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ユダヤ民族と一神教

「人間モーセと一神教」(光文社文庫)から抜粋。この前の部分に「民族の神の変更」の件が書かれている。「唯一神」はもともとエジプトで一時期信仰対象となった太陽神崇拝の宗教らしい。それが出エジプト後にユダヤ人が(モーセによって)採用した経緯があるようだ。興味深い箇所がたくさんあるので、引用が長くなりすぎて、一番面白い「原罪」の起源、あるいは原罪という奇妙な思想がどういう「理屈」で生まれたのか、フロイトが見事に解き明かした部分はまたいつか紹介する。

(以下引用)色字は夢人による強調。

ところが運命はユダヤの民にさまざまな困難な試練と苦痛な経験を与えたのだった。このためユダヤの神は厳格で冷たく、陰鬱な神となったのである。ヤハウェはすべての国とすべての民族を支配する普遍的な神という性格を維持していたが、この神を崇拝する民がエジプト人からユダヤ人に変わったために、ユダヤ人こそがこの神の選んだ民であるということになった。この民は特別な義務を負う代わりに、最後には特別な報いをうけることができるとされていた。
ユダヤ人にとっては、全能の神に選ばれた民でありながら、不幸な運命のもとで悲しむべき経験をしなければならないという事実は、うけいれることが困難だったに違いない。しかし迷うことはできないのであり、神への不信を封じるために、みずからの罪悪感を強めて、最後には「極めがたい神意」というものを思いついたのである。(…略…)神がアッシリア、バビロニア、ペルシアなどのような暴虐な民族を次々と登場させ、ユダヤの民を屈服させ、虐待したことは不思議と思えただろう。(…略…)
ユダヤ教に一神教がはいりこみ、この一神教がキリスト教のうちにも維持されたという事実ほど明白なプロセスは、宗教史においてはほかに例をみないほどである。(…略…)
さしあたりは、一神教という理念が誕生するにあたっては、ファラオによる世界支配がきっかけとなったと考えておこう。そしてこの理念はエジプトの土地を離れて、別の民によって引き継がれた。この民族は長い潜伏期ののちにこの理念を貴重な財産として大切にするようになったのである。そしてこの理念のもとでユダヤ人は自分たちが選ばれた民であるという誇りを抱くことで、民族としての生命を永らえることができたのである。


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酔生夢人
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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