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他人の思想を引用するのも自分の思想を示す行為であること

「内田樹の研究室」から転載。
私には、この論文が面白いというより、これを面白いと思った内田樹の思考が興味深い。
ここに書かれているのは、トランプのスタッフの些細な嘘(かどうかも実は不明だが)を取り上げて、トランプ自身が嘘つきであるとし、その嘘に騙されるな、と警告し、トランプ政権の命運は長くない、と予言する、あまりにも「針小棒大」なインチキ議論であり、それを面白いと思った内田氏は、そのどこを面白く思ったのか、何も書いていない。
その結果、内田ファンの読者の心に残るのは、「トランプ政権のスタッフは(常習的な)嘘つきだ」「トランプ自身も嘘つきだ」「やはりトランプは信頼できない」という、この論文の主張する内容だけ、となるだろう。
内田氏がこの論文を「面白い」と言っているのだから、この論文は読むに値する、信頼に値する論文だ、と思うだろう。
かりにそういう印象を読者の心に残すのが内田氏の意図なら、その動機は何なのか。
内田氏がトランプを、信頼すべきでない、と思うのなら、それを自分の言葉で語るべきであり、こうした「ステマ」は卑怯卑劣だ、と私には思える。



(以下引用)

2017.01.24

なぜトランプ政権のスタッフは嘘をつくのか?


というタイトルの記事が眼に止まったので、訳したみた。なかなか面白い。
Why Trump's staff is lying?
Bloomberg View 23 Jan 2017
by Taylor Cowen


発足したばかりのトランプ政権のもっとも際立った特徴の一つは嘘の政治的利用である。先週話題になったのは、ドナルド・トランプの報道担当官ショーン・スパイサーが「トランプは就任演説でアメリカ史上最多の聴衆を集めた」という明らかな虚偽を申し立てたことであった。この事件をてがかりに、リーダーが自分の部下に嘘を言わせるとき、彼は何をしようとしているのかについて考えてみたい。
誰の目にも明らかなことは、この指導者が大衆をミスリードしようとしており、彼の部下たちにも同じことをさせようとしているということである。多くの市民は事後にファクト・チェックなどしないので、大衆をミスリードすることは別に難しいことではない。
というのは、表面的な説明であって、裏にはもっと深い事情がひそんでいる。
自分の部下に虚偽を言わせることによって、指導者は自分の部下たちの自立のための足場を-それは彼らと大衆との関係の足場でもあるし、あるいはメディアや他の政権メンバーとの関係の足場でもある-切り崩すことができる。足場を失った人々はリーダーへの依存を強め、命令機構に対して単身では抵抗できなくなる。
嘘の連鎖を助長するというのは、指導者が自分の部下を信用しておらず、また将来的にも信用するつもりがない場合に用いる古典的な戦術である。
嘘をつかせるもう一つの理由は経済学者が「忠誠心テスト」と呼ぶものである。
もしあなたがある人があなたに対して真に忠誠心を抱いているかどうかを知りたいと思ったら、彼らに非常識なこと、愚劣なことを命じるといい。彼らがそれに抵抗したら、それは彼らがあなたに心服していないということであるし、いずれ支配者たちの派閥内部に疑惑を生み出す予兆でもある。トランプが家族を重用するのはそのせいである。
この「忠誠心テスト」は、まだ部下の本性がわかっていない体制発足の初期において、新しい雇用者に対してよく行われる。トランプ大統領は別に複雑怪奇な策略を弄しているわけではない。単にこれまでのビジネスとメディアでのキャリアを通じて有用と知った戦術をここでも繰り返しているに過ぎない。
トランプの支持者たちはこれまでの政権もさんざん嘘をついてきたと指摘しているが、これはその通りである。嘘の種類がちょっと違うだけで、その通りである。ただし、「嘘とは言えないが、本当でもない」ことというのはいろいろな形態をとるものである。
これには上層の形態と下層の形態の二つがある。
上層のは、大使や外交官が用いるものである。
大使たちはあとあと面倒を引き起こすのが嫌なので、反論される可能性のある、明白な嘘をつくことはしない。しかし、もし大使が言った言葉をそのまま鵜呑みにしたら、それはあまりに無邪気である。大使はふつう複数の聴衆に向かって同時に話す。彼がほんとうは何を言おうとしているのかを知るためには、その話を複数の文脈に即して聴き分ける必要がある。言葉を愚直に文字通りに解釈したりすると、言葉の意味をまったく取り違えることになる。ほとんどの場合、大使たちは一目で知れるような真実は口にしないものだ。
これらの外交官たちの語る言葉は厳密には嘘ではない。しかし、はっきりとした、生の真実とは間接的な関係しか持っていない。
大使たちや外交官たちがそのような言葉づかいをするのは、彼らが長期にわたって、さまざまな相手とのデリケートな連携関係を維持できるように最大限の可動域を保とうとするからである。
トランプ政権がこのタイプの「嘘」(と言ってよいなら)を活用することも理屈の上ではありえない話ではない。だが、この外交官的な嘘はトランプのスタイルではない。
それに、彼の支持者たちの多くは(そう考える理由がないわけではないが)、彼を重大な真実を喜んで告げる人物だと見なしている。トランプの敵対者たちはそのことを見落としてはならない。外交官的な嘘と大衆をミスディレクトする多様な方法の間の社会学的な差異を見分けないならば、彼らはトランプの訴求力を過小評価し続けることになるだろうし、またその独善性ゆえに彼ら自身が大衆からどれほど不信の目で見られているかをも過小評価することになるだろう。
トランプの専門は「下層の形態」である。もっと破廉恥な嘘、つまり明らかに「Xでない」場合に「Xだ」と言うタイプの嘘である。
だが、これは実は権力の誇示なのである。メインストリームのメディアや政治的対抗勢力を断固として無視するという意思表示なのである。
彼の嘘は単なる嘘以上のものとして理解されることを求めている。
一つには、多くのアメリカ人、とりわけトランプ支持者たちは、エスタブリッシュメントの口から出る「リファインされた」嘘よりも、トランプのがさつな嘘の方をより快適に感じるということがある。
もう一つ理由がある。それは周縁にいる部外者にとっては、今さらトランプ連合に参加するためのハードルは高く、政治的対抗者たちにとってトランプ陣営との結びつきなどは考えられもしない。ということは、トランプ政権はあからさまな嘘をつくことを通じて、支持者たちに向かって、他の陣営と通じる橋を焼き落とせという、忠誠心を試すシグナルを送っているのである。
この下層の嘘もまた短期的な戦略である。これらの嘘の多くはその場の使い捨てのものであり、何が真実であるかがますますわかりにくくなっているという環境の下では、そもそも何一つ長期にわたる信頼性など求められていないのである。
だからと言って、ひとたび私たちがトランプのさまざまな非行を責めることに飽き飽きして、それを止めてしまったら、それこそ彼の思うつぼだということをわきまえておいた方がいい。
要するに、トランプ政権は自ら指名した閣僚たちも、彼の支持者たちもどちらも信用していないのである。そして、この信頼の欠如がトランプ自身に向けられるような相互不信の状況を作り出しつつある。これは何かを始めるというよりは、何かを終わらせるための戦略である。
だとすると、トランプ政権の最初の100日は破局に向かう日々だということになるだろう。



