるんだからな。相手が兵士でも同じさ。連中が争い合っているのがこっちにとってはもっけの幸いだ。相手以外のものに注意を向ける余裕が無いからな。それから、役に立つ人間を一人見つけた。そのうち応援に行かせる。二人でなら、仕事もしやすいだろう。名前は大石大悟。若いが使える男だ。ではな」
「ちょっと、ちょっと、こっちはまだ引き受けるとは言ってませんよ」
しかし、電話は既に切れていた。

刑士郎は北**市の市街地図を眺めながら部屋で酒を飲んでいた。ホテルは元のままだ。他のホテルに移っても同じことである。一度調べて懲りただろうから、かえって妙な連中は来なくなるかもしれない。
カウンター係は刑士郎と顔を合わせるときまり悪そうにするが、刑士郎からは、あれから特に何も言っていない。
旭組と明治会の本部所在地は昼の間に調べてある。北**市を流れるS河をはさんで2キロほど間が離れている。北**駅近くにあるのが旭組で、中心街から離れた閑静な住宅街にあるのが明治会だ。いつからそこにいるのかは知らないが、さぞ、その住宅街の地価は下落しただろう。
旭組の本部は、表向きは普通の雑居ビルだが、入り口周辺にはいつも目つきの悪い男たちが数人いる。侵入は難しそうだ。
明治会のほうは、まるで要塞である。コンクリート打ちっ放しの二階建ての無愛想な住宅ビルに、鉄格子のはまった窓が四方にある。その建物を囲んで2メートル少しの高さのコンクリート塀があり、ご丁寧にその上には鉄条網がある。まさか、電気まで流してはいないだろうが、刑務所並みのものものしさだ。門は鉄の扉で閉ざされている。
刑務所に送られる前から自分で自分を刑務所に閉じ込めていやがる、と考えて刑士郎はニヤリとした。
だが、思わずため息も出る。
「こりゃあ、戦車かミサイルでも無いと無理だな」
刑士郎は呟いた。

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町の名は (2)-1

(2)


目を覚ました時はまだ夜明け少し前だった。口の中が昨夜の煙草と酒で不快だ。トイレで糞をして体の中の残留アルコールを外に出した後、熱い湯を溜めた風呂に体を浸け、体に血が回るのを待つ。
すっかり生き返った気分になったところで一服目の煙草をつける。肺の中に浸み込む煙を味わいながら窓のカーテンを開けると朝日が部屋の中に差し込んだ。「朝日のように爽やかに」というジャズソングのフレーズが心に浮かぶ。

softly as is the morning sunrise

「朝日がそうであるように柔らかく」とでも訳すのだろうか。何が柔らかくなのだろう。

ホテルの食堂で貧弱な朝食を食べながら新聞を読む。全国紙ではなく地方紙を選ぶ。一面の政治記事よりも第三面(というのも古い言い方で、本当は裏から二面目だが。)の犯罪記事に先に目が行くのは習性だろう。市職員の汚職疑惑、公共工事に関する土建屋の談合、チンピラの強姦事件、高校生のオートバイ事故、どこの地方都市にもつきものの事件ばかりだ。

近くの公園までの散歩から帰ってきた刑士郎は、ホテルの入り口を入ったところで足を止めた。
カウンターで二人の男がフロントマンに何かを尋ねている。明らかにヤクザ者だ。フロントの男が二人にキーを渡したのを見て刑士郎は、まずいな、と考えた。そのキーはおそらく彼の部屋のものだろう。
二人の男が二階に上がっていった後、ホールの椅子にさりげなく腰を下ろしていた刑士郎は立ち上がってカウンターに近づいて行った。
「203号室の鍵を貰えるかな」
「あ、今ちょっと清掃中なんで、少しその辺で待っててもらえますか」
「こんな朝早くに清掃かい。もしかして、その掃除のオバさんはさっきの二人かな」
刑士郎はこわばった顔のカウンター係に笑顔を見せて大股に階段へ向かった。
階段を上って203号室の前に来てノブを静かに回してみると、部屋のドアの錠は閉まっていないようだ。自動で錠のかかるドアではないのが幸いした。
そっと覗き込むと、二人の男は刑士郎のトランクをこじ開けようとしているところだった。
「泥棒っ、泥棒だーっ」
刑士郎は大声を上げた。
二人は慌ててトランクを放り出し、戸口にいる刑士郎を突き飛ばすようにして部屋を飛び出した。そのまま階段の方へ逃げ去って行く。
刑士郎はニヤニヤしながら部屋に入って行った。
トランクは幸い、まだ開けられてはいなかったが、いずれにしてもこのトランクの中には見られてヤバイものは入っていない。まあ、金がけっこう入っているのがヤバイと言えばヤバイのだが、本当に見られてヤバイものと言えば、刑士郎の背広の下のホルスターに吊った拳銃、ワルサーPPKと、背広の内ポケットの中の大型ナイフくらいのものである。刑士郎にとってはヤクザよりも警察官の不審尋問がよっぽど怖い。
それにしても、あの二人はどういう素性のヤクザなのか。ホテルのフロントマンと顔見知りのようだから、地元のヤクザだと思うが、地元のヤクザが何を嗅ぎまわっているのか。まさか、一心会の手がここまで回っているとはとても思えないのだが。

