(以下引用)
注目を集め始めたリーディングスキルテスト
現在、主に小中学生を対象にすでに予備調査を終え、
1万人を対象にした本格的な調査に着手している。
文科省も、私たちの取組に刺激を受けて、今年度中に「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を導入する検討を始めた。
一般企業の中にも、就活における適性検査に、このテストを採用しようとする動きが表れ始めている。
急速に普及する可能性がある。
予備調査の結果は…
――予備調査の結果はどうですか?
本調査の結果が出ないかぎり、確定的なことは言えないが、
これまでのところ、テストを受験した公立中学校生340人のうち、
約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、
約2割は、基礎的な読解もできていない
ことが明らかになってしまった。
そして、偏差値の高い学校の生徒ほど、リーディングスキルテストの成績もよい。
「読める」子が偏差値の高い学校に入っている可能性がある。
どうやって「読める」ようになるのか、その原因はまだわからない。
その原因を探求して、対策を立てるのが、この調査の目的だ。
将来、大変なことになりかねない
それほど複雑な問題でなければ、受験テクニック的には、キーワードを拾い、パターンを覚える解き方のほうが効率がいいかもしれない。
でも、AIと同じ解き方では、AIには太刀打ちできない。
それでは、これからの時代は乗り切れない。
早く正解にたどりつく力は大事だが、
それが「読めない」子どもたちをそのままにしているとしたら、将来、大変なことになりかねない。
――大変なこととは?
すでによく知られているように、AIによって、これまで人間がやってきた少なからぬ仕事が置き換えられる可能性がある(野村総研調査)。
私が2010年に『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞社)を出版したときには、誰もまともに受け取ってくれず、本はSFの棚に並べられたものだが、
今ではかなりリアリティのある話として受け止められている。
読めなければ転職もできない
置き換えられるのは、
従来ホワイトカラーがやってきた、手順が決まっていて、覚えることのできる仕事だ。
経済学者の中には「仕事が消えても他の仕事が生まれるので、心配ない。産業革命のときもそうだった」と言う人もいるが、
現代は、何をやるにしても一定程度の知識が前提となる知識重視社会(知識基盤社会)だ。
たとえば、ある分野で失業した人が他の分野に移ろうとしたとき、
一定の職業訓練が必要で、それには初めて見る文章、自分の知らない分野のことが書いてある文章を「読める」必要がある。
しかし、もしそれを読む力そのものが備わっていなかったら?
失業は長期化せざるを得ない。
パソコンが使えずに申請書を書けないといったデジタルデバイド(格差)の問題があるが、
文章が読めないので、新しい職業に移行できないという事態が、より大規模に起こる可能性がある。
楽観できない。