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気の赴くままにつれづれと。
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203
ハッピーバースデイ、キリスト。
キリストってあれだね、誕生日がクリスマスなんだね。
誕生会がうやむやになるアレね。
あ、違うの?
キリストが生まれたから、クリスマスになったの?まじで?
生まれて35年。
ほんとキリストじゃなくて良かったと思う。
自分の誕生日がクリスマスになるとか、もうね。
プレッシャーすごい。
一応ね、私もちょっとした10月が誕生日だったわけなんですけど。
もー繰り越したい。
携帯料金のように、使ってない誕生日は繰り越したい。
なんだかんだで35回目なわけですよ。
正直ね、予定がない。そうそう35回も、予定入れらんない。
家庭もなければ、彼氏もいない。
待ち人なんてね、来たためしないわけです。
いやね、諦めてない。
来るの、きっと来る。
あの貞子だって、なんだかんだで、もう5回くらい来てるわけですから、
35年待ちに待った白馬の王子だってね、もうそこのタバコ屋の角まで来てると思う。
白馬なんかで言えば、もうギリ寿命ですよ。けど来るの。
なんなら王子がスーホ状態で死んだ馬の馬頭琴かきならし、ベビベビベイビーつって布袋みたいに登場するんです、あの角から。
その日をもってね、わたくしの誕生日としたい。
なんならそれをクリスマスとしてくれてもいい。
でもね、とりあえず、今年は来なかったよね。うん。
いやいやいやオーディエンスオーディエンス。
いるでしょ1人くらい。
世界人口70億人ですよ。
この世界の半分は男性でできているって聞いてるんですけど。
あれかな、バファリンの半分なのかなってくらい実感ないんですけど。
なのでね、もうだいぶ前から誕生日はひっそりと暮らしてたわけです。
就職してからも必ず仕事も休みにして、息をひそめて、家でガラスの仮面を一気読みしたりしてたわけです。
「ウ・・ぅぅうぅ・・ウォオぉタァァアアー」
とか言って、マヤとヘレンの演技対決をしたりしてたわけです。(ガラスの仮面「炎のエチュード」より)
で、今年ももちろん休み希望を出しましたよね。
仕事をすると、大抵怒られるので、誕生日に怒られたくないですし。
ところが、そんなささやかな私の願いが、ついに今年は叶いませんでした。
ことの発端は2011年にさかのぼります。
割と遡ります。
逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ・・・!
って碇シンジくんも言ってたんですけど、
私の仕事はエヴァンゲリオンじゃなくて看護師ですし、
しかももう看護師になって13年くらいたつはずなんですけど、
いまだに初めてEVAに乗りこむシンジくんのような気持ちで仕事してます。
病棟の使徒の詰め寄りが、すげくて。
使徒っていうか、よく見ると師長なんですけど。
はたまた、先輩ナースとかなんですけど。
こえーこえー。
もう病棟という名の第3新東京市はここじゃない?
なんていうか、いまだに、結構いいペースで怒られます。
その辺の若造にはまだまだ負けないくらいぞ、ってくらい怒られます。
山本昌かってくらいの長めの現役生活。
正直、こんな大人になっても、まだいけるんだなって。
てっきり、自然に怒る側にシフトしていくんだと思ってた。
もはや、ビジュアルとしてはギリ。
病棟で怒られるっていうと、まあ花形は普通は新人で、
それこそ一挙手一投足、箸が転がっても、右も左も怒られるっていう修羅場をみんな越えていくわけですが、
なんていうか、いまんとこ人気を二分してます。
新人と私で、80年代の松田聖子と中森明菜かってくらいに、二分してる。
二分して怒られてる。
なんていうか、あいつ(新人)は私にとったら、永遠のライバルっていうかな。
同じ戦場を戦う同志っていうかな。
こないだ、新人が「なんでこんなやり方してるの!」って先輩に怒られてて、まあ見るからにまるで失敗のやり方だったんで、これはチャンスと思ってね、たまには私もと思って、「ちょっとちょっと、これはこうでしょ!」って看護歴13年の粋を結集して見本を見せたら、昭和かなってくらい思いっきり時代遅れなやり方だったようで、こぼれ球拾いに行って流れ弾に当たるっていう斬新な怒られ方したのね。
ああ、あのSMAPが口酸っぱく言ってた青いイナズマってこれかなってくらい、もうね炎・カラダ・焼き尽くすくらい怒られました。ゲッチュ。
こうなったらね、ミイラ取りが立派なミイラになる瞬間をばっちり見てた新人に、「俺の屍を越えていけ」って必死にウインク送ってたんですけど。
ほんと漫画だったら、「ここは俺に任せろ!」つって。
「俺が怒られてるうちにお前は先に行くんだ!」って。
ただ、まあウインクが下手すぎて、ただのマバタキで、「あれ、加藤さん、なんか泣いてない?」って心配されてて、まあ、うん、ちょっと泣いてもいたんですけど。
で、最終的に、新人にかばわれるっていうね。
そんな寸劇を繰り返してるわけですが。
そもそも2011年。
今から約4年前、私は中規模のアットホームな病院から、なぜか大学病院に転職したわけですが。
リカちゃん電話にかけてみるくらいの軽い興味でね、たまたま電話した転職サイトの人が、すげぇ敏腕の凄腕で。もうね手腕でいうところのボブサップくらいの腕で。
東日本大震災のゴタゴタの中、すげぇ勤め先を見つけてきて、おんぶにだっこで、アレヨアレヨと入職してた。
で、舞い降りた地がまさかの救命救急ですよ。
それこそ農村から渋谷に迷い込んだんじゃないかってくらい。
もういっそ、違う国に来たんじゃ?ってくらい。
そして、病棟のど真ん中でバックパッカーみたいになってる私に、見かねた師長が言ったわけです。
「うんうん。加藤さんはあれだよね、良かったら研修に参加してみない?」って。
まあ、私はね、その時だって9年目くらいの看護師でしたから、中堅研修だと思って疑わなかったわけで、「是非!」なんつー返事でね、喜んで参加したわけです。
びっくりしたよねー。
研修当日を迎え、ぴっちぴちの1年生に紛れながら、講義を受けてて。
完全なる新人研修だったのね。
もうね、紛れながらつったけど、紛れてない。紛れれない。
21とかの中に、思いっきり三十路が飛び込んだからね。
小1の教室に中2がいる感じね。
手遅れ感すごい。
それでもまだ、講義はいい。
地獄はそのあとの、グループワークっていうのかな。
班にわかれて、話し合ってみよう!みたいなやつ。
「じゃあ、配ったレジメを見て、班に分かれてくださーい。
各班に一人ずつ先輩講師が入りますから、進行は先輩講師に確認してくださーい」
なんて言われて のこのこ班に分かれたわけですけど。
右も左もピチピチの20歳たち。
すぐに1番恐れていたことが起こったよね。
全員がね、まあ私を講師だと思って疑わないわけです。
すげぇキラキラした目で、「なにやればいいですか?」みたいな目で見てくる。
「なにやればいいですか、先輩講師!」みたいな目で見てくる。
まあ、この班で如実におばさんでしたからね。
間違いなく。
ファーストインプレッションから決めてましたってくらい、不動のおばさんがいましたからね。
でもまあ私だって私なりに目星をつけてるわけです。
真向かいにね、付けまつげを針葉樹林?ってくらいつけてる子が大人し気に座ってるんですけど、うんうん、私よりは確かに若い。でもおめぇ絶対先輩講師やろ?って。
でも、樹林が全然口を割らないわけ。
超 こっちを泳がせて来る。
クロール25m何秒?みたいに泳がせて来る。
思わず泳いだよね。
全体の進行役みたいな人から「私なりのキラキラ看護」みたいなトークテーマを与えられ、
じゃあ10代真剣しゃべり場的な感じでよろしくとばかりにサイは投げられ、
全員からまるで小堺一機を見るような目で見つめられ、
もしかしたらもしかしたら、私って本当に講師として呼ばれた先輩講師なんじゃない?