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町の名は (1)-2





男の名は冬木刑士郎。仕事は二年前までは警察官だったが、ある事件で免職になった後、しばらくして東城の下で働くようになった。
東城の命じる仕事は、簡単に言えば殺し屋である。だいたいは企業の依頼を受けて、企業に不利な活動をしている人間(中には組合活動をしている人間などもいる。産業スパイもいる。単なる企業内部の権力闘争もある。基本的にその理非は問わない。)を殺す仕事である。野党政治家を殺したこともある。行政府の役人を殺したこともある。すべて、時の政権中枢部に不利益な活動をした、あるいはすることが判明した人間だ。彼が殺した人間の中には小島のような、ヤクザの舎弟である総会屋などもいる。こういうのが、殺しても一番後腐れが無い。警察もマスコミも本気では調べないからだ。
これまで冬木が殺した人間は5人。貰った金は2000万円くらいだろう。野党政治家を殺した時が一番高く、1000万円の報酬があり、その時は1年間ハワイに逃げてほとぼりをさました。
その時の金は内閣調査費という、「領収書不要」の金から出た。これは年間数億の予算がある。
誰を殺そうが、冬木の心が痛むことはない。無邪気な子供でも殺すなら別だが、汚れきった大人の寿命を数年か数十年縮めることに彼は何の痛痒も感じなかった。

刑士郎の脳裏に妻の面影が浮かんだ。「汚れきった大人」という言葉に心が反応したのだ。汚れたのは誰なのか。
刑士郎はテーブルの上のワイルドターキーをグラスに注ぎ、それを一息で飲んだ。焼けるように熱い液体が喉を通って胃の中に落ちていく。

刑士郎の妻は二年前、刑士郎の留守中に、自宅アパートで、ある男に犯された。
相手は、刑士郎が以前に検挙したチンピラだった。刑士郎はその若者のマンションに乗り込み、両腕をへし折った後、恐怖で縮こまっているその陰茎を台所の包丁で切り落とした。
その事件のために刑士郎は警察を免職になったのである。
妻とは、妻の方からの申し出で、半年後に離婚した。まだ二十代の若いきれいな妻だった。今はアメリカに行き、そこで暮らしているという話を、妻の実家の者から刑士郎は後で聞いた。

刑士郎が今の仕事をしているのは、妻の事件が理由というわけではない。その事件の前から彼の犯罪者への憎悪は異常なものだった。だが、二年の間に、彼の憎悪は犯罪者から人間全体へと対象が広がったのかもしれない。それは、自分がしていることを正当化する心的機制だったのだろう。
もちろん、今でも彼が一番憎んでいるのは犯罪者である。当の彼自身が犯罪者であることを考えれば、これは少々滑稽ではあったが、警察官であった時代の名残で、彼はヤクザや犯罪者を心の底から憎悪していたのである。それは妻の事件で永遠に心に刻印されたのだ。
(連中は人間じゃない。連中を人間扱いすること自体が間違いなんだ。)
警察官であったころ、様々な事件に出遭うたびに彼の胸の中にはそういう思いが高まっていった。特に、犯罪被害者やその家族の再起不能の状態を後目(しりめ)に、加害者が証拠不十分で釈放されたり、あるいは刑期を終えて世の中に復帰し、大手を振って歩いている姿を目にする度に、彼の憎悪と怒りは高まっていった。そして妻へのレイプ事件で彼の怒りは爆発したのであった。

