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愛とは何でしょう

小田嶋隆のブログの過去記事を転載。
ボブ・ディランよりも、私にはビートルズの歌詞やサイモンとガーファンクルの歌詞のほうが親しいのだが、ポップスの歌詞がノーベル賞の対象となったのは、社会の進歩と見做せそうだ。もちろん、ノーベル賞がユダ金賞であることはさておいての話。

ぼくはその人に心を捧げた
なのに彼女はぼくの魂を欲しがった


は、いい詞である。
愛に貪欲なのは女性の側であり、男の心だけでなく魂まで要求する、というのは何となく分かるような気がする。(つまり、完全服従の要求。奴隷化の要求www)男は心や魂より相手の体だけ得られれば満足するから無欲なものだwww もっとも、それは愛とか恋とはまったく別のものであるのは言うまでもない。

愛は漱石の「猫」の末尾で言及された「大和魂」に似ている。誰もがそれを口にするが、誰も見た者はいないwww

「愛とは何でしょう」は古いジャズソングの一つのタイトル。


(以下引用)

2005/11/05

歌詞


 先日、コメント欄のやりとりの中で、Lou Reedという人の歌詞を引用した。で、つい懐かしくなって、しばらくぶりにブックマークしてあった歌詞サイトを巡回して、びっくり。なんと、優良歌詞サイトの多くが、いつのまにやら、消えているではないか。
 インターネットがもたらした福音のひとつに、古いロックミュージックの歌詞が、いつでも閲覧可能になったということがある。Lou Reedみたいなマイナーなミュージシャンの曲も、だ。google検索の「Web全体」で「"Lou reed" "I'm waiting for the man" "lyric"」を検索すると、436件のページがヒットする。全部が全部歌詞掲載サイトではないが、たどって行けば色々と面白いページにぶつかる。
 訳詞についても、ちょっとしたアーティストに関しては、マニアが自分なりの翻訳を発表していたりして、その中には、非常に高レベルな仕事も含まれている。
 私の知っている例では、ポールサイモンについて、それはそれは素晴らしいウェブサイトがあった(←過去形)。
 7~8年前にweb上でそのサイト("Think too much"。管理人はプロの翻訳家で、「庭師チェシャ猫」という名前でサイトを運営しておられた)を発見した時、私は狂喜したものだ。レコードのライナーノーツに載っている訳詞で、なんとなく納得できずにいた部分や、「誤訳じゃないのか?」と疑っていた(とはいえ、正確な訳を自力で見つける力は無かった)歌についての20年来の疑問が、このサイト載せられていた訳詞のおかげで、いくつも氷解した。
 そのThink too muchが、無くなっている。
 移転を疑って、サイト名、管理人のハンドル名、記憶している訳詞のフレーズなどをキーにさんざん探したが、どうしてもみつからない。おそらく、データを削除して、サイトを畳んだのだと思う。残念。


 海外のウェブサイトでは、様々な歌詞が自由にやりとりされている。
 それどころか、bobdylan.comや、loureed.comといったアーティスト本人の公式サイトに、全作品の歌詞が掲載されているケースも珍しくない。
 なのに、この国(←と、他人行儀な言い方をしたくなる)では、なぜかインターネット空間での歌詞共有文化が、絶滅に追い込まれようとしている。


 詳しくは、ここを見てほしい。
http://sevenz.com/iHateJasrac.html

 
 このページも素晴らしい歌詞紹介サイトだったのだが、リンクしたページに書いてある通り、ある日JASRACからのクレームが来て、掲載済みの歌詞を削除せざるを得なくなっている。
 結局、JASRACは、アーティスト本人が自分の公式サイトで無料公開している歌詞を、なぜか、日本のサイトでは「掲載してはいけない」と言っているわけだ。何なんだあんたたちは? 何の権利があってそういうことを言うんだ?
 自分の好きなミュージシャンの大好きな歌について、みんなに知ってほしくて、内容を紹介しているページのどこが著作権を侵害しているというのだろう。
 どうかしていると思う。
 
 というわけで、問題提起と言ってはナンだが、Don't think twice,It's all rightの訳詞を掲載してみることにする。JASRACがどう言ってくるのか、ちょっと楽しみですね。
 原詞については、公式サイトへのリンクを貼る。まさか、シャイロックじゃなかったジャスラックもリンクに著作権があるとは言わないだろうから。


