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養老孟司の「新時代の人生論」

私は養老孟司の言うことは、だいたい半分賛成、半分は「そうかなあ」という感じで読むことが多いのだが、まあ、マスコミに生きている範疇の人間ならどこかにポジショントークが入るのは当然で、いつでも真実(自分が真実だと思っていること)しか言わない人間はネットの無名人の中にしかいないだろう。そういう人間も有名になり、スポンサーがつくと御終いである。詐欺師の仲間入りだ。
養老孟司については、かなり「自分がいいたいことをズバズバ言う」人間ではあるから、その言う内容も耳を傾けていい部分はある。「環境問題」の中の「地球温暖化」や「脱炭素」が詐欺であることなど、頭のまともな人間なら誰でもすぐに分かるが、そういう部分は言わないわけだ。

(以下引用)




 
 
 
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養老孟司氏(C)日刊ゲンダイ© 日刊ゲンダイDIGITAL 養老孟司氏(C)日刊ゲンダイ

《今は人間関係ばかり。相手の顔色をうかがいすぎていないか》


解剖学者の養老孟司氏(84)氏は、新著「ヒトの壁」(新潮新書)でこう喝破する。


ベストセラー「バカの壁」で、話せばわかるなんて大嘘、耳を貸さない相手には通じないという壁の存在を示した。だからこそ、その壁を共通理解して、それを乗り越えようというメッセージでもあった。


刊行から約20年たった今、壁は取り除かれるどころか高くなり、ヒトそのものがヒトの障壁となって立ちはだかっているというのである。


■猫を見習え


ーー社会のレースからまだ降りることはできない。かといって、いびつな社会に無理に合わせようとすれば破綻するか、共倒れになってしまいそうです。先生はかつてお弟子さんに「塀の上を歩け」と仰っていたそうですが。


「誰でもそうしているのではないでしょうか。サラリーマンであれば、いわゆるプライベートと仕事。どっちかに落ちちゃうことのないよう、綱渡りしている。それを楽しめ、ってことですね。ただ、好きなことをしろといっても、今のヒトはそれで成功しなきゃならないと思ってしまう。評価とか成果を求める。でもヒトから認められるっていうのは頼りないもので、自分では左右できませんね。奥さんを1ミリ動かそうと思ったら、1メートル動いて努力しなければなりません。そんなの諦めて、ただやりたいことをして、楽しむことです。そうすると生きている苦労なんて、あんまりないでしょ。だから猫を見ろっていうんです」


ーー先生の、愛猫「まる」との暮らしは、多くの人の憧れだったと思います。


「何にも無理しない猫でしたからね。(まるが死んで)分かったのは心臓が悪かったということで、すこし動くと身体がきつかったのでしょう。人間も、その人に適した生き方というのがあるはずで。それをまた、成功と結び付けて考えるのではなく、たとえば天気の良い日であれば、暖かい縁側に出て昼寝するのがいいというような。そのくらい自由でいいんじゃないですか。しょうがないものは受け入れるしかない、折り合いをつけるしかない。あとはのんびり、好きなようにやればいいんですよ」


ーーこの脳化社会に毒されないようにする処方箋として、著書「遺言。」のなかでアートを挙げられています。意識(頭)ではなく、感覚(身体)を取り戻せということでしょうか。


「今の社会では、意識がわかっていないことは、ないものとして、無視しゼロにしてしまう。ゼロかイチか。でも、そんなわけないじゃないですか。僕の芸術についての結論は簡単ですよ、ゼロとイチとの間に存在しているということ。才能とか好き嫌いがありますけど、楽しんでできる人はやればいい。好きなことを楽しんでやっていると、気分が伝わり、周りに移って周りも楽しくなる。だから、ライブなんか人気なのでしょうね。爺さんが白髪頭を集めて深刻な話してたって、誰も傍に寄りません」