妻を犯したチンピラの陰茎を切断した時の快感を刑士郎は思い出していた。チンピラの恐怖にゆがんだ顔。哀願する声。左手で握った情けないほど縮んだ陰茎を右手の包丁で切った時の感覚を彼は一生忘れないだろう。その汚らしい一物を彼が足で踏みつぶした時の、相手のあの絶望した顔。これこそ復讐の快感であった。彼は、妻のためにではなく、その快感のためにこの行為をやったのかもしれない。心の奥底を見れば、その時の彼の心には妻を思う気持ちは無かったのだから。
その後の裁判の間も、刑士郎は一瞬も自分のやった行為を後悔しなかった。むしろ、それをやらなければ、どんなに後悔しただろう。
バーボンの酔いが次第に回ってきて、刑士郎はやがてベッドに倒れ込み、そのまま眠りの中に落ちて行った。


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町の名は (1)-1

別ブログに載せてあった、昔書いた短編小説だが、今読むとわりと面白いので、こちらにも載せておく。国家間の問題解決法としては「絶対非戦論者」の私だが、実は悪を滅ぼすには暴力は許される、と思っているのだwww





何か書きたい気持ちはあるが、アイデアを掘り下げる気力が無いので、昔書いた作品を「清書」しておく。書いたのは1998年なので、(ノートによると1月3日の1日で書いたもので、推敲も何もしていない。)18年も前の作品である。中学生か高校生の書いたような下手なハードボイルド小説だが、ゴミにするのもつまらないから、ここに上げておく。
題名の「町の名は」は、ダシール・ハメットの「町の名はコークスクリュー」から取ったもので、内容も同作品から、というより、同作品を下敷きにした黒澤明の映画『用心棒』をモデルにしている。ハメットの作品は読む機会が無かったが、題名の「町の名はコークスクリュー」というのはいい題名だなあ、とかねがね思っていたのである。
手元に何の資料も無しで書いたので、警察組織や武器などについての記述はひどくいい加減である。それ以外にも妙な記述はたくさんあるだろうが、下手なりに面白いところが少しでもあればそれでいいと思っている。


「町の名は」



(1)

男はラッキー・ストライクを箱から1本取り出し、口にくわえて火をつけた。一息深く吸い込んで煙を吐き出した後、煙草をくわえたままソファに身を沈める。いつも通りの安ホテル、いつも通りの煙草の味だ。
部屋のベッドサイドの小テーブルに置いたポータブルの薄いCDプレイヤーから、コルトレーンの「say it」が流れている。旅のお友としていつも持ち歩いているプレイヤーと、数枚のCDの一つだ。
窓の外にはけばけばしい赤いネオンがまたたくのが見える。
男は目を閉じて物思いに耽った。年の頃は四十前後の中年男である。疲れた表情だが、日に焼けた顔の作りは青銅を彫ったように端正だ。髪は長めで、黒々としている。ソファから投げ出した足は長い。筋肉質の体で、身長は180くらいだろう。

「小島の件で一心会がどう動くかは、こちらでも調査中だ。あんたの事だから足は着いていないと思うが、しばらくここを離れて身を隠しておくのがいいな」
警察庁長官東城一矢は、まだ四十代前半でありながら警察庁のトップに上りつめた切れ者らしい鋭い顔を男に向けながら言った。
「残念ながら、小島に渡った金は回収不能だ。しかし、これ以上せびり取られないだけでもマシだろう。まったく、日本の大企業という奴は、どこもかしこも脛に傷を持っているから、あんな総会屋ごときにつけ入れられるんだ。問題はあいつのバックの一心会だな。小島の金の大部分は一心会に上納されていたという話だから、小島を殺(や)られた一心会は必死で下手人を探しているはずだ」
東城はデスクの引き出しを開け、紙包みを取り出して、それをデスクの上に置いた。
「200万ある。これで特に不満は無いと思うが……」
男は、不満は無い、というように軽く肩をすくめた。
「リスクを負うのはそっちも同じでしょう。むしろそっちは社会的な地位も高いだけに、やっていることがバレた時に失うものも多い。私は、せいぜい自分の命だけだ。幸い、家族もいないのでね。その自分の命もたいして惜しくもない」
「君のような人間があと二、三人いるとこっちも助かるんだがな」
「世直し団ですか。時代劇か漫画の見過ぎですよ。私は自分で使うカネが欲しいだけだ。正義感のために人殺しをする奴はいない」
「動機はどうでもいい。私は、自分がしたいことをするのに手足になってくれる人間が欲しいんだ。私の本当に知りたいことを教えてくれる人間、私に代わって人を殺してくれる人間がね」
「確かに警察庁のトップ自ら人を殺したんではまずいでしょうな。私はカネを貰い、あんたは自分の欲求不満を解消する、というわけだ」
「欲求不満か。確かにその通りだ。私は今の立場にいるかぎり、本当の欲求を満たそうとすれば、手足を縛られているようなものだ。正義の執行者が悪を為すことは表向きには不可能だからな。しかも、その『悪』が自分が本当に望む正義なのだから。信じて貰えるかどうか分からんが、私がこの世界に入ったのは『悪い奴』をやっつけたいという、それだけだったんだよ」
「少年の夢ですな。ところが、いざ警察のトップになってみると、悪い奴に対して何一つ手出しができない。それでこういう行動に出たわけだ。でも、いずれバレますよ。これでも日本は一応法治国家らしいですからね」
「そうならないように気をつけるよ。もし助けが必要な時は、この番号に電話してくれ。私の私設オフィスだ。オフィス名と番号は覚えて、この名刺は処分してくれ。秘書が電話に出るはずだから、名前と連絡先を言っておいてくれればいい。そうすれば、後でこちらから連絡する」

