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「推理小説」としての「湖中の女」

ハードボイルド小説を推理小説の範疇に入れていいのかどうか分からないが、今では「探偵小説」(このほうが、まさにハードボイルド小説にふさわしい。)という名称は廃れているので、一応推理小説としておく。もちろん、だいたいは「謎」の要素はあるからだ。
しかし、チャンドラーの「湖中の女」は、推理小説としてはどうなのかなあ、という気がする。そもそも、題名(原題)が「The lady in the lake」なのだから、話の前半(まだ第5章までしか読んでいないが)の「謎」である、お金持ちの夫人の失踪の謎は、彼女が「湖の中の死体」となって解決されるのではないか。何しろ「in the lake」なのだから、このlady(レディと呼べる女ではなく、淫乱で万引き常習犯で無軌道な女だが)は、湖中の死体になっているしかない。on the lakeなら、湖の傍(onは「上」ではなく、接触を示す。「上」でも接触状態としての「上」である。)ということも考えられるだろうが、わざわざ「in」としているのだから、水中だろう。
つまり、推理小説としては、この題名はダメダメだ、と言えるかと思う。まあ、死体のありかではなく、死体になった理由が問題ということだろう。そうなると、私の推理は、湖畔のロッジの管理人の、同じく失踪した女房が(殺人犯として)一番怪しいと思う。というのは、管理人の退役軍人は色キチガイの富豪夫人と寝たことで、その女房と喧嘩し、女房は失踪したからだ。(経済関係では、この富豪夫人を殺して利益を得る者は、今のところ出てきていない。まあ、せいぜい、殺害のついでに身近な品物を盗む程度だろう。)つまり、怨恨による殺人事件である。この失踪した管理人夫人が「lady in the lake」であるというのは無理がありそうだ。さすがに、山小屋の管理人夫人をレディとは呼ばないだろう。大富豪夫人も資質はレディではないが、階級は上流階級だ。
ついでだが、富豪夫人の失踪の数日後に夫人が打ったとされる電報は、山小屋管理人夫人がメキシコだかどこかから打ったわけである。
ちなみに、以上の推理は、全41章の5章までを読んだ段階でのものである。もちろん、解説などは読んでいない。まあ、ハードボイルド小説は「冒険小説」であって、謎解きなど添え物にすぎない、と考えるのが正しいかと思うので、上に書いた「推理」はただの思考娯楽としての推理だ。

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