下の記事は「君の名は。」についてのもので、このアニメ映画が大ヒット作になった理由をポップだから」と言うのは、コロンブスの卵のようなものだが的を射ていると思う。「ポップ」という言葉を持ってきたところがいい。
実は、「大衆に愛される要素ばかりでできているから大衆に愛された」ということを言っているようなもので、同義反復的表現なのだが。
まあ、この映画を批判している人の多くも(たいていは作り手側の人だが)実は、この映画が「大衆受け」したことが気に入らないから、あれこれ難癖つけて、「何の新味も無い、売れる要素をつなぎ合わせただけの作品」と批判しているわけだが、実はそれこそが本当はこの映画への最大の賞賛となるべきところである。それが賞賛の言葉でなく批判の言葉になっているところに今の日本映画界や疑似インテリ(スノッブ)のアホさがある。
映画会社の狙いは常にヒット作を作ること、すなわち「大衆受け」する作品を作ることのはずだが、それがめったに成功することが無いのはご存じの通りだ。映画会社の作る映画の8割から9割までは大衆に嫌われる。つまりヒットしない。それがなぜかを考えないと、彼らが「大衆受けのする作品」を作っているつもりが、実は大衆の大嫌いな作品なのかもしれない、となる。いや、実際そうなのである。映画コンクールで賞を取れば大衆は集まる、というものでもない。
「ポップ」とは、「ポピュラー(大衆的)」であることだ。「大衆が好む種類の歌」、というのがいわゆるポップソング、ポピュラーソングである。その特徴は「明るい、爽やか、気分が高揚する」、などだろう。もちろん、しんみりとした情感を持つものもあるが、それも「気持ちのいい涙」でなければならない。すなわち、「それに接して気持ちがいい」、ということが「ポップ」の本質なのである。「君の名は。」の特徴がまさにそれだったのではないか。
さて、「君の名は。」はさておき、ここで、「逃げ恥」がなぜあれほどの人気になったか、ということを考えれば、あの作品もまた「ポップ」そのものだったからだとわかる。「明るい、爽やか、気分が高揚する」(エンディングの「恋ダンス」にそれは象徴されている。)から、見ていて気持ちがいい。気持ちがいいから見る人は増える、ヒット作品となる。
一方、ヒットしない作品はと言えば、「気持ち悪い」のである。作り手側がいくら面白いと思っていても、それは「人の意表をつく」「刺激的な暴力や性の描写がある」「斬新な表現がある」といった、作り手の自己満足的なものでしかなく、見ていて気持ちのいいものではない。こうした作品はポップではないわけだ。もちろん、「人の意表をつく」だけでもヒット作品にはなりうる。「家政婦のミタ」や「女王の教室」などの遊川和彦作品はそれだ。だが、彼の技法、つまり「人の意表をつく」手法が分かってしまうと、後に残るのは、「あざとさ」だけであり、それは「気持ち悪い」のである。だから、彼の作品は面白いとは思われても、愛される作品にはならない。
「あざとさ」は笑いなどの方面でよく見られるもので、ある年代に好まれる笑いは、他の年代の人には嫌われる。同じ年代でもすべての人が同じ笑いを好むことは無い。「明るい」のと「笑いの強要」は別物であり、笑いの持つ攻撃性(すべて笑いは基本的に笑われる対象を貶めるものであり、またその笑いを共有できない人を精神世界の「下級国民」扱いするものだ。)は、多くの人をむしろ不快にする。松本人志の映画が常に異様なほどの不人気、不入りであることを考えるとよい。
つまり、人間の場合でも、面白い人間が必ずしも愛される人間ではない、というのと同様だ。
愛されるには愛される理由(どこかで聞いた言葉だwww)があるのである。
なお、私は「君の名は。」も「逃げ恥」も未見である。
こんなのは、見なくても、ネットに流れる無数の情報を見聞きしていれば自然と分かることだ。
(以下引用)
昔、Nirvanaという超有名なバンドがおりまして。
その代表曲に「Smells Like Teen Spirit」という曲があります。
ボーカルのカートが売れる曲を作ろうとして作ったらすげぇ売れたというとてもポップな名曲です(ちなみに「ティーンスピリット」というのは日本で言うところの「エイトフォー」みたいなもの)。
そういった経緯があり、カート自身は「スメルズ〜」をあまり気に入ってはなかったんですが、それでも大ヒットして客から求められるから仕方なく演奏するというような状況が続いていました。
カートは「スメルズ〜」のことを「クソみたいなポップソングのように、しょーもないけど何か口ずさんでしまう要素を含んだ曲」と何かの番組で言っていました(ソースは忘れましたすみません)。
売れる曲というのは、やはりどこかでポップさを含んでいて、それの割合が非常に重要になってくると思うのです。
映画の話に戻しますと
映画の話に戻しますと、確かに君の名は。はそういったポップな要素が数多く含まれていると思います。
お約束というか、こういうの好きだよね!みたいなのが随所に散りばめられています。
ちなみにですが、君の名は。はどちらかというと、男性が好きなアニメだと思います。男性にウケる要素がいっぱいあるような。
で、まさにここがヒットする要素なわけですが、先ほどの口ずさみたくなるというのが、大ヒットの要素でもあると思うんです。
君の名は。は最高のポップソングなのではないか?
ポップソングってつい口ずさみたくなると言いましたが、君の名は。は何度でも見たくなるんですよね。
ポップソングのように、毎日のように見てもいいぐらい、気持ちが晴れやかになるというか、またあの感じを味わいたい!となるんですよ。
シン・ゴジラもめちゃくちゃ面白かったですが、ポップソングではない気がするんです。すごく完成された曲というか。
いい曲だな〜とは思うけど、1曲リピートでは聴けないというか。でも、君の名は。なら1曲リピートで聴けちゃう気がするんですよね。
ここですよね。
江川達也氏の批判は、最高の褒め言葉ではないか?
同業者からすれば売れるアニメ作りやがって!と思うかもしれませんが、逆を言えば客のニーズをくみ取り、素晴らしいポップソングを作りやがって!ということですよね。
これって、羨む気持ちとか、悔しい気持ちを全部ひっくるめた、すごい褒め言葉だと思うんです。
経済評論家の岸博幸氏は同番組で「監督は賢いから今の世の中に合わせて作った」と評価していたそうですが、まさにそうですよね。
ちなみにですが、僕は君の名は。をただのポップソングではなく、メッセージも込められた素晴らしい曲だと思っていますよ。とんでもなくポップだとは思いますけどね。