って微レ存にすがるように、そりゃがむしゃらに泳いだよね。
なんていうか、久々の羨望の眼差しだったわけですよ。新人からの。
先輩講師!先輩講師!つって、もうバックパッカーのように暮らしてた私の前にリムジンが止まるような甘い誘惑。
もうね、「しゃべり場?そんな生易しいもんじゃねぇぜ看護ってのは!」つって田原総一朗かってくらい回したよね。切り込んだよね。これは朝まで行くな。って。
でも、私の手腕に目の前の針葉樹林もどさくさに紛れて話だしたから、アレ?つって。おめぇ違うの?ってなって。
もうグループワークっていうか、私の中でちょっとした人狼が始まってるわけです。
そんな人狼開始15分後。
「ごめんねー!遅れちゃって!講師の林田ですー。で、どこまで話いきましたー?」
ってなった時のね、地獄ね。
じゃあオマエ誰?っつってね。
全員がこっち見たよね。
そっからはもう死んだ田原総一朗みたいになってね、まあ「働いてて一番つらかったこと」みたいなトークテーマではね、「今かな」つってたよね。おのずと。
「転職したら救命救急に配属されて、色々あって今ここ」っていう、だいぶ遅めに正体を明かしました。
そんな田原総一朗の遺言みたいなのがね、研修委員の林田さんの心にまさか刺さるなんて思いもしなかった4年前。
そして2015年10月。
使徒っていうか師長に急遽、呼び出されたわけです。
これはいよいよ何かやらかしたかな、と、覚悟を決めていくと、
「6階病棟の林田さん知ってる?」って言われて、
全く覚えがないわけですが、
「研修委員やってる人なんだけど」って言われて、
うっすらとあの日の悪夢がね蘇ってきたんだけど、で?って思って。
すると「実はおめでたってことがわかってね」って言われて、
「それは・・おめでたい・・ですね」つって。
ここまでで、話の流れが全くつかめなかったんですけど、師長がちょっと言いにくそうに、
「で、本人はやる気だったみたいだけど、さすがに体に負担がかかるから研修委員でストップがかかって、加藤さんに代理を頼めないかって話になってね」
「なんの代理ですか・・?」
「研修の。もちろん講師として」
えーーーーーーーーーー!
まさかの講師側のオファー!
正直、満更でもない。
私が講師。
私がセンセイ。
もうね、金八の卒業シーンとこまで想像した。
「まあ1日だけの代理だし加藤さん1人じゃないから。5人いるから、助け合って」
って言われ、もう勢いよく頷きながら
「はい!っていうか何の研修ですか?」
って聞いたら、
「BLS、です」と師長。
・・・ボーイズラ・・・
「BLS。一次救命処置、です」
知ったかしそうになった私に師長が言い直した。
あーそれね。そっちのBLSね。
BLS・・・・・別名、一次・・・救命処置!
あのテレビとか漫画によく出てくるやつ・・ですかね。
海でおぼれた主人公とかに、気になってた男子がやるやつ。
いわゆるひとつの、あれですね。
すごいやつ。
気道確保に始まり心臓マッサージ、そして人工呼吸に続くやつ。
正直、血圧の測り方とか、百歩譲って注射のやり方とかの研修が良かった。
「一次救命処置」の研修は、年間の数ある研修の中でも異彩を放っているって噂を聞くし。
他の研修が「ナースのお仕事」でいうところの「あ~さ~く~ら~!」くらいのテイストだとすると、「一時救命」の研修は「海猿」の「生きて還る!」くらいテイストが違う。
講師陣も阪神大震災経験のあるナースやら、DMAT(なんかすごいやつ)のナースとかで構成されてて、まさに、私みたいなバックパッカーがリュックひとつで参加できるような場所じゃないはず。
「・・・師長・・なんで・・?」
私がカサカサの唇で問うと、
「・・・私にもさっぱり・・」
と同じくらいカサカサの唇で師長も。
「ただ、林田さんが救命病棟の加藤さんって覚えてたみたいで・・なんかすごい語ってたから指導向きじゃないかって・・」
あれかー!あの日の死にかけの田原総一朗かー。
研修委員は病院の中では出世街道の一つで権力があり、そう簡単にオファーは簡単には断れないとのこと。
師長も私も「1日。なんとか1日乗り切ろう!」と覚悟を決めた。
「で、いつなんですか、師長?」
「明日」
「え」
「明日です」
「師長・・・!」
それが私の35回目の誕生日でした。
「明日の休み分は、今月どっかで繰り越すから大丈夫よ」と師長。
師長の力によって、誕生日の休みだけが繰り越された瞬間、
師長に渡されたBLSのテキストを握りしめて私は放課後、研修室へ行った。
ガラリとドアを開けると、まさにアレ。ドラマの。
転校生が初めて来た時みたいな。
人形を囲んでミーティングしてた4人の看護師が一斉にこっちを見たけど、すぐに話しに戻るみたいな。
そこに、研修委員の人が来て
「ああ加藤さんですか?急にすいません。とりあえず、えーっと加藤さんはこの人形で練習してもらっていいですか?」
人形のまわりに、救命道具やらAEDやらが置いてある。
「研修自体は、班にわかれて、各講師のもとに15人くらい1年生がつくので、このテキストの手順通りにすすめてもらって」
人形にはハナコってバッチがついてた。
むこうの4人はもう半年の練習ばっちりで、1年生役と指導者役に分かれて、「じゃあまずは呼吸の確認からやるよ!」「はい」なんつって、すげえテキパキやってる。
ハナコと私のアウェー感すごい。
ハナコと若干見つめ合ってると、
「加藤さんも1年生を教えるみたいに声出しながらやったほうがいいですよ」
と研修委員の人に言われ、
「えっと、大丈夫ですかー・・・意識なしっと、・・・呼吸もなし・・・脈・・なし・・じゃあ」
小公女セーラーかっつーくらいハナコにボソボソ話しかけてたら、
「ちょっとあなたさー、明日もそんな蚊の鳴くような感じでやるつもりなの?」
つって、練習してた4人の中から1番怖そうな人出て来たー。
完全なる泉ピン子。
えっと、蚊の中では、結構声出てた方だと思うんですけど。
「私がさー1年生役やったげるから、ちょっと最初っからやってみて」
すげぇベテランの1年生きたー!
