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<転載開始>
三原じゅん子厚生労働副大臣が誕生
三原じゅん子参議院議員が厚生労働副大臣に就任した。
これも衝撃的な人事だった。
なぜかといえば、三原氏は2012年に悪名高い自民党「生活保護に関するプロジェクトチーム」(座長:世耕弘成参議院議員)に参加し、多くの専門家や当事者の声を軽視する形で、生活保護基準10%削減と不正受給対策と称する審査の厳格化を遂行した人物だからだ。
専門家「生活保護に関するプロジェクトチーム」の決定は容認できない
例えば、岩田正美・生活保護基準部会長代理(当時)は昨年、生活保護基準引き下げの取り消しを求める訴訟で、異例の原告側証人として出廷し、以下のように政府批判をおこなっている。
岩田さんは11年から、生活保護の水準が適切かを検証する基準部会で部会長代理を務め、13年1月には部会として報告書をまとめた。
報告書は、保護基準額と一般低所得世帯の消費支出とのバランスを検証する内容で、物価との関係は一切考察していない。
10日に法廷で、基準部会はデフレ調整による大幅削減を容認していたかを問われ、岩田さんは「議論もしていないわけだから、容認などはしていない」と言い切り、「納得がいかない」と語った。
厚労省から後日、その財政削減効果の報告を受け、「非常に大きな額だったので正直驚いた」と振り返った。
その上で、デフレ調整をするなら基準部会で専門的な議論をすべきだったとの考えを示した。
出典:生活保護大幅下げ「認めてないのに」 怒る学者は法廷に 2019年10月15日 朝日新聞
つまり、長年、生活保護基準の調査研究に務めてきた専門家が「生活保護に関するプロジェクトチーム」の結論を容認できないものと断罪したのである。
政府側委員が政府決定を批判する異例の展開を見せている。
生活保護バッシングを政治利用した政治家たち
この生活保護基準引き下げの根拠が希薄なまま結論を出し、2012年の衆議院選挙で自民党は基準引き下げを公約にして政権を取り返した。
2012年、週刊誌の報道などをきっかけに巻き起こった生活保護バッシングはあまりにも有名な事件だった。
当時の様子は以下の記事を参照いただきたい。
安倍首相「生活保護バッシングをしたのは自民党ではないと思います」 いえいえ完全に自民党です
お笑い芸人の母が生活保護受給していることがメディアに取り上げられ、扶養できるだけの収入があるにもかかわらず、生活保護を受給し続けたことに批判が集中した。
しかし、いくら収入があろうとも親子関係が悪いなどを理由として、扶養義務は絶対的なものではない。
要するに、お金があっても親を絶対に扶養しなければならないと解することは生活保護法上できない。
本来は不正受給ではなかった問題がメディアも一緒になり、「不正受給疑惑」として取り上げて、生活保護受給世帯全般への差別や偏見が助長されていった。
このように、政治が扇動して生活保護は不正受給者が多い、という印象操作をおこない、市民感情の憎悪を利用して、デフレと物価の減少を理由に生活保護基準を引き下げた。
つまり、生活保護バッシングを扇動して、政策を捻じ曲げてしまった過去が「生活保護に関するプロジェクトチーム」にはある。
「生活保護に関するプロジェクトチーム」の暴力的な結論
当時の様子を世耕弘成 生活保護に関するプロジェクトチーム座長はブログで以下のように述べている。
まず、給付水準を10%程度は引き下げたい。この10年で一般勤労者の年収はデフレの影響もあって15%程度下がっている。和歌山の一般生活者の実感もそんなところだろう。しかし生活保護給付水準は0.7%しか引き下げられていない。また生活保護に頼らず頑張った場合に受け取れる最低賃金と比較しても生活保護の方が高くなっている。
現在の経済情勢に合わせて給付水準は引き下げられるべきであろう。
(世耕弘成・生活保護に関するプロジェクトチーム座長)
議論する以前に始めから結論ありきの方針が見て取れる。
政権奪取のために市民感情や憎悪、差別を利用し、その対象として生活保護制度を利用した、という非難は免れないだろう。
つまり、自分たちの都合の良いように制度政策を根拠が薄いまま、改変してしまう政治家が重役に就いていることに危機を感じる。
厚生労働副大臣は生活保護制度も所管する重職である。
もちろん、新型コロナウイルスの経済危機による生活困窮世帯の支援に取り組む最前線でもある。
「恥を知りなさい」とは言わないので、せめて三原じゅん子厚生労働副大臣には過去の言動、過ちを省みるところから始めていただきたい。
その上で、生活困窮に苦しむ市民に対し、生活保護制度の活用を積極的に促していただきたいし、二度と差別感情に基づいて政策を捻じ曲げたり、生活保護バッシングに加担しないでいただきたい。
※Yahoo!ニュースからの転載