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無知のヴェールと無私のヴェール

「バカ国民帝国日本の滅亡」記事の一節を考察ネタにしてみる。先に引用する。



ジョン・ロールズの『正義論』で論じられた…


 


「正義にかなう社会」とは、どういう原理に基づいて成り立つのか…


 


´は、1970年代以降、欧米では重要な学術的命題であった。


 


 


それを受けてのアヴァイシャリ・マルガリートの仕事が…


 


『品位ある社会<正義の理論>から<尊重の物語>へ』であった。




さて、問題は「正義とは何か」「品位とは何か」「品位は正義に代わる社会統一原理になるか」である。まあ、3番目の命題は、最初から無理だという気がするが、先に前2者を考察してみる。
ロールズの「正義論」は有名だが、私はもちろん未読である。しかし、その中の「無知のヴェール」については、面白い考えだと思ったことがある。それは、「正義かどうかを判定する基準」である。私は、「無私のヴェール」と言うほうが分かりやすいと思う。東洋人や仏教徒なら即座に分かる話だろう。

「けう」という、一般人の哲学オタク主婦の解説が分かりやすい。長いのでマルクス・ガブリエルとやらの説の部分は省略する。(けう氏のお気に入りらしいが)



無知のベールとは、思考実験です。


誰かが犠牲になっている社会の現状から、平等を話し合います。


どのような話し合いなのかを見ていきましょう。



ポイントは功利主義の弱点を克服するために出てきた思想
目次 

無知のベールとは

無知のベールとは、ジョン・ロールズ(1921~2002)によって唱えられた思考実験です
(これからの「正義」の話をしよう マイケル・サンデル 参照)


まず自分が誰かわからなくなる「無知のベール」を頭にかけます。


自分がどんな立場かわからなくなります。


性別も年齢もわかりません。


自分が教育を受けているのかも、身体が不自由かもわかりません。


その状態で、どのような社会原則を作ればいいのかをみんなで話し合います


「あなたならどんな原則を選びますか?」

無知のベールの具体例

話し合いが少人数でものを分ける場合だったら簡単です。


ケーキが一つあったとしたら、均一になるように分ければいいからです。


しかし、社会は複雑です。


社会ルールを立てると想像してみてください。


無知のベールをかぶっている人はみな、「自分は抑圧された少数派かもしれない」と考えるとロールズは言います。


もしかしたらホームレスかもしれない。


もしかしたら飢餓で苦しんでいるかもしれない。


「ならば底辺層を切り捨てるシステムは避けたほうが無難だ」と人は考えます。


決定した後で、無知のベールを取ります。



あ、私の立場だったらそっちのが良かった!

このようなことが起こらない原則を目指します。


その時に、3つの原理がでてくるとロールズは考えました。

  1. 基本的自由の原理
  2. 機会均等の原理
  3. 格差原理

具体的に見ていきます。

無知のベールの3原則

ロールズは社会正義のためには3つの原理を導き出せると考えました。(哲学用語図鑑 参照)

基本的自由の原則

良心、思想、言葉の自由は保障されなくてはならない


日本国憲法にもあります。

機会均等の原理

たとえ格差が生まれても競争の自由は保障されなくてはならない


競争を否定しません。


しかし、疑問がうまれます。


自分が恵まれない状況にいた場合、自由に競争に参加できるだろうか?と。


最も不遇な人々と裕福層の人々との差は、調整されるべきだとロールズは考えます。


そこから出てきた考えが3番目です。

格差原理

競争によって生まれた格差は最も不遇な人々の生活を改善することにつながるものでなければならない


この格差原理をさらに詳しくみていきます。


「これからの『正義』の話をしよう」(マイケル・サンデル 2010)から抜粋します。


格差原理とは、いわば個人に分配された天賦の才を全体の資産と見なし、それらの才能が生みだした利益を分かち合うことに関する同意だ。ー
天賦の才に恵まれたものは、才能があるという理由だけで利益を得てはならず、訓練や教育にかかったコストをまかない、自分よりも恵まれない人びとを助けるために才能を使うかぎりにおいて、みずからの才能から利益を得ることができる。ー
こうした偶然性が、最も不遇な立場にある人びとの利益になるような形で生かせる仕組みを社会のなかにつくればよいのだ。」


顔がいいから鼻眼鏡をかける。


足が速いから重りをつける。


頭がいいから騒がしいヘッドホンをかける。


そういうことではなく、能力や環境の差など人の多様性を認めます。


多様性によって所得格差がでるのは仕方がないことだ、と。


最も不利な立場にある人々の状況を改善するための所得格差を認めています。


自由もあって、競争もできて、生活に困らないという原則です。


なので、無知のベールをかぶっていれば受け入れたくなる3つの原理です。



無知のベールをかぶったからこそ出てきた原理なんだね

ロールズは無知のベールを政治から考えました。


政治家の役割の一つは、市民から得た税金を再配分することです


無知のベールの基本原理のように、福祉にも政治はお金を配分しています。

無知のベールの立場

無知のベールを唱えたロールズはリベラリズムと言われています。

リベラリズム⇒富の再分配などを通じて経済的な弱者を救済し、福祉国家的な政策を支持する立場。

リベラリズムは功利主義を批判する形ででてきました。

功利主義⇒社会全体の快楽の増大や苦痛の減少を基準にして、道徳や立法の判断をするべきだという考え方。
功利主義は、社会全体の幸せのために誰かが犠牲になっても仕方がないと考える立場でもあります。
それを批判する形で無知のベールという思考実験が唱えられました。
歴史を見ていくと、ある良い案がでてきたらその次にその欠点を埋める思想がでてきます。
では、リベラリズムの欠点は何でしょうか。

現代の哲学者マルクス・ガブリエルは言います。


「絶対的に見ると、下層にいる人の数がこれほど多くなったことは人類史上ありません。」


貧富の格差は広がっています。


政府が弱まり、企業が力を持ってきました。


つまり、今の社会に基づいて現実的な原則を打ち立てよう、という流れです。



抽象的すぎる思想を現実のものに、という観点からマルクス・ガブリエルの主張を見ていくよ!


無知のベールと「モラリティの資本主義」まとめ

無知のベールとは思考実験です


自分が何者かわからない状態で、社会の原則3つを導き出しました。

  1. 基本的自由の原理
  2. 機会均等の原理
  3. 格差原理

世界に制度がない当時、人々の全体の幸福度をあげればよいという功利主義が生まれました。


しかし、それは誰かの犠牲の上になりたっていました。


その犠牲をなくすのがリベラリズムによる「無知のベール」での話し合いです。


人々の自由や競争といった多様性は認めます


そして、その結果として生じた格差を補うことが前提になっています


ロールズは無知のベールを政治の視点から語りました。


しかし、貧富の格差は広がっています。


なので、マルクス・ガブリエルは無知のベールに倫理の視点で取り入れました。


モラリティの資本主義です


人々の「非人間化」や「無知」を防ぎます。



時代に合わせてよりよい社会を考えているんだね

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酔生夢人
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職業:
仙人
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考えること
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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