そして最初っからっていうか、もうこれが最初であり最後であり・・・。
「えっとじゃあ、意識の確認から始めます。えっと、・・大丈夫ですかー」
私はハナコを揺すりながら言った。
「意識なし・・っと」
「ねえ、今ので意識が確認できてんの?」
1年生がこわい。
ハナコも意識がないけど、私の意識も方も確認してほしい。
「もう一回やってくれる」
「えっと・・大丈夫ですかー?!わかりますかー!」
「ダメ」
「大丈夫ですかー!!」
「ダメ」
「大丈夫ですかー!!!」
もうブラジルのみなさーん!くらいの声は出した。
手でメガホンも作った。
「あのね、意識があるか叩くときは両肩。脳が損傷してたら麻痺があるかもしれないでしょ」
声の問題じゃなかった。
手でメガホン作っちゃってたのをそっと外す。
「次に呼吸を確認します・・・なし・・っと」
軽く終わろうとしたら、
「ちょっとどこ見てんのよ!」
つってもうね、そんなこと言うのヤクザか青木さやかかってくらいでね。
あと、しいて言えば、怖くてどこも見てなかった。
正解としては胸ね。胸郭の動きを見るそうです。
そして「脈を確認します」と手を伸ばすと、
「頸動脈ってどこにあるの?」と。
もうね、1年生役が強い。
すぐ下剋上しそう。
「ここです!」
言いました。
つーか、怖くてゴー☆ジャスくらいの早さで、指したんですけど。
マダガスカル!くらいに指さしたんですけど。
「解剖学的に言ってくれる?」
とのこと。
ちーん、と音がしたよね。
あー多分、今ね、喪服の人が来たら、間違ってここにお焼香しちゃうと思う。
そんくらいの通夜感。
ねえハナコ。ちょっと私の脈もみてくれる?きっと触れてない。
若干、心停止した私に見かねたピン子が早口で喋る。
「甲状軟骨(コウジョウナンコツ)に二指そえて胸鎖乳突筋(キョウサニュウトツキン)までスライドさせて内側を軽く圧迫。そこが頸動脈!」
いや呪文でしょそれ。
キョウサニュウトツキンて。
「じゃあ甲状軟骨ってどこ」って言われて、一か八かで喉のへんを触って、正解する。
「じゃあ胸鎖乳突筋は?」って言われて、一か八かで乳首あたりを攻めてみて雷落ちる。
首でした。
「脈なし・・と。じゃあ、心マします」
「は?」
「心マします」
「は?」
「心臓マッサージします」
「あなた、心臓をマッサージなんてできるの」
えっと、医療界隈で心マなんてかっこつけて言うと、今や目で殺される時代になったみたいです。生きづらい時代です。
えー江口だって心マって言ってたじゃんようー。
と思いつつ。
心マちゃんは新しいネーミングに変わったみたいです。
それがなんと、胸骨圧迫!
えー。
超ダサイー。
「胸骨を圧迫するから、胸骨圧迫。じゃあ胸骨ってどこ」
胸の骨ですからね、ヒントは多聞にある。
「ここ一帯が・・」
つって広めにとって怒られる。
「じゃあ剣状突起は?」
今度こそ乳首を指すが、不正解。
もう乳首以外に気軽に突ってくるの禁止にしてほしい。超惑わされる。
そんなんやって、やっと胸骨圧迫を開始してね。
胸骨圧迫の早さは1分間に100回くらいなんだけど、上手にやると、ハナコが目を開けて「ありがとう」って言ってくれるんですが。
もうね、うんともすんとも言わねえ。
とんだツンデレでね。
多分、一生分くらい胸骨圧迫した。
でも段々コツがわかってきて、ハナコの胸骨は制した!
ってところで、お許しが出てその日は帰ることになった。
帰り際、ピン子が、
「加藤さんは一次救命処置は何のためにするんだと思う?」
って聞いてきたので、
「確実に命を救うため・・ですかね?」
なんつって、ちょっと照れながら言うと、ピン子がちょっと遠い目をしながら、
「命ね・・。一次救命処置は、素早く的確にすることで脳へのダメージを最小限にするの。加藤さん、私の目指す一次救命処置の目標は、ただの救命じゃない。障害を残さない社会復帰だから。」
ずどーん!
ピン子姐さん・・・・!
