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邪悪な小人

ネットゲリラ氏命名の(か?)「コビト肺炎」だが、人間に悪さをする邪悪な小人と言うと、村上春樹の「踊る小人」を思い出す。私は、この作品が英語翻訳されたものを先に読んでおり、私の語学力不足のために意味不明のところが逆に作品の禍々しさやファンタジックさを倍増させたせいか、後で読んだ日本語原作より英語訳のほうがいいのではないか、と思っている。村上春樹の世界的人気は「翻訳しやすい」、あるいは翻訳されても価値がほとんど落ちないところにあるのではないか。
別ブログに載せた、私が訳した「Dancing dwarf」の一部で、ファンタジー性とユーモアが目立つところを載せておく。私はこの「製象工場」の記述が好きなのである。なお、原作との対照はまったくしていないので、原作通りではない。

(以下自己引用)中途半端だが、これ以上引用するとなぜか文字化けするので、これだけにする。


私は一人で目覚めた。俯けにベッドに寝ていて、体は汗で濡れていた。窓の外に鳥がいた。いつもそこに見える鳥とは違うように感じられた。
私は注意深く顔を洗い、ひげを剃り、パンをトースターに入れ、コーヒーのための湯を沸かした。猫に餌をやり、水を換え、ネクタイを締め、靴紐を結んだ。そして製象工場(「製造」ではない。)へのバスに乗った。
言うまでもなく、象を作るのは簡単ではない。第一に、象は大きいし、複雑だ。ヘアピンや色鉛筆を作るのとはわけがちがう。工場の敷地は巨大で、幾つかの建物から工場はできている。それぞれの建物もまた大きく、それぞれのセクションは色分けされている。その月の私は耳セクションに配置されていたので、私は天井と柱が黄色い建物で働いていた。私のヘルメットとズボンも同様に黄色だった。そこで私がやることは耳を作ることだけだった。ひと月前は私は緑色の建物で働き、緑のヘルメットをかぶり緑のズボンをはいて頭を作っていた。私たちは月ごとにセクションから別のセクションにジプシーのように移動していた。それが会社の方針だった。そうすることで、私たちは誰でも象がどんな風に見えるのか完璧に形作ることができたわけだ。耳だけとか、あるいは足の爪だけとかを一生作ることは誰にも許されていなかった。管理者たちは我々の動きをコントロールするチャートを示し、我々はそのチャートに従った。

象の頭を作るのは非常に報われる仕事だった。その細部を作るには細心の注意が必要だったので、一日の終わりにはあまりに疲れているため誰とも話す気力など残らなかった。そのセクションで働いた一月後には私は体重を6ポンド減らしていたが、非常な達成感が味わえた。それに比べたら、耳を作るのはそよ風のようなものである。ただ、この大きくて平らで薄いものに皺を作り、それで終わりだ。我々は耳セクションで働くことを「耳休みを取る」と言っていた。ひと月の耳休みのあと、私は鼻セクションに行くが、そこは再び、要求されることの多いセクションだった。鼻は柔軟でなければならないし、その鼻孔は鼻の長さの限り通っていなければならない。さもなければ、完成した象は暴れまくるだろう。それが、鼻を作る作業は最初から最後まで神経をすり減らす作業であるゆえんだ。



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仙人
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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