芸能人がドラッグ所持によって逮捕される度に大きく報道されるが、果たして、薬物依存への抑止力になっているのだろうか。その深刻さは簡単に解決するものではない。俳優・伊勢谷友介容疑者が大麻取締法違反で逮捕されたことを端緒として、「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は「ドラッグとは何か、なぜ禁止されているのか」という根本的な問いを投げかけた。
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俳優の伊勢谷友介容疑者が、自宅で大麻を所持していたとして逮捕されました。日本では、2014年秋に、当時多くの人たちに乱用されていた「危険ドラッグ」が、「薬事法」の改正によって厳しく取り締まられてから、大麻の乱用が急速に拡がっています。
今回は、「ドラッグとは何か、なぜ禁止されているのか」を書きます。ぜひ、多くの人に、ドラッグの本当の姿を知って欲しいと思います。
さて、ドラッグはたった二つのことばで定義できます。一つは、「やると止められないもの(依存性物質)」、もう一つは「やると捕まるもの(違法物質)」です。
ドラッグの依存性については、何人もの有名人が、何度も乱用を繰り返し逮捕されていることからも、その恐ろしさは理解できるでしょう。今回のケースでも、伊勢谷容疑者は、もし自らが逮捕されれば、どれだけ多くの人たちに迷惑をかけるかはわかっていたはずです。それでも、乱用している。そのことからもわかると思います。
ドラッグの使用がなぜ禁止され違法とされているのでしょう。それは、その使用が、乱用者の身体のみならず、特に脳や神経系に大きな影響を及ぼし(時には、その一部を破壊し)、一生回復することのない大きな傷を刻み込むからです。私は、これまで、社会復帰が困難あるいは制限されるようになってしまった多くの乱用者たちと出会ってきました。
今書いたことは、実は、すでに中学校や高校でみんなが学ぶことです。それを知っていても、乱用する有名人や若者が増えていることには、理由があります。
薬物乱用は、よく「被害者のいない犯罪」と呼ばれます。薬物乱用で被害を受けるのは、乱用している本人だけであって、だれにも迷惑はかけないという意味です。そのような考え方が広まっているせいで、乱用者は「どうせ潰れるのは自分だけ」と、乱用への抑止力が小さくなってしまいます。しかし、これは嘘です。今回の伊勢谷容疑者の逮捕によって、どれだけ多くの人が被害を受けるでしょう。すでに、関わった作品の配信停止や学長を務める学校からのコメント等で、その深刻さが伝わってきます。
また、日本で乱用されているドラッグの、栽培や密輸、密売には、ほとんどの場合反社会的勢力、暴力団が関係しています。暴力団にとっては、ドラッグはその主要な資金源の一つです。つまり、ドラッグを乱用することは、反社会的勢力を支えることになってしまいます。
ドラッグは、どのようなものでも、すさまじい快体験をもたらし、また再度その体験をしたいという渇望をもたらします。そして、乱用することとなります。
忘れないでください。ドラッグ乱用者の行き着く先は、良くて精神病院か刑務所。それ以外では、土の中しかないことを。