男は3本目の煙草に火をつけ、曲の終わったCDを再びプレイにした。東城との会談が昨日で、そのまま夜行列車に乗って、今朝この町に着いたのだった。
町の名前は北**市。東北地方の大都市の一つだ。冬の初めの肌寒い気候の中を一日歩き回り、町の様子を見た後、このホテルに投宿した。特に警戒を要するような気配も無かったので、近くのレストランで夕飯を食った後、ホテルに戻ってきたのである。




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働き手にギャラを支払うのが喜びである経営者www

小田嶋師は別ツィートで言っているが、言葉を扱う仕事の会社社長とも思えない言葉づかいである。
心理分析をすれば、「我々は執筆者にギャラを快く支払っており、ギャラを支払うことが喜びです」という「私は強欲経営者ではない」印象を与えたかったのだろうと思う。つまり、新潮45の右翼(と言うより、安倍政権、つまり偽右翼)へのゴマすり記事は、会社方針として「売るためにやった」のではなく、編集長の暴走だったと見せたいのではないか。

「チャンス」というカタカナ語はほとんど日本語化しており、ほとんどの場合、単なる「機会」ではなく「好機」という意味で、つまり、喜ばしいこと、という気持ちを含意している。
この発言のような状況で「チャンス」という言葉を選択した心理は興味深い。


(以下引用)





「原稿料をお支払いするチャンス」という言い方から判断するに、新潮社の社長は、自分の会社の出版物に寄稿している人間を「出入りの業者」とみなしているのかもしれません




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血圧上昇は加齢による必然

私は専門家の言葉はあまり信じない(つまり、専門家としてのポジショントークがかなりある、と思っているからだ。)のだが、一般人の体験談はかなり信じる。嘘を書いても意味が無いからである。
血圧というのは年齢とともに上昇するものだ、というのが私の認識で、これは昔は医学的にも認められていたはずだ。だから最適血圧は「100+年齢」とも言われていたのである。
それが、年齢にも体格にも性別にも関係なく、130だか135だかを超えると高血圧、となったのは当然、医療界と製薬会社の金儲けのためだろう。こんなのは陰謀論でも何でもなく、誰でも推測できることだ。
では、高血圧は無害か、というと、そこまで断言する自信は無い。まあ、降圧剤を飲んでも副作用が無いなら、気休めとして降圧剤を常用してもいいだろう。私は、もう長い間飲んでいないが。私の推測では、降圧剤の常用は認知症につながるような気がする。頭脳の血流に必要だと体が判断した血圧を薬で下げるのだから、脳に影響があっても不思議ではない。
で、下の記事にあるように、「運動をしても塩分制限をしても血圧は下がらなかった」という話を聞くと、何となく嬉しくなるのは、私は塩分制限も運動もしていないからである。「無駄な努力をしなかった俺って賢い~♪」という気分である。まあ、そうしているうちに、ある日突然脳溢血で死んだり半身不随になったりするかもしれない。


(以下引用)




吉田戦車「測り続けられない血圧計」挫折の理由は連載 2017.07.26

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吉田戦車「測り続けられない血圧計」挫折の理由は


 