一次救命処置の目標はただの救命じゃなく社会復帰。
超しびれた。
ここでドリカム流れてもおかしくなかった。
私も明日の本番、ピン子みたいに江口っぽいこと言いたい。
家に帰って、テキストに一心不乱にセリフを書き込んだよね。
1項目ごとにキメ台詞を作ったよね。
橋田寿賀子かなってくらい壮大な脚本を作り上げ臨んだ研修。
完全に脚本を家に置いてきた。
でも大丈夫。
大切なのは1秒でも早く胸骨圧迫を開始すること。
そのために素早い意識と呼吸と脈の確認が必要で、なぜならそれは~
1年生「胸骨圧迫!」
意識がない!呼吸がない!脈もない!そしたら~
1年生「胸骨圧迫!」
胸骨圧迫を少しでも早く開始すること、それすなわち~
1年生「社会復帰!」
他の班がベテランの多岐に渡る質問を受けながら緊張した面持ちで実技をやってる中、うちの班だけは、失われたシナリオのせいで私の引き出しがなさすぎて、答えが「胸骨圧迫」か「社会復帰」のほぼ2拓になってる。
2択なのでリズム感でちゃうし、1年生も自信を持って答えるしで、うちの班だけちょっとしたライブの歌手とファンの掛け合い状態。
これじゃヤバイと思って、奥の手を使って、「じゃあ頸動脈の位置を解剖学的に言ってみて」つって。軽くパクッて。
わからない1年生に「甲状軟骨から胸鎖乳突筋」って呪文を華麗に披露して、しめた!って思いつつ胸骨圧迫の見本を見せる瞬間に手の甲に「コウジョウナンコツ」「キョウサニュウトツキン」って書いてあることがバレルっていうね。
そしていよいよバックバルブマスクっていう、これ佃品質じゃない?ってくらいのマスクで換気したり、AEDの使い方を教えたりと、演習も佳境に入ってきて、
いよいよ倒れてる人を発見した状態から1年生の力だけで一連の流れをやる段階に来た。
もうね15人をね、私一人で回すわけでね、身体が足りない。
私はもう映画監督のように、「よーい、ハイ」つって、
1年生「大丈夫ですかー!わかりますかー!」
私「はい、意識ないよー」
1年生「誰かきてくださーい」
私「はい、仲間くるよー」
1年生「呼吸を確認します」
私「やばいよー呼吸ないよー」
1年生「脈確認します」
私「解剖学的にー」
1年生「甲状軟骨から指を胸鎖乳突筋に滑らせて」
私「いいよいいよー呪文言えてるよー、はい、脈ないよー」
1年生「胸骨圧迫します」
私「なぜなら~」
1年生「社会復帰のため!」
胸骨圧迫がスタートしたら、私はダッシュでAEDを別の1年生に渡す。
私「はい、AED来たよ」
1年生「AED付けます!」
私「はい、誰かドクターに連絡してるー?」
1年生「私、電話します!」
私はバックバルブマスクを別の1年生に渡す。
私「はい、マスク付いたよー」
1年生「換気開始します」
1年生「トゥルルルー」
私「はいドクターです」
1年生「患者さんが心肺停止です。すぐ来てください」
私「家族に電話したー?」
1年生「私電話します。トゥルルルー」
私「はい、加藤です、主人がいつもお世話になってます」
こんだけやっても1年生を5人くらいしか回せてないわけです。
でもグループには15人の1年生がいるわけで、ピン子から口酸っぱく言われてたのは
「1年生を決して飽きさせないように。みんなが自分のことのように動けるように臨場感を持って」ってことだった。
でもすでに5~6人手持ちぶたさになってる。3人くらい爪とか見てる。
もう、私なんかドクター役から患者の妻までやって汗だくで、
なんなら今日は誕生日なわけで。
その時、AED係の1年生の緊張感のない「ショックをかけま~す、離れてくださ~い」って声が聞こえた時、
毎年読んでたガラスの仮面を読んで、ウォオォオォオタァアアアアとマヤと叫び合ったあの日の私が、なんかこのタイミングで飛び出した。
私はハナコの胸元に飛び込んだ。
「お父さん!!!お父さん、どうして!!目を開けてよ!!お父さん!!お父さん、死んじゃいやあああああぁああ!!」
これにはぼんやりしてた1年生も驚いて、5人がかりくらい引きはがしに来る。
「離してください!お父さん!!いやああ!!お父さん!!」
「大丈夫ですから!ショックをかけるので離れてください!!!」
「お父さぁあっぁん!!!!」
「大丈夫ですから!今、処置をしてますから!!」
1年生もおのずと声が真剣になってる。
他の看護師より知識もない。経験もない。引き出しもない。
でも、私ほどガラスの仮面を読んでる人はいない。
私にできるのは、15人を引き付けるマヤの演技。
ああ、月影先生・・・これがあの紅天女なのね・・
そんな感じでうちの班だけ若干ドラマティックに演習を終えて、今度は、高性能の心肺蘇生訓練用人形サトルを使っての、本格的にデモンストレーションとなった。
サトルは実際に本物のAEDをかけたりすることもでき、効果的なBLSができると、本当に生き返えっちゃうっていうハナコより数段高性能な人形だ。
これを代表で先輩が1名、模範として生き返らせて見せることになっていた。
そして私は今朝、そのじゃんけんに負けた!
でも大丈夫。
ハナコを10回以上生き返らせた実績が私にはある!
サトルだって、救命してみせる!生きて還る!
「わかりますかー!大丈夫ですかー!」
両肩を叩く。ブラジルのみなさーん!くらい叫ぶ。
素早く胸郭の動きを確認しつつ、同時に甲状軟骨から胸鎖乳突筋に指を滑らせ、脈を確認。無し!
「胸骨圧迫します。」
そこまでの流れはね、もうどこに出しても恥ずかしくない。
1年生の羨望の眼差しも感じた。
イケル!!
そう思った瞬間、静寂を破ってサトルが口火を切った。
「早いです、リズムを遅くしてください」
え、サトルって結構しゃべるの?
って思ったのもつかの間。
「弱いです」
「遅いです」
「早いです」
「強いです」
もうサトルの注文がすごい。
宮沢賢治でも、ちょっと控えるくらいの注文数。
なんなの?神経質なの。
とんだところに胸骨警察がいた。
もうね、萎縮するっつーの。
そんな言われたら、萎縮する。
リズムを調整しなおそうとしてると
「胸骨圧迫を続けてください」
「胸骨圧迫を続けてください」
って、もう、今ね、やるとこだった。
つーかやってたし。
気を取り直して換気でもするか。
とバックバルブマスクを取ろうとすると、ピン子が「それなかったらどうする」って試すように言ってきた。
それすなわち、人工呼吸。
今は感染などの観点や蘇生率からもほぼ胸骨圧迫が主体で、道端で人工呼吸するのはドラマや漫画くらいだ。
でもこのサトルの神経質さを鑑みると、完全に30:2の胸骨圧迫と換気モードでプログラミングされてるって私は気づいてるぜ。
サトルを生き返らせたい。
またあの、サトルの優しい笑顔が見たい。
生き返って!サトル!
