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ベーシックインカムという奇術

昔書いた記事で、ブログに既に載せたかもしれないが、その記憶が無いので、ここに載せておく。と言うのは、あの売国奴の竹中平蔵がベーシックインカムを提言しているからだ。
そこで、このアイデアの明と暗の両方をここで考察してみようということである。まあ、竹中が言うのだから、ロクな話にならないのは確実だが、本来のベーシックインカム自体には良い面もあるにはあるのである。

(以下引用)


ベーシック・インカムという奇術


 


 ベーシック・インカムという制度は、ちょっと聞くと、実に馬鹿馬鹿しく聞こえる制度である。なにしろ、政府が無条件に国民全体に金を渡すという制度なのだから。その金の使途に制限も条件もない。年齢も不問で渡すのである。ソンナ馬鹿な!


 いや、馬鹿な話ではないのだ。しかし、相当に奇抜な話ではある。だから、題名を「ベーシック・インカムという奇術」としたのである。それが無意味な空論か、それとも、現在の経済を根本から変える天才的なアイデアかは、残りを読んでから判断してもらおう。


 さて、具体的にどのような形態の制度かというと、まあ、いろいろな形態があるとは思うが、たとえば国民新党のホームページで提唱されていたモデルは(うろ覚えだが)だいたい次のようなものだ。


 


1) 全国民に、一人当たり、月5万円を支給する。(4人家族ならば20万円だ)


2) 所得税は一律30%とする。ただし、これは通常の勤労にかかる所得税だ。


3) 政府から金を一律に支給する代わり、あらゆる保険制度年金制度等は廃止する。


 


さて、これは国民にとって得な制度なのかどうなのか。これが革命的な制度であることは確かである。それに、これで政府は経済的に成り立つのかどうか。


 たとえば、モデル的に次の二つの例を考えてみよう。①は貧乏人の家族、②は富裕なカップルだ。


 


      4人家族で、年収200万円の場合


      2人家族で年収1000万円の場合


 


 計算はこうなる。①の年収は(5×4×12+200-200×0.3)=380万円と、はるかにアップする。


 ②の場合、年収は(5×2×12+1000-1000×0.3)=820万円となり、もちろん、稼いだ金額よりはダウンするが、その所得820万円は、現在の税制だと所得の33%を取られ、15万円程度が控除されるのだから、現在の税制での所得685万円を上回るのである。                                                 


 もちろん、現在の税制なら、この他に年金やら健康保険やらが徴収されるので、可処分所得はもっと低くなる。


 国民の可処分所得が低くなるなら、政府の取り分が低くなって、様々な政府業務ができなくなるのではないか、と思う人もいるだろう。では、政府のしなければならない業務とは何か。


 ベーシック・インカム制度という単純化された制度により、税金や保険や年金に関する業務は大きく削減されるのである。おそらく医療保険も無くなるだろう。この点での不安を抱く人も多いだろうが、何を政府の仕事として残すかは、また別の問題だ。


 ある意味では、近代以前の政府と国民の状態に戻ると言ってよい。政府の仕事を極端に減らし、国民は自立的に自分の生活設計をしていくのである。政府の仕事を減らすことで、税金の中で闇に消えていた部分が不要になるのだ。公務員中心社会からの脱却である。


 問題は、国民に支給する金と、税金として徴収する金とのバランスがうまくいくかどうかだが、そのあたりは計算の得意な官僚たちに計算してもらおう。


 このベーシック・インカム制度の長所は、どのような状況の人間でも、生存に必要な金額だけは常に保証されるということである。


 ならば、短所はその裏返しで、遊んでいても月に5万円は支給されるのだから、働かないでいようという人間が出てくる可能性があることだろう。だが、月に5万円では、生存はできても遊興はできない。三年寝太郎のような人間でもないかぎり、月に5万円の収入で十分だという人間はおるまい。


 もう一つの問題は、確かに月に5万円で生存はできるだろうが、それは健康な人間の場合であり、病気や身体障害を抱えた人間はどうなるのか、という問題である。原則として、あらゆる保険や年金を廃止する代償としての支給金なのだから、生存するだけで人以上に金がかかる病人や老人をどうするのかという問題を考える必要がある。


 だが、これも、税金の一部を弱者保護と福祉に用いるという国民的合意があれば、問題ではなくなる。まあ、原則は原則で、人情や道義に合致すれば例外もあるということだ。


 以上がベーシック・インカムという制度だが、どうだろうか。これは子供だましの奇術なのか、それとも、この世に理想郷をもたらす革命的経済思想なのか。判断はこれを読んだ人に任せよう。


 


 


                   2009217

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