(夢人追記)「阿修羅」所載の、このAERA記事を読めば、内田樹のユダ金協力姿勢は明白なようだ。92発言のサンプルなど、どこをどう切り取るかでいくらでも「発言が事実に合っているかどうか」の数字は操作できる。その「統計の嘘」を使って、「全発言のうち真実が3.3%しか含まれない人物」という誹謗をしているのだから、内田樹も、頭がおかしくなったようだ。




内田樹「ファクト・チェッカーの基準ではトランプは大嘘つき」〈AERA〉
http://www.asyura2.com/17/kokusai17/msg/520.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 1 月 25 日 08:49:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 
 
 

             米メディアには「ファクト・チェック」という監視ツールが存在する。(※イメージ)


内田樹「ファクト・チェッカーの基準ではトランプは大嘘つき」〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170124-00000201-sasahi-soci
AERA 2017年1月30日号


 思想家・武道家の内田樹さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、哲学的視点からアプローチします。


*  *  *
 米メディアには「ファクト・チェック」という監視ツールが存在する。大統領選挙のときに注目されたが、立候補者の発言に虚偽や誇張がないかを査定し、有権者の判断材料として提供するのである。「ワシントン・ポスト」の専用サイト「ファクト・チェッカー」は政治家の発言の虚偽や誇張を5段階で評価している。単位は「ピノキオ」。学校をさぼってサーカス団にとらわれたピノキオが、「学校はどうしたの?」と問われたときに、事実をごまかそうとして次々嘘を重ねるたびに段階的に鼻が伸びる有名な場面から採られたものである。


「ファクト・チェッカー」の評定基準では「0ピノキオ」が「事実」、「1ピノキオ」が「一部に事実誤認、断片的引用」、「2ピノキオ」が「重大な事実欠落や誇張」、「3ピノキオ」が「深刻な事実誤認、明白な矛盾」、「4ピノキオ」が「大嘘」。


 トランプは選挙期間中に「同時多発テロで世界貿易センタービルが崩壊したとき、アメリカのイスラム教徒は歓声を上げた」「私はイラク戦争に反対した」「米軍は日本防衛に莫大な資源を投じているが、日本はその対価を払っていない」など大量の嘘を吐き続けた。選挙期間中の彼の92発言について「ファクト・チェッカー」は「4ピノキオ」が59、「3ピノキオ」が22、「2ピノキオ」が7、「1ピノキオ」が1、「0ピノキオ」が3という査定を下した。つまり、彼の発言は88%が「深刻な事実誤認ないし嘘」だったということである。一メディアからではあれ、全発言のうちに「ほんとうのこと」が3.3%しか含まれていないという評価を下された人物が大統領になってしまったのである。


 なにより重大なのは、アメリカの有権者たちの多くがこのファクト・チェックの結果を無視したということである。事実だろうが嘘だろうが、とりあえず耳に心地のいい話を聞かされることを彼らは選んだ。


 日本にはファクト・チェックそれ自体が存在しない。日本の政治家が嘘や誇張を口にしないからではもちろんない。嘘と誇張がデフォルトなので査定の意味がないからである。という私の意見は自己採点で「1ピノキオ」。(内田樹





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