私は1年生に見守られながら、ついに人口呼吸へ。
と思ったけど躊躇するわー。
サトルの顔面が、思った以上にリアルだわー。濃いわー。人間模様が濃い。
つーか、私、35歳だけど、キスとかしたことないんですけどー。
どうやんの。キスって。
まじミツバチくらいのキッスしかできる自信ない。
つーか、この乙女を前にして気道確保してるせいか、サトルの口が、がっつり開いてる。
喉の奥のなんらかのデンジャラスゾーンまで見えてる。
こわい。
かの有名な白雪姫でも、せいぜい見てたの7人だっつーのに、なんで私が80人くらいに見守られて35歳の初キッスをゴム人形に捧げないといけないのって疑問もある。
でも変にもたもたすると、余計おかしいし。
すげぇサトルが急かしてくるし。
35歳だし。
もうね、決死の覚悟でサトルの胸に飛び込んだ。
明日、サトルの腕の中で目覚めてもいい。
そのくらいの覚悟で。
サトルー!
初めてのキスは、ゴムの味がしました。
多少むせつつ。
つーか、間違って目つむっちゃったし、全然息吹き込めなかった。
完全にただのキスみたいになったけど。
でも恥ずかしさも限界で、「今の無し無し」って感じで胸骨圧迫を赤面しながら再開。
こんだけしても、乙女の純情捧げてもサトルが全然生きかえらねぇ。
いや、まじで。おめぇ。
キリストだって自力で生き返ったっつーのに。
その間も30:2で人工呼吸をしてるので、おのずと大人の階段のぼるわ。
最初が嘘のように35歳の熟女感をもって息を吹き込む。
なのに、うんともすんとも。
うん・・。
そうね・・。
あの、サトルさん・・。
つーか、1年生も薄々は感じてると思うけど、最初の人工呼吸以降、サトルがうんともすんとも言わないわけ。
これは全員が感じてて、口をつぐんでたわけだけど、
なんかもう、私のキスによってむしろ死んだみたくなってるわけ。
あーん泣きたい。
サトルー。目を開けてよー。
腕がパンパンですー。
すると救世主ピン子が1年生たちに「あんたち、今まで習ってきたのに、この状況をぼーっと見てるだけなの」つった。
すると我に返った1年生たちが、一斉に集まってきた。
まさにあの日の描いた金八のように。
「加藤さん胸骨圧迫替わります!」
「AEDつけます!」
「バックバルブマスク持って来ました!」
「みんな・・・!」
多少ピン子が怖かったって感もあるけど、私たちは必死にサトルに尽くした。
そしてサトルの心拍が無事再開した時、思わず拍手が上がった。
みんなが一瞬、わぁっと手を放した時、ピン子の目が光り、私は思い出した。
「そこで終わりでいいの?」
一瞬きょとんとした1年生の中で、うちの班の子が「社会復帰・・」とつぶやき、
私は「ストレッチャー・・ストレッチャー持ってきて!」と叫けぶ。
そしてサトルをみんなでストレッチャーに乗せた。
私はもう、江口だったらこんくらい言うでしょくらいのキメ顔で、
「じゃあ病棟に運ぶよ!私たちの仕事はこっからだよ!」
つった。
自分の完璧な江口ぶりに多少泣きそうになりながら、誕生日の地獄の研修は終わった。
帰りにサトルを片付けてると、ピン子が「まあ盛り上がったんじゃない?」と笑ってくれた。
研修後にとったアンケートには何故か「感動的だった」とか「最後サトルが生き返った時泣けた」とか、いつもの研修とはだいぶ毛色の違う感想が目立ち研修委員を困惑させた。
帰りの電車で、「神様って本当に見てくれてるのかね」って友達にメールすると、
「大丈夫、見てる見てる。今年のクリスマスはきっといい人があらわれるよ!」つって。そんな感じで今年の誕生日は終わったわけです、ねー聞いてるキリスト?
で、12月です。
サトルはやはり故障してたようで、12月の病院の大掃除にて、廃棄となることになった。
なんとなく切なくて、軽い気持ちで「引き取りたいくらいですー」と言ったら、本当に引き取らされ、いま家にサトルがいる。
そして本日クリスマスを迎えてる。
王子さまは来なかったけど、なんだかんだで、サトルが来た。
あれだね、これ神様はあれだね。
見てるには見てるけど、見てるだけだね。
ああ、サトル…邪魔だなあ。
あと、夜とか超こえーし。
ねえ神様、いつか、健やかなるときも病める時もと誓える人が現れる日は来るのかなあ。
病める時を担うスキルだけ尋常じゃないくらい上がってるんだけどなあ。
孔徳秋水氏のツィッターから、メモ代わりに転載。
我々は樋口英明前福井地裁裁判長の名を忘れないようにしよう。名前どおり英明な人であり、それ以上に勇気のある人だった。官僚社会では滅多に見られないことだ。
と同時に、このような人が官僚社会でどんな仕打ちを受け、彼の後任者がいかに企業の飼い犬であったかも忘れまい。
(以下引用)赤字部分は夢人による強調。
>その際、〈人の生存そのものに関わる権利と、電気代の高い低いの問題を並べて論じるべきではない〉〈豊かな国土とそこに国民が生活していることが国富であり、これを取り戻せなくなることが国富の喪失だ〉と、人格権を尊重し、住民の思いに寄り添った判決文を読み上げた。
[12/25 23:10] >今回、裁判長を務めたのは福井地裁の樋口英明氏(62歳)。大飯原発3、4号機の運転差し止め訴訟も担当し、昨年5月には、福島第一原発事故後初めて、原発の運転を認めない判決を下し、注目を浴びた。
[12/25 23:08] 再稼働寸前の原発を差し止める決定が下った。しかし、歴史的な決断をした裁判官は、その席を追われることに。http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/43092⇒名裁判官は家裁に左遷。後釜は原発企業に天下り…財閥の犬しか出世できぬ日本…
パンデミック(英語: pandemic、世界流行[1])とは、ある感染症(特に伝染病)が、顕著な感染や死亡被害が著しい事態を想定した世界的な感染の流行を表す用語である[2][3][4]。ただし英語のpandemicの意味は、「流行」という現象と「流行病」という病気との双方である[5]。前者は不可算名詞で、後者は可算名詞である。
語源はギリシア語のπανδημία(pandemia)で、παν(pan, 全て)+ δήμος(demos, 人々)を意味する[6]。
このように調べ、「これじゃあ、雲散霧消より悪いイメージではないか」と反省し、では「パンスペルミア」でどうだ、と考える。
