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日本の雇用問題(1)

前に予告した「日本の雇用問題の解決案」について考えてみる。

問題点は、IT化と機械化によって日本の産業は大幅に人員削減されて、わずかな仕事を無数の人間が奪い合うという状況になっているということだ。しかもそこに、外国からの「格安労働者」が入ってくる。正社員と派遣社員の仕事の奪い合いによって企業側は労賃をどんどんダンピングでき、さらに海外からの労働者を使って人件費が削減できるわけである。
だが、この状況によって生じるのは、国民全体の消費能力の低下である。一般家庭の可処分所得は減り続け、生活防衛のために安い物しか買わなくなる。企業はそれに合わせて商品の値段を下げ続けねばならない。こうして今、日本はデフレスパイラルに入っているわけである。ちょうど、ヘンリー・フォードが労働者に高賃金を払うことで自分の会社の車を購入する顧客を増やしたのと逆の現象が起こっているということだ。会社は人件費をどんどん削減し、それと同時に顧客をどんどん減らしているのである。
前にも書いたが、これは個々の企業の経営行動としては正しい行動だが、それが合成されると日本を貧困化させるという誤りを生じる、「合成の誤謬」である。しかし、企業行動としては正しいのだから、この人件費削減の流れを変えることはできない。また政府によって人件費削減を中止するように強制することも不可能だろう。つまり、日本はまったく手づまりの状態なのである。
バブル崩壊以来続いている「年間自殺者3万人」の主な原因はここにあると推測できる。つまり、自殺者の多くは、仕事の無い人間や金の無い人間だろう。病気が原因とされる場合でも、医者にかかる金が無いというのが自殺の真の原因だと思われる。それに対して政府はまったく雇用状況改善の政策を取ってこなかったのだ。ハローワークなどで職探しの手段を与えたところで、職そのものが無い、あるいは普通の人間にできる仕事がほとんど無い、という状況では職探しにも意味が無いのだ。せいぜい、ハローワークで働く公務員の仕事を作るだけのことである。

では、そうした状況を改善する手段はあるだろうか。
ある、と私は考えている。
これも前に書いたことだが、まず日本の産業構造を第一次産業重視に変えていくことである。つまり、農林水産業での雇用者を拡大することだ。具体的には、旧ソ連の「国営農場」のようなものを全国に作ることである。目標は食糧自給率を100%、いや200%300%にし、食糧輸出国になることである。
国営農場だから、そこで働く人間は国家公務員だ。毎日定時に農場に行き、所定の作業をして定時に退出する、という勤務は通常の公務員と同様である。
しかし、旧ソ連の経済体制は破綻したではないか、という疑問が提出されるかもしれない。私は、何も国家全体を社会主義にせよと言っているわけではない。自由主義、あるいは資本主義の社会の中に、国民保護の意味での食糧生産部門を作るというだけのことだ。ここの「国営農場」で生産されたものは、これまで同様に資本主義社会の競争原理に従って市場で売買される。そこで働く人間の給与も、上限はあっても、働きに応じた差はあってよい。ただし、管理職であっても普通労働者の2倍までの給与しか認めないことにしたほうがいいだろう。なぜなら、第一次産業で(どの仕事でも本当はそうだが)実際に働く主体は管理職ではなく、現場の労働者だからである。
国家公務員としての最低賃金が保障されるのだから、贅沢な暮しはできなくても、生きるのに不自由はないだけの給与は得られる。これによって、生活苦からの自殺は大幅に減らせるだろう。

すでに日本の製造業、つまり第二次産業は衰退に向っており、格安労働者を使った外国企業との勝負は不可能になりつつある。第二次産業において先進国から後進国へと中心が移っていくのは歴史の必然と言ってよい。ITなどでごまかしたところで、産業の競争力は人件費が土台なのだから、競争のためには人件費の安い後進国に生産の足場を移すしかないのである。つまり、日本での工業生産はこれから盛り返す可能性はほとんど無い。また、海外に生産拠点を移した企業は実質的にもはや外国企業なのである。日本国民の所得には何一つ貢献しない。  (以下、次回)

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