Don't think twice,it's all right


    くよくよするなよ
                       by Bob Dylan


座り込んで考えても仕方がないよ、ベイビー
そんなことをしてもどうにもならない
なぜなのか答えを探してもムダだよ、ベイビー
いまだにわかっていないようじゃね
夜明けにニワトリが鳴く時
窓の外を見てごらん
ぼくはもういなくなっている
ぼくが出発する理由は君
もうこれ以上考えない
これでいいんだ


明かりをつけても役に立たないよ、ベイビー
ぼくにはとどかないから
明かりをつけてもどうにもならないよ、ベイビー
ぼくは道の暗い側にいるんだから
ぼくの決心を変えさせて、引き止めるために、きみが何かを言ったりしたりすることを、ぼくはいまだに心のどこかで期待している
でも、ぼくたちはあんまり多く語りあうこともなかった いずれにしても
だから、もうこれ以上考えないことにしよう これでいいんだ


ぼくの名前を叫んでも無駄だよ
いままでしたこともないのに
ねえ、ぼくの名前を叫んでもどうにもならないよ
もうぼくには聞こえないから
ぼくは、考えながら、いぶかりながら、道を歩き、進んでいる
かつて一人の女性を愛した
彼女はぼくを子供と呼んだ
ぼくはその人に心を捧げた
なのに彼女はぼくの魂を欲しがった
くよくよし考えてもしかたがない
これでいいんだ


長いひとりぼっちの道を、ぼくはあるいている
どこに行くのかを 教えることはできない
さようならは、キミには上等すぎる
だからたったひとこと、さらばと言おう
君が不親切だったと言うつもりはない
もっと良くできたはずだけれど、別に気にしてはいない
きみはぼくの大切な時間を浪費しただけだった
もう二度と思い出さない
これでいいんだ



 許諾は、ボブ・ディラン氏本人から取ってある。なあに、オレとボビーの仲だ。何も心配することはない。
 証拠と言うわけでもないが、ボビーとのやりとりを以下に掲載しておく。
「先生、お久しゅうございます」
「おお、タカーシか。変わりはないか?」
「おかげさまで。先生もご壮健で何よりです」
「その”先生”というのをやめろよ。同じ詩人同士、立場は対等なんだから」
「……とんでもない。私が詩人だなんて」
「一度でも詩を書いたことのある人間は詩人だよ。いいかね、タカーシ。詩人は国家資格じゃない。自称だ。誰が決めるものでもない。ある日詩人たることを決意した人間は、その日から詩人なのだ」
「……でも、私のゴミみたいな詩は……」
「詩に優劣はないよ。すべての詩は宝石だ」
「ありがとうございます。でしたら、詩人同士ということで……ディランさん」
「ボビーと呼んでくれ」
「では、ボビー。さっそくお願いがあるのですが」
「OKだ」
「要件を聞かずに承諾するのですか?」
「詩人は詩人の申し出を断らない。それがどんな内容であっても、だ」
「実は、ボビー、あなたの歌詞を引用させて欲しいのです」
「引用? 変なことを言うじゃないか。詩は詩人の口から外に出た瞬間に万人の共有財産になる。違うか? それとも、私の詩が人類の財産ではないと?」
「ああ、ボビー。わかっているんです。あなたの詩は、私の血肉です。でも、ジャスラックが」
「ん? シャイロックがどうかしたのか?」
「いえ、ジャスラックです。日本音楽著作権協会、あなたの作品の日本における著作権を管理している財団社団法人です」
「私は、自分の作品を他人にまかせたおぼえはないぞ」
「でも、ジャスラックは、あなたの歌の引用を許諾しないと言うのです」
「タカーシよ、イエスキリストがペテロに託したものが何だったか知っているか?」
「信仰の権威でしょうか?」
「違う。誰もイエスキリストの代理はできないということを、イエスはペテロに伝えたのだ。だから、みだりに主の名をかたる者はニセ者だということのみが、ペテロの立場のすべてなのだ」
「では、ボビーの言葉を私のブログに書いてもいいのですね?」
「私の言葉はキミの言葉だ。聖書も同じだ。主のみことばは、生きとし生けるすべての子らの心のうちにある。聖書に著作権があるか? そのジャスラックという偽預言者は、人々の日々の祈りにも著作権使用料を要求しているのか? タカーシよ。私の歌を歌う者は私の権利を害する者ではない。私の歌を歌う者は、私の兄弟だ」
「ありがとうボビー」
「礼なら詩の神に言ってくれ。私もきみも、詩神のしもべにすぎない」



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