パンスペルミア説(パンスペルミアせつ、panspermia)は、生命の起源に関する仮説のひとつで、生命は宇宙に広く多く存在しており、地球の生命の起源は地球ではなく、他の天体で発生した微生物の芽胞が地球に到達したものであるという説。
これも、「生命伝播」「生命渡来」であり、あまりふさわしくない。しかたがないので「生命爆発」という日本語で検索する。
どうも無さそうだが、こういうのがある。
カンブリア爆発(カンブリアばくはつ、Cambrian Explosion)とは、古生代カンブリア紀、およそ5億4200万年前から5億3000万年前の間に突如として今日見られる動物の「門(ボディプラン、生物の体制)」が出そろった現象である。カンブリア大爆発と呼ばれる事もある[1]。
これを私は「生命爆発」と覚えていたらしい。「カンブリア」などという横文字が覚えにくかったためだろう。記憶の自己変造だ。
何はともあれ、我々の知識や記憶というものがいかにいい加減なものか、ということは上に書いたような実験で私自身再確認したわけだ。
人間の知の世界がいかにブラックボックスに満ちているかが分かろうというものだ。
余談だが、私が「法度」の漢字を思い出せずに四苦八苦したというのは、日本人(漢字文化圏の人間)の言葉の記憶は「視覚イメージ」で覚えられている、ということだ。漢字の形態(ゲシュタルトと言ったか)で漢字を覚えているのである。これが西洋人なら、音で覚えているだろうから、「ハット」を思い出せばそれで終わりだ。簡単だが、西洋のほうが、だからいい、とはならないだろう。思い出すのは簡単な代わりに、いざ文章をつづろうとなると、その正しいつづりはなかなか簡単には出て来ないのではないか。
ついでに、まったく無関係な話だが、花婿を英語で「bridegroom」という。そこで、「bridegroom and gloomy bride」という英語タイトルを思いついたのでメモしておく。英語人種には「l 」と「r」は別の音だろうから、「ブライドグルーム」と聞いて「gloomy(憂鬱な)」を想起する人はいないのかも知れないが、私は「ブライドグルーム」という英語を聞く(読む)と、いつも結婚前に既に結婚を後悔している花婿を連想しておかしくなるのである。なお、「groom」は「世話する」意味であり、花婿は結婚では脇役であることが当然視されている。(笑)
これも余談の余談だが、ゆうきまさみの漫画「じゃじゃ馬☆グルーミングup!」という題名は、シェイクスピアの「じゃじゃ馬馴らし」の題名を下敷きにしていると思うが、競争馬飼養牧場の話である上に、じゃじゃ馬娘を馴らす話でもあるから、ぴったりである。なお、この漫画は、まさに漫画史上に残ると言って過言でない名作である。


引用元: ・15歳女子高生が「天皇誕生日おめでと あんまり絡みないけど」とツイートし話題に その2
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まず初めに、言い訳がましくて恐縮だが、この記事で "" で閉じて言う "フェミニスト" とは、一部の極論ばかりがなり立てるモンスタークレーマーのような、ないしは女性を人質に取った単なる差別主義者かのような連中を指している。 「自分はそうではない」 と言う方には予めお詫びしておく。 そういう方を含まぬための "" だとご理解いただきたい。
さて、三重県志摩市の海女をモチーフにした萌えキャラ『碧志摩メグ』 が 「海女を侮辱している」 「女性蔑視だ」 と批判を受けている件をはじめ、その他の女性の性が絡む案件で "フェミニスト" を自称する人々の声が悪目立ちしている。 先日アップした 「AV・風俗業界は女性を人身取引している」 という、業界人ならば大なり小なりモヤモヤを感じるであろう疑わしい主張もそのひとつに数えて良いだろう。
◇参考記事
『AVや風俗業界で人身売買はあるのか?告発系記事への反論【前編】』
http://n-knuckles.com/case/doubt/news002044.html
『AVや風俗業界で人身売買はあるのか?告発系記事への反論【後編】』
http://n-knuckles.com/case/doubt/news002048.html
このほか、「日本は児童ポルノ大国だ! 子供が秋葉原で売春させられている!」 と、どう見ても実年齢が20才を越えていそうなメイドさんのビラ配り姿を海外発信している連中までいる始末である。碧志摩メグ騒動に関して言うと、こうした "フェミニスト" の方々によれば、女性の胸や脚をことさら主張する絵はけしからんのだそうで、女性に対する侮辱なのだそうだ。
しかしちょっと待って欲しい。 萌え絵の件はあくまで二次元創作物の話なのだが "フェミニスト" の皆様が意図的に二次元も三次元もゴッチャにするので、あえてこう言わせていただく。
「それは世界規模で女性の性を解放すべしという運動が根付き、成果を挙げた結果なのではないですか」 と。
女性を窮屈な環境に追い込み、動物として当然のセックスアピールやオシャレの類を破廉恥だ、下品だと禁じ、さらには男性と同等の社会へ参加する権利すら与えられないという状況に異を唱え、文字通り命がけで戦って来た先人のお陰で、今の 「女性が女性らしさを自由に選択し、アピールできる世の中」 や 「女性が男性と同等の権利を持てる世の中」 になったのではないのか。
そして、本来ならば "フェミニスト" を称する人々は、そうした先人の後輩にあたるはずで、そのような立場の人間が女性の性的魅力や多種多様な生き方を封じ込める世論を作ろうとしているとは、まったくもって意味がわからない。 「あなた方の正体は何なのだ」 という話である。
どうしてこのようなネジレが生じているのかというと、雑な言い方で申し訳ないが、"フェミニスト" を名乗る人々の目的設定や採るべき手段が狂っているからだとしか言いようが無く、かの人々は過去の女性解放運動などの系譜にはいないのではないかという疑念すら生じる。 いったい "フェミニスト" は何処から発生した人々なのだろうか。
遠回りになるが、"フェミニスト" のマズイ手法を説明するために、まずはエロと記号(記号化) の関係性から解説する。