 50歳をこえて、高血圧といわれる領域に入った。



 酒飲みの麺好きだからしかたないとは思うものの、このままほうっておいて薬にたよらなければならなくなる事態はさけたい。


 


 というわけで、2014年夏に血圧計を買った。上腕で測る一般的なタイプのもので、3779円。


 


 しばらくは毎日朝晩測り、スマホの血圧アプリに記入した。グラフが右肩下がりになれば、運動や減塩のはげみになるだろう。


 


 歩く時間を意識してふやした。軽いジョギングをこころみたこともあるが、一週間で挫折。とりあえず散歩は好きなので、歩きつづけるしかない。


 


 血圧本を何冊か読み、減塩も心がけるようになった。たとえば寿司は、醬油につける食べ方をやめた。小皿に少量入れた醬油を箸でつっつき、それを寿司の上にチョンとつけて食べる。コハダなど酢じめのネタは醬油完全カット。はじめは「醬油好きのこのオレが……」と情けない気持ちになったが、やがて慣れた。


 


 そんな努力をはじめたのに、グラフが右肩下がりになっていく気配はなかった。なんかギザギザ。1、2カ月程度じゃ結果が出なくて当然なのだが、血圧を測りつづけるモチベーションは下がる。挫折した。


 


 その後は数カ月おきに思い出したように測って「……改善してねえ」「むしろ上がってないか?」と、ため息つきながら引出しにしまいこむ、という感じになった。


 


 年に一度の健康診断の数値を目にすると、さすがにやる気が再燃する。寿司の「減塩食べ」は習慣化したが、ふと気づくと平気で連日ラーメンを食べたりしていて、 これじゃいかん、と思った。


 


 ふたたび毎日測りはじめた。



「旅行や帰省の時にもきちんと測らなければ!」と思いこんで、2015年の暮れに、持ち運びやすい手首式血圧計を購入。送料込みで2865円。


 


 これが失敗した。上腕式より、数値が高めに出るのである。



 どちらかといえば上腕式のほうが正確、といわれているので、手首式のやつに「ふっかけられてる」ような気持ちになる。


 


 上腕式が、私の気持ちを忖度し、サービスとして数値を低めにしている可能性もなくはないが(ないです)、どちらが正しいか判明しないまま、手首式は押入れの「失敗したもの墓場」にしまわれることになった。ごめんな。


 


 最近半年ぶりに、もちろん上腕式で測ってみた。まったく改善していない。もう一生、常に血圧を気にして暮らさなければならないんだな、とため息をつき、また定期的に測りはじめた。


 


 …………のだが…………


 


 毎日だとつづかないので、週3、4回でいいことにしたりと、敷居を低くしてやってなお、一カ月ぐらいで飽きて挫折。


 


 夏休みの宿題「毎日の気温調べ」がぜんぜんできなかったのと同じような、性格的なアレだろうか、と思ったりする。


 


よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめ し』を連載中。新連載『出かけ親』が「ビッグコミックオリジナル」15号(7月20日発売)よりスタート。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年8月1日号)



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理想的人格か発達障害か

竹熊健太郎のツィッターから、二つのツィート(健太郎氏のものではない。)を転載。
特に関連性は無い(まあ、日本会議関係の人物という共通項はある。)が、この二人のような人格の持ち主が、どちらも組織の最上位近くまで上り詰めるというのが面白い。

別のサイト(カマヤンのツィッター経由)で武蔵大学の教授が「発達障害」についての偏見をツィッターに上げて批判された話を読んだのだが、発達障害というのは、「或る理想像」(要するに、社会生活に適合するためのモデルである。)があって、それに合わない人格を「発達障害」だと認定しているのだと思うのだが、下の二人は発達障害ということになるのか、それとも社会が理想とする人格なのかwww

  1. 竹熊健太郎《地球人》‏ @kentaro666 11時間11時間前
  1. 片山さつき、舛添要一と夫婦だったんだよなあ。
  2. 6件のリツイート 10 いいね
  3. 取り消す
    1. さんがリツイート
    1. 18時間前
    1. そうよ。あれが靖国の本音なの。 靖国神社は、 「俺らがやりたいことをやりたいようにやらせろ。それに税金つぎ込め。それに反対する奴や邪魔な奴は、たとえ 天皇陛下でも、ぶっ殺す!」 っていうてるの。 それが靖国神社の本音。
    2. 9件の返信 761件のリツイート 745 いいね



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HN:
酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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