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天国の鍵40

その四十 魔法使いチャック

パーリに入って十日ほど歩くと、前方に岩山が見えました。そして、ハンスが目をこらして見ると、そのふもとには神殿らしいものが見えます。
ハンスたちはその神殿に向かって進んでいきました。
神殿のまわりには、町も村もありません。砂漠の中に、神殿だけがあるのです。
神殿に近づくと、どうやら廃墟のようで、人のいる気配(けはい)はありません。とにかく、ハンスとアリーナは、ここで一休みすることにしました。
少し昼寝をして、ハンスが目をさますと、ピントがううっと低くうなりました。ピントがうなった方角を見ると、砂漠の向こうに、小さな人影が見えます。こちらに近づいてくるようです。
(あやしい奴が近づいてきますよ)
とピントの心はハンスに言っています。
やがてその人影は完全に人のすがたになりました。十二、三歳くらいの少年です。アスカルファン風の身なりをした、金髪の少年です。
その少年は笑顔を浮かべて、ハンスとアリーナに近づきます。なんとハンサムな少年でしょう。アリーナが一目でぽーっとなったのが、ハンスにはわかりました。
「やあ、君たちも天国の鍵を探しているのかい」
金髪の少年は、アリーナに目を向けて言いました。ハンスのほうは無視しているようで、ハンスはおもしろくありません。
「あなたもなの? じゃあ、あなたも魔法使い?」
 少年はうなずいて、右手をぱっと一振りしました。すると、その手には、一輪の真っ赤なバラの花が現れました。少年は、軽くおじぎをしてそのバラをアリーナにささげました。アリーナは大喜びです。女の人がおくりものに弱いのは、いつの世もかわりません。
(ちえっ、あんなの、魔法じゃなくて手品だ)とハンスは心の中で考えましたが、口には出せません。男のヤキモチはみっともないですからね。
「ぼくの名前はチャック。君たちは?」
「私はアリーナ、この子はハンス」
(この子、なんて言い方はないだろう)とまたしてもハンスは心で考えます。たしかに、なにか、よそよそしい言い方です。
「ぼくは、アルカードから来たんだ。そこで、ソクラトンという賢者に会って、天国の鍵のてがかりとなる巻物をもらった。でも、それだけではよくわからないから、もしも君たちが知っているてがかりがあったら、教えてくれないか。ぼくのてがかりも教えるから」
 アリーナはハンスの顔を見ました。
 ハンスは少しまよいました。せっかく苦労して手に入れた巻物を、こんな正体不明の少年に見せていいものでしょうか。

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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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