男女の区別なく、そのひとがいったい何にエロを感じるかというのは、先天的な本能の部分以外に、後天的な刷り込みも大きい。 私は男なので男性目線で説明するが、日常的な自慰行為の最中や、何気なくTVや雑誌などを見ている時に、突然 「これはエロなのではないか」 と気付く、もしくは刷り込まれる場合があるのだ。 ひとによっては女子スポーツの中継かもしれないし、また別のひとによってはTVドラマの中でストッキングを履いた女優が脚に何かこぼした瞬間などかもしれない。 果てにはウルトラ兄弟が磔になっている場面かもしれないし、海外のセックスアンドバイオレンスな映画の中で、女性がバイクや車の上で強姦されるシーンを見て "女性の裸と乗り物" という組み合わせに気付いてしまったというケースも考えられるだろう。 ちなみにコレらはすべて私の実体験なので異論は受け付けない。
こうして 「これはエロだ」 という刷り込みが起きると、今度はそれらが記号化されてしまい、そのひとは女性が日常的に使うありふれた道具や、洋服などを見るたびに、パブロフの犬かのように性衝動を感じるようになる。 上で挙げた私の実例で言うならば、それぞれがフェチのジャンルとして定着しているものだし、以前何かの記事に書いた 「セーラー服が川を流れて来るだけのAV」 や 「女物の衣類を焚き火にくべて燃やすだけの動画」 も、それを見て喜ぶひとにとっては、どこかで何らかの記号化がされた立派なエロ描写なのだ。
エロの記号化がこのような形で成される以上、「脚を出しているから」 や 「胸を強調しているから」 といった理屈で表現を潰して回っては、いずれ女性は全身を覆う防護服を着て生活せねばならなくなる。 ところが、その防護服に対しても欲情ポイント(記号) を見付け出すのが変態紳士というものだ。 そうした一部の変態紳士の気付きに同調する人間が大勢現れれば、それがエロの主流となり、女性は防護服すらエロの対象として 「性的に搾取(失笑)」 される事になってしまう。
ようは、表現や言葉をいくら狩ったところで、世に女性がいる限り男のエロ目線は無くならないのだ。 したがって "フェミニスト" の理想を実現するには、女性もしくは男性という性別を持った生物を根絶やしにするよりないだろう。 その行き着く先は人類の滅亡である。 "フェミニスト" とは、人類の滅亡を企む悪の組織だったのだ。
上の結論はからかい半分の嫌味だが、現実問題としてこの世に男と女がいるのだから、異性間(または同性間) で性的なやり取りが行われる事を否定する訳にはいかない。 なぜならそれこそがあらゆる生物が生きている意味なのだから、それを否定するならば死に絶えるしかないのだ。
かと言って、性被害に遭う人間(男女の区別なく) を放置して良いかと言うとそんな事は有り得ない。 男も女も望まぬ性行為や虐待など人生の中で味わう必要などなく、そうした危険を回避できるのが当たり前の社会である。
ではそうした危険を回避する、犠牲者・被害者を減らすにはどうすれば良いかと言えば、マンガやアニメやドラマといった創作物(いわばエロの記号) を叩くのではなく、理性を失って他者に危害を加えたその事実こそを非難し、それ相応の罰を与え、「こういう事をしたらこうなります」 と、罪と罰の存在を世間に伝え広めるしかない。
こう言うと "フェミニスト" の方々は 「アニメやマンガといったオタクコンテンツや児童ポルノが性犯罪を助長しているのだ! 世界では日本は児童ポルノ大国と呼ばれていて~~」 と主張するだろうが、それは大嘘である。 未だに創作物と犯罪発生の間の因果関係は解明されていない。 むしろ性的コンテンツで溢れていると言われている日本など、世界的に見てみれば性犯罪の発生件数が少ない方だ。 ならば、日本よりも性犯罪が多く起こる国々の方が日本を見習い、また宗教の問題があるのであれば、日本人の宗教観を評価すべきだろう。 それを、なぜより酷い方に合わせようとするのか意味が解らない。
こんな言い方をすると批判があるのは承知の上で述べるが、男に限って言えば性欲を一時的に0にし、性犯罪を起こす気持ちを無くさせる確実な方法がある。 一部の異常者には通用しない可能性もあるが、おそらく9割以上の男性の衝動はそれで押さえ込める。 それが何かと言えば射精である。 自慰行為や風俗店など方法は何でも良いので、とにかく1回、1回でダメなら2~3回射精させてしまえば、しばらくは使い物にならない。 射精直後に女を犯したいと考える異常者がいたとしたら、AV男優として名を挙げられる可能性があるので、ぜひ適当なAVメーカーに履歴書を送ってみて欲しい。 今のところ、最も確実な性犯罪防止策はコレではないだろうか。 という訳で、結局はエロコンテンツに溢れ、気軽に射精に至れる日本の姿こそが正しいという結論になる。
このようにエロコンテンツの数や内容が性犯罪を助長するという主張には何の根拠もないどころか、現時点ではデタラメなのだから、「性被害者を減らすには」 という部分だけを考えれば良い。 それを解決するには、強い理性を持たせるための教育や、必要であれば罰則の強化、表面化し辛い性犯罪を可視化するための相談窓口などの整備など、やらねばならない事はいくらでもあるだろう。
エロコンテンツへの攻撃など、攻撃対象の設定としてそもそもが見当違いなのだから、問題解決に向かないばかりか、人的リソースをそちらに割かれては、問題の本丸を攻める手が足りなくなってしまう。 "フェミニスト" の主張はまったくの逆効果であり、むしろより女性を窮地に追い込むものなのだ。
さらに言うならば、エロマンガやアニメの類を性犯罪を助長する記号だと認識するのであれば、それ以上に危険な記号がある。 どちらかと言えばそちらを先に糾弾し、世の中から無くさねばならない。 それが何かと言うならば、より大勢の人間がエロ記号として認識しているであろう、女性の胸の膨らみや太ももなどだ。
"フェミニスト" の記号潰しに賛同するのであれば、オタクコンテンツよりよっぽど直接的で犯罪発生に近そうな、ミニスカート・下着・水着・ストッキング・タイツ・生足......といった物を根絶やしにした方がいい。 果たして世の女性はそんな社会を求めているのだろうか。
"フェミニスト" は自分の気に入らない、もしくは嫌悪感を抱く表現や創作物に対し、異常なまでの攻撃性を発揮する。 ではそれが行き着く先に何があるか考えてみよう。
