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自省の能

中江兆民の「続一年有半」から、「自省の能」の章の一部を適当に現代語に訳しておく。時間が無いのでいい加減な訳だ。

(以下訳文)

自省の能とは、自分が今、何をしている、何を言っている、何を考えているかを意識する能力のことである。
(中略)
我々はこの自省の能があるので、自分がした事が正か不正かを皆、自覚するのである。だから正ならば自ら誇って心に楽しみ、不正ならば悔恨するのである。この点から言えば、道徳的にも法律的にも、自分がしたことに関しては、正か不正かは他人が知るより前に自分で分かっているのだ。
(中略)
世の中にはこの自省の能が極めて薄弱な者がよくいるが、そういう人はこの世でもっとも不幸な者と言わねばならない。たとえどんなに高位にあり富貴を極めていても、無駄に人生を過ごしているのであり、それは物を食べても味を知らないのと同じことで、日本の旧華族の旦那方はたいていこのような輩だ。どんなに貧しくても、その生活に満足し、我が身を自省して天地に恥じることが無いと確認し、悠然として閑暇を楽しむなら、その幸福はどれほどのものか。自省の能の有無は賢愚の区別と言うより、ほとんど人獣の区別と言ってよい。これがあれば人であり、これが無ければ獣だ。世の中に、このような獣のような人間がいかに多いことだろうか。



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