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兵庫県内の児童館で今年5月、小学2年の男児が施設に勤務する20代女性の首をバットで殴って負傷させる事件があり、兵庫県警が傷害の非行内容で、男児を児童相談所に通告していたことが18日、関係者などへの取材で分かった。女性は右耳がほとんど聞こえなくなるなどの後遺症が出ており、現在も治療中という。
関係者によると、女性は今年5月下旬、勤務していた児童館で、男児に突然、施設にあった少年野球で使われるようなバットで後ろから首を殴られた。女性は意識もうろうとなり、約1週間入院。退院後、右耳がほとんど聞こえなくなり、自律神経を損傷した影響で突然めまいを覚えるようになったといい、12月に再度入院し治療を受けるなどしたが、完治は難しいという。
この男児は、事件の数日前にも別の児童に暴力を振るっていたといい、女性は6月、県警に被害届を提出。県警は捜査の結果、女性に対する傷害の非行内容で10月、男児を児童相談所に通告した。
女性は教員免許を持っており、この児童館で専門職として勤務する以外に別の小学校でも非常勤講師として教壇に立っていたが、事件以降、いずれも休職を余儀なくされている。刑法は14歳未満を処罰対象から除外している。通告を受けた児童相談所が家庭裁判所に送致すれば、家裁は調査や審判を行う。
「後遺症が出るような傷を負っても、教育者は『被害者』になってはいけないのか」。被害を受けた20代女性は、産経新聞の取材に苦しい胸中を語った。女性は大学時代に教員免許を取得。事件当時は、大学院で教育学の研究をしながら、小学校と児童館で勤務する多忙な日々を送っていた。「幅広い知識と経験を得て、子供の能力を最大限伸ばせる教諭になりたい」という思いが支えだったという。
事件後は、静かな場所なら相手の話が聞き取れるが、周囲が騒がしいと、ほとんど聞こえない状態になった。授業や課外活動で児童の発言を聞き落としてしまう可能性が高いため、学校での勤務を断念せざるを得なくなった。だが、それ以上に女性を苦しめたのは、周囲の反応だった。10月、教育関係者が集まる交流会に出席すると、事件を「単なる事故」と切り捨てられ、「児童が感情をむき出しにするのはむしろ良いこと」「小学生をなぜそこまで追い詰めるのか」と、被害届を出したことを逆に非難されたという。
文部科学省が行った平成28年度の問題行動・不登校調査によると、全国の小学校で児童の暴力行為は約2万3千件発生。うち「対教師暴力」は3628件にのぼる。これに対し、警察や児童相談所などが何らかの措置をした児童は219人と、暴力行為全体の約1%にとどまっている。女性は「児童から激しい暴行を受けても、我慢している先生はたくさんいるはず。教育現場であっても、『暴力は犯罪』という認識がもっと広がるべきだ」と訴えた。