「生きていない」と見られている日本人

ーー生まれて、歳を取り、病気になって死ぬ。この限られた一生のうちヒトは何を残すべきなのでしょうか。


「若い頃、面白いと思ったことがありましてね。宗教は目的地を与えてくれますけれど、プロセスは教えてくれない。科学はプロセスはとても厳密に、論理的にきちんと解明していきますけど、それで行き先どうなるのというと、わからない。プロセスにこだわると行き先不明になっちゃうし、行き先を固定すると、どうやってそこに行ったらいいのかわからない。どっちにせよ、あらかじめ決めるっていうのは、よろしくないんです。繰り返しますが人生、プロセスが大切なんです」


ーー日本人は、海外から見ると「生きていないんじゃないか」との印象を持たれている。そう、ご著書にありました。


「そうですね。プロセスを楽しんでいないのが分かるからですよ。なんでそんなに渋い顔しているのって。我々は、自分自身がやっていることをよく考えていない、きちんと評価していないのは確かだと思います。ニュースも世の中も、反応しているだけで、よく見えていないというのが結構あるんです。たとえば環境問題。日本政府の反応が鈍いというのは世界の見るところですよ。国連の気候変動会議では、日本が温暖化対策に消極的だって、『化石賞』なる不名誉な賞を受賞しました。これは皮肉なんですよ。でも彼らは絶対に言いませんけど、この二十年、先進国でGDPが伸びていないのは日本だけなんですね。サラリーマンの実質賃金もひたすら低下している。経済界は、日本は後進国に落ちてきていると言うけど、先進国と同じ経済成長を果たしていたら、日本が出した炭酸ガスはどのくらいになるか。実質的に、日本は脱成長主義にシフトしているんです。このコストは普通のサラリーマンらがかぶっている。日本くらい環境問題に貢献している国はないと国連で首相は言うべきで、化石賞どころか見習えって威張ればいいし、サラリーマンは『お前ら、20年実質賃金の低下我慢できるか』って胸張っていいんです。会社に内部留保じゃなくて、もっと給料寄越せって言って良いんです。こんだけ働いているのにおかしいだろうって。普通に生きているだけだから騙される。足元から考え直せば、小学校の算数程度の理屈で分かることっていくらでもあるんです」


■こんな時代の希望とは


ーーそして、2022年の幕開けです。コロナ禍の終わりすら見えません。


「テレビでは、ウィルスの電子顕微鏡写真が映されることが多いですよね。アナウンサーと並んで映ったりしてますけど、ウィルスがあの大きさで見える倍率の顕微鏡でアナウンサーを見ると、私の概算では100万メートル、1000キロの桁に達する。ウィルスにとってのヒトは、ヒトにとっての地球以上になると思います。大きさからして、騙されていませんか。ヒトとウィルスの関係も不要不急で、いかに深いか。コロナもやがて薬剤が開発され、多くのヒトが免疫を持ち、一種の共生関係が生じて不要不急の安定状態に入ると思いますよ」


ーーああすればこうなるという、アタマの時代は終わり、予測不可能な、考え方の前提から変わるような時代への転換もあるとお考えですか?


「まあそれはないと思いますね。そういうことがあるとすれば、富士山噴火とか都市直下型地震といった天災のときでしょう。日本はとてもまとまりの良い国ですので。我々は自分自身がやっていることを評価していない、よく考えていないのは確かです。見方が変われば、世界は変わる。答えがすぐに見えなくても、問題を丸めないことです」


ーー少子高齢化とそれに伴う人口減が止まりません。


「たとえば認知症は研究が進み、予防的に飲ませる治療薬が認可されるかどうか話題になっています。脳は、神経細胞というのは年に1%ゴミが溜まるって若い頃、言われました。そうすると、100年経つと全部ゴミになってしまうんですけど、ゴミを溜まらないよう、片づけるプロセスを進めることができるようになっていくと思います。いつの世も希望はあります」


(聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ)





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