私はこの末の姫の言葉で知った。先に大隊長がメエルハイムのいいなづけの妻であろうと言ったイイダの君とは、この人のことであるのを。こう気が付いてみると、メエルハイムの言葉も振る舞いも、この君を敬い賞賛すると見えぬものはない。それでは、ビュロウ伯夫婦も心に許しているのだろう。イイダという姫は、背が高く痩身で、五人の若い貴婦人のうち、この君だけが髪が黒い。あの良く物を言う目以外には、ほかの姫たちに立ち勝って美しいと思われるところもなく、眉の間にはいつも皺が少しある。顔の色が蒼く見えるのは、黒い衣服のためだろうか。
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