中学教師、医師、僧侶、自衛官、公認会計士――。神奈川県警が今年6~8月、高校の女子生徒に対する児童買春事件で検挙した顧客たちの職業だ。買春を仲介したなどとして児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春の周旋)などの疑いで逮捕、起訴された高橋亮太被告(31)はどのように客を勧誘していたのか。捜査関係者への取材で浮かび上がった手口とは。
まず事件を振り返ってみたい。高橋被告は2020年4~6月、東京都内の高級ホテルで計3回、知人の女子高校生1人と客8人以上を集めたパーティーを開催。客1人につき現金2万5000円の参加料を受け取っていた。繰り返しパーティーに参加する「常連客」も多かった。また8月までに24人の客も同法違反などの疑いで逮捕や書類送検された。
高橋被告はツイッターの自身のアカウントで、買春の相手が高校生だと暗に示唆したうえでパーティーの客を募っていた。ただ参加を希望する全員をパーティーに招待するのではなく、ツイッターでのやり取りの文面が丁寧で、まめに返信する人を「選抜」して招待していたという。
捜査関係者は理由について「乱暴で非常識な客に場を乱されたくなかったのではないか」との見方を示し、「高橋被告は職業で客を選抜していたわけではない。あくまで結果として、教師や医師らが選ばれた」と話す。
事件は、検挙された客の中に教師や医師らが含まれていたことから話題になったが、彼らが意図的に勧誘されていたわけではなかったのだ。
さらに、意外にも捜査関係者は「高橋被告は利益を得るためにパーティーを主催したのではない」と明かした。高橋被告が客から受け取った現金はほぼ全額がホテルの利用料などに充てられており、収入にはなっていなかったのだという。高橋被告も容疑を認めたうえで、「パーティーの主催はあくまで趣味だった」という趣旨の供述をしているという。
犯罪者の心理に詳しい奈良大の今井由樹子准教授(犯罪心理学)は、今回のパーティーの参加者が応募者の中から「選抜」されていた点に触れ、「『自分は選ばれたんだ』という特別感、優越感、満足感を得られる仕組みが、客が何度も足を運ぶ動機の一つになっていた可能性がある」と分析する。
また橋本和明・国際医療福祉大学大学院教授(犯罪心理学・虐待臨床学)は「高い倫理観が求められる職業にもかかわらず、同様の事件で検挙される人は後を絶たない。こうした立場にある人たちは人一倍高い意識を持ってもらいたい」と話す。【田中綾乃】