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天国の鍵50

その五十 太陽の虹

アンドレは近くの机の上の紙に、四つの詩を書きとめました。
「面白い詩だな。しかし、考えるには少し時間がかかる。詩の謎が解けるまで、君たちはここに滞在しなさい」
 ハンスたちはその申し出を感謝して受け入れました。
 それからアンドレは数日間、その紙をながめて考え込んでいました。その間、ハンスたちはすることもないので、町の子供たちといっしょに近くの凍った川でスケートをしたり、雪のつもった丘でソリ滑りをしたりして遊んでました。こういう遊びになると、アリーナはなんでも一番です。セイルンはあまり子供っぽい遊びは好きではないらしく、暖炉のそばで居眠りしている事が多く、チャックはアンドレの奥さんのトリスターナとおしゃべりばかりしてます。どういうわけか、昔から女の人は悪魔が好きなのですね。トリスターナはもともと修道女で、信心深い人なのですけど、チャックが悪魔とは知らず、つまらないおしゃべりをして喜んでます。チャックも女の人と話すのは大好きです。それが美しい女の人ならなおさらです。たいていの悪魔は、人間とは逆に醜いものを好むのですが、チャックの趣味はちがうようです。だいたい、トリスターナの夫のアンドレという人は顔に似合わず知性のお化けみたいな人間で、女性相手のおしゃべりは苦手なのです。これは女性が非論理的だということではなく、おしゃべりの意味のちがいです。ある種の人間にとって、厳密でない議論や会話ほど我慢のならないものはないのですが、逆に、会話というものに軽い機知や軽快な楽しさしか求めていない人間には、会話にいちいち論理性を求められるのは不愉快なものなのです。そういう意味では、女性は女性とおしゃべりする時が一番楽しく、男性は男性と会話や議論をする時が一番楽しいはずなのです。これは、作者の私の偏見かもしれませんけどね。最近の男性の会話は女性の会話と似ているようですから、こんな考え方はきっと古い人間にだけ通用することなのでしょう。
 ある日、アンドレがハンスたちを集めて言いました。
「ルメトトの詩について、一つ仮説ができたから聞いてくれ」
 仮説というのは、ある問題についての一つの考え方です。
「まず、ヘルメスが出没する場所とは、これはチャックの予想どおり魔法使いの部屋だろう。ヘルメスとはヘルメス・トリスメギストスとも言って、神秘学や魔術の祖とされている神だからだ。ただし、その魔法使いがソクラトンかどうかはわからない。もし、ソクラトンの部屋のそばに黒い松が生えているなら、そこが一番可能性は高いな。
 次に、ダマスコ薔薇とアマランスと紫の愛の花は、光の色だ。見たまえ」
 アンドレは部屋の窓のカーテンを閉め、その隙間からもれてくる太陽の細い光線に、小さな三角柱のガラスをかざしました。
すると、部屋の壁に美しい虹が現れたではありませんか。
ハンス、アリーナ、チャック、セイルンの四人はおどろいて太陽の光の虹を見ました。

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HN:
酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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