まず、オタクコンテンツが "フェミニスト" の主張により根絶やしにされたとしよう。 そうなったら "フェミニスト" は口を閉じておとなしくしてくれるだろうか。 おそらくそうではない。 そうなったらそうなったで、次の攻撃対象を見付け出し、同じような論調で 「女性を~ 女性が~ 女性に~」 と騒ぎ立て、際限なく自分の気に入らない物を潰して回るに違いない。 これは妄想でも何でもなく、何の根拠もないオタク叩きをここまで熱心にやれるのだから、矛の向かう先を変えて同じ事を繰り返すなど誰にでも予測できる。 なんせデマを海外に発信して、海外からの圧力をかけて貰おうと画策するような輩なのだから、何をしたって不思議などない。
また運動を続ける中で "フェミニスト" 同士の内ゲバが起き、「あいつらは本物の "フェミニスト" ではない」 と偽物というレッテルの貼り合いに陥る事も予想される。 そして 「我々が守る女性の定義とは」 と、自分勝手に女性を定義付け、そこから漏れた女性は女性とは看做さず、単に敵として認識し、殲滅を目指して運動を続けるようになる。 これでは 「まだまだ敵がいるぞー」 と攻撃対象を探し回った挙句、自分の尻尾にかじり付き、遂には自分ごとこの世から消えてしまうお伽話の中のマヌケな蛇のようなものだ。
一方的に女性の敵を定義付け、それを根絶やしにするという手法は、このような危険をはらんでおり、それは世の中の女性のためになるどころか、女性達が自分の意志で多種多様な生き方を選べるという "人権" に反することなのだ。
また "フェミニスト" の言い様や運動が度を越せば、それに反対する男性の声に女性からも支持が集まり、最悪の場合は "フェミニスト" の首を締める新たな法規制が生まれる可能性すらある。 "フェミニスト" の言動が男性の人権に抵触するレベルまで達せば、単に人権侵害として処理されるのだから、それは何ら不思議なことではない。
いい加減に "フェミニスト" は自分たちが女性の代表面するのを止めた方がいい。 それこそ世界中の女性のために。
ではなるべく多くの人間(繰り返すが男女の区別などなく) が危険に晒されることなく、性犯罪の被害者になることもなく、安心して生きられる世の中にするにはどうすべきか。
何より経済の安定という点も挙げられるが、性に関するテーマに限って言うならば、様々な価値観があふれ返ったカオスな社会でも、最低限守らねばならない規律があり、それを元に相互に信頼し合って生活できるようにすることであろう。 そのためには良心や理性を育む教育を行い、そこから溢れるような者に対しては、国が厳罰を以って対処するという姿勢を見せ、ある意味で脅かしをブレーキにするよりない。
さらにそれでもダメな少数の人間に対しては、再犯の可能性がないと判断できるまで檻の中で生活して貰うよりないだろう。 この中で、現在の日本に致命的に足りないのは教育の部分である。 それもこれも、子供達が自分で危険を回避できるようにと一歩踏み込んだ性教育を施そうとすると、それこそ子供や女性を盾にした団体様がヒステリックに騒ぎ出すからなのだが。
また何にせよ、男女間で対等な形で対話をし、議論をし、細かい問題点をひとつずつ解決して行くという地道な行動が、何を差し置いてもいの一番に必要である。 これも0か100かの極論が大好きな "フェミニスト" が苦手とする部分だ。
では最後に、あえて冒頭の 『碧志摩メグ』 の騒動に戻ろう。 現代ではウエットスーツを着込む地域もあるので、あくまで 「昔の」 という注釈が必要だが、海女の胸や脚といった女性の性的な記号を露わにして、または水に濡れて乳房がクッキリと見えるような状態(もしくは上半身裸)になってまで海と戦い糧を得るという、淫靡さと勇ましさの同居した姿は、本来ならば "フェミニスト" が女性の選択肢のひとつであると保護して然るべき対象のように思う。
ところが 『碧志摩メグ』 の騒動では、絵柄に不快感を覚えるといった百歩譲って理解できる指摘以外に、「海女を性的に描くな」 といった論調を選んでしまった "フェミニスト" が少なからずいた。 ついでに言えば 「児童ポルノが!」 と一言でも発した者など論外である。
海女がどういう歴史を辿って来た存在なのか、どういう服装で、どういう手法で海と戦って来たのか、それを全て受け入れてから物を言うべきなのに、上っ面を舐めただけで 「児童ポルノが! 女性の性的搾取が!」 と話をすり替えてしまう。 それは女性の生き方のひとつを隠し、女性の自由を狭めているだけなのではないのだろうか。 何故ならば "フェミニスト" の主張は暗に 「女性は性的な記号(胸や脚など) を隠して生きねばならない」 と言っているも同然だからだ。 それでは安倍政権の中枢にいる 「女への性教育など結婚してからでいい」 と言ってのける女性政治家達と同じ主張ではないか。
またもう一捻りして考えるならば 「女性のこの部分は性的です」 と "フェミニスト" の側から言っている訳で、ではミニスカートなど女性の性的な部分をアピールする洋服を好んで着る女性に対して、"フェミニスト" は何と言うのだろうか。 萌え絵に対して向けた言葉をそのまま向けるならば 「そんな服は着るな=着る方が悪い」 が正しい。 むしろそれ以外の言い方をするならダブルスタンダードになる。 これは果たして "フェミニスト" が口にすべき主張なのだろうか。
考えれば考えるほど、いったい何を目的としている人々なのか意味が解らなくなるばかりだが、"フェミニスト" を名乗るかの人々が何処から来て何を目指しているのか、ぜひ本音を聞いてみたいところだ。 実は女性の権利や保護などどうでもよく、もっと別の価値観を隠しているのではあるまいか。
Written by 荒井禎雄
Photo by (C)MARIBON http://ama-megu.com/より
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美濃加茂市の観光ポスターが「性的だ!」と非難を受けた騒動で、美濃加茂市の観光協会は駅前など特に人目に付く場所からポスターを撤去した。この話題は地上波のニュース番組などにも取り上げられ、良くも悪くも美濃加茂市という無名な地方都市の名前があちこちに露出する事となった。
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