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「の」という助詞の機能

私は、考えるのが趣味だ、と自己紹介に書いているが、誰もが気にも留めないような事に疑問を持った時に、それを考えるのが一番好きなのである。(ある意味、北村薫的な「日常の謎」である。)

先ほどまでベッドの中で(部屋が寒いからだが)考えていたのは、「それでも町は廻っている」という漫画の中に出てきた、「注文の多い料理店」と「注文が多い料理店」という言葉の意味の違いという問題だ。作中では「注文が多い料理店」と言うと、「ただ忙しい店というだけだ」とされていたが、そうなのかな、と私は疑問に思うわけである。それなら、「注文の多い料理店」と言うと、それとどう違うことになるのか、そこまでは漫画では書かれていなかったので、謎は私の中にだけ残されたわけである。
そもそも「の」と「が」の違いは何か。
まあ、誰でも、「が」は主語を示す言葉だろう、と思うだろうが、では、「の」の働きは何か。「僕の本」「君の机」と言えば、所有や所属を示すことになるだろうが、「注文の多い」と言えば、「多い」に対する主語を示すようでもある。
そこで、「象は鼻が長い」という有名な例文を利用して考えると、「象の鼻は長い」と言えば、明らかにこの「の」は所属を示している。だが、「象の鼻の長さ」と言えば、この二つの「の」は所属を示すのだろうか。さらに「象の鼻の長さの比較」と言えばどうか。「象の鼻の長さの比較の研究結果」と言えばどうか。ここまで来たら、「の」は所属を示すと言うよりは、二つの分節や単語をフラットに接続する機能だ、というように考えていいのではないか。
つまり、「注文の多い料理店」と「注文が多い料理店」の違いは、「注文が」の方は、「が」による強調感(主語めいた感じ)が強い、ということである。それに対して、「注文の多い料理店」は、全体がフラットである。要するに、「注文が」では「注文」が強調されすぎるのに対し、「注文の多い料理店」なら、「料理店」という存在全体が浮かび上がるわけだ。

そう考えるなら、「それ町」の作者が「注文が多い料理店」を「ただ忙しい店というだけだ」と書いたのは、「注文が多い=忙しい」と、二つのタイトルの強調点の違いを直観的に見抜いていた、と言えそうである。





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HN:
酔生夢人
性別:
男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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