今回の19号台風水害なんだが、どこも「前科のある土地」なんですね。大雨の都度、水害が発生するとか、そこまで行かなくても数十年前に堤防が決壊した、とか。そういう土地は、そこで生計を営む農家以外の家は建てるべきではない。武蔵小杉もそれで、そもそも洪水があったら浸かる土地なんです。だから、近代に至っても住宅街は作られなかった。そんな土地に無秩序に高層住宅を乱立させたら、まぁ、こうなる事は明白です。自民党がCIAに乗っ取られて、歯止めが効かなくなった銭儲けで、今だけカネだけ自分だけ、タワマン売ったら、後はどうなろうが、知ったこっちゃないという新自由主義で、このザマだ。 |
佐野洋子という、イラストレーターで作家(だと思う)だった人の随筆集の或る一節だが、この部分だけでも見事な「ピエタ像(聖母子像)」になっていると思う。或る種の神々しい光をこの母娘の姿に私は感じる。私は読んだことがないが、佐野氏は「百万回生きた猫」というベストセラー童話の作者であり、この時には癌で余命一年か二年くらいだったのではないか。
(以下「役に立たない日々」から引用)
お昼すぎに母のところに行った。丸坊主に帽子をかぶって行った。母はぼーっと寝ていた。もう私かどうかわからないらしい。私も疲れていたので、母の寝床にもぐり込んだ。母は私の坊主頭をぐりぐりなでて「ここに男の子か女の子かわかんないのが居るわ」と云った。
「あんたの旦那は佐野利一でしょ」
「もうずっと、何にもしていない」何にもって何だ。もしかしていやらしい事なのか、でもぼーっとしている何だか透明になっちまった母さんはいやらしい事なんかいくら云ってもいやらしくないみたい。
私が大声で笑ったら、母さんも声を出して笑った。
「母さん、もてた?」
「まあ、まあでした」そうかね。
「私、美人?」
「あんたは、それが充分です」
又大声で笑ってしまった。
母さんも一緒に笑った。
突然、母がぼんやり云った。
「夏はね、発見されるのを待つだけなの」
私はしーんとしてしまった。
「母さん、私しゃ疲れてしまったよ。母さんも九十年生きたら疲れたよね。天国に行きたいね。一緒に行こうか。どこにあるんだろうね。天国は」
「あら、わりとそのへんにあるらしいわよ」