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「愛国者」を自称する連中が日本を泥の中に落とす

小田嶋隆のブログから転載。
プロの文章を全文転載というのは少々気が引けるが、ブログやツィッターの文章は「コピーOK」「無断引用OK」という性質のものだ、と私は考えている。むしろ、コピーや引用によって筆者の人となりや文才が広く知られることになり、筆者にとっても有益ではないか。その意味で、「きっこのブログ」の最初に「この文章は著作権法によって保護されています」と脅迫的に書いているのは筆者の了見の狭さを広告するようなもので、好ましくないと思うのだが……。まあ、彼女(複数人物の共同執筆かと思うのだが)は既に知名度を上げているから、今後は著作権で利益を守ることにする、ということだろうか。それもまた一つの考えだ。彼女のブログはかつて民主党政権誕生に大きな影響を与えた(もちろん、彼女に政治情報を与えたのは民主党議員だっただろう)と私は思うが、その後の民主党の迷走と崩壊で彼女のブログは歴史的使命は終わったと思うので、著作権問題以外では彼女のことは本当はどうでもいい。(たまに、素人には入手不可能な珍しい政治情報が載ることもあるから、時々見る価値はあるとは思う。)
引用の話から、下記記事とは無関係な話になったが、下の記事には二つの紙媒体に書いた記事が引用されていて、その二つとも面白い。まさに小田嶋隆のコラムニストとしての才能が溢れている。よくもまあ、こんなギャグを思いつくものである。まさに、カネの取れる文章というものだろう。ただし、こういう「(偽)右翼を揶揄する記事」は、本人が言うところの「地雷を踏む勇気」が無くては書けないものでもある。あまたの腰抜け評論家と小田嶋隆の違いはそこにある。
(偽)右翼の愚劣さをこれほど明瞭に炙り出した文章も珍しいと思う。



(以下引用)

2014/05/07

従軍慰安魚とか


ツイッター上でオダジマが「従軍いやん婦」と言ったとか言わなかったとか(←言ったわけですが)いう話が物議をかもしている折も折ですので、ハードディスクの底から古い原稿を召喚してくることにしました。


1997年の5月に『噂の真相』誌のために書いたコラムです。


当時話題になっていた「新しい歴史教科書を作る会」の活動に触発されて書いたテキストであるというふうに記憶しております。












従軍慰安魚  時価


「歴史教育を見直すのじゃの会」は、盛況だった。宴席には、鯛の活き造りが出た。


「鯛も災難だぜ」


「宴会の慰安のためにこんな姿にされて」


「日本人ってのも案外残酷だよな」


 などと話しているところにやってきたのは、フジオカだとかいう大学教授だ。


「自虐史観だね」


は?」


「日本軍はタイには侵攻してないよ」


……は?」


「それにだね。軍や政府が強制的に鯛を連行した事実を示す公文書の類はひとつも発見されていないんだよ」


……それがどうかしたんですか」


「だから強制じゃなかったのだよ」


……でも、鯛にしてみれば、意に反して皿の上にいるわけですよね」


「いいかね。釣り餌に食いついたのは、あくまでも鯛自身の意思だよ。それに意に反する境遇のすべてが強制だというのなら日本のサラリーマンだってほとんどが強制労働ってことになるじゃないか」


……何を言いたいんですか?」


「ついでに言えば生け簀の中でエサを与えられている鯛だってたくさんいるんだよ。それも高級エビをふんだんにだ。野生の鯛には考えられないぜいたくじゃないか」


……でも、食われるわけでしょ、結局」


「そりゃ、商売だからギブアンドテイクだよ。自ら望んで生け簀に来たんだから」


「自ら望んで、ですか?」


「決まってるだろ。鯛にだってヒレもアタマもあるんだから。ヤツらは補償欲しさに強制連行を言い立ててるだけだよ。ん? じゃあ、キミは何か? 軍や国が強制連行したという証拠もなしに、国益に反する歴史教育を推進しようというのか」


……国益? 何ですかそりゃ?」


「子供たちが自分の国を愛せるように教育するのが国益にかなったことじゃないか」


「事実を曲げてもですか?」


「お前たちこそ日本軍が組織的に鯛狩りをしていたとか、政府が鯛確保のために公務員を置いていたとか、ありもしないことを並べ立てて歴史をゆがめている反日プロパガンダに乗せられたスターリン主義者の東京裁判の占領政策の土下座外交の……


「そうじゃ、ワシもそう思うぞ」


「誰ですか? あんたは」


「きさま、ワシの顔も知らんのか? ははーんなるほど、さてはワシの単行本が売れてるからひがんでおるな」


「ひがむって、何をですか?」


「強姦マワしてよかですか?」


……良くないと思いますけど」


「よしよしよしりん、やりたまえコバヤシ君。植民地時代は強姦マワすのが常識だったんだ。なんで日本だけが責められにゃならんのだ」


「そうじゃ、ワシはワシのやりたいようにやるぞ。放題一直線じゃあ」


……しかし、強姦されたりマワされたりする側の立場だってあるでしょうが」


「あっ、お前、価値相対主義者じゃな。それでワシを絶対視できないんじゃな」


……ボクはただ被害者の気持ちを……


「被害者のキムチ? 貴様××人か?」


「そういえばやけに挑戦的じゃな、このワシに対して」


「まいったな、こりゃあ」


「コリアンと言ったぞ、こいつは」


……日本人ですってば、ふつうの」


「つまり衆愚だね」


「何ですかあんたは、横からいきなり」


「違う。左からいきなり右のニシベだよ」


 ……ううう、と、悪夢から覚めた時、オレは日本人としての誇りを失っていた。








ついでに、2001年に掲載した「新しい歴史教科書を作る会」関連のコラムを採録しておきます。
よろしくよろしく。






 歴史教科書:無料配布


 「新しい歴史教科書を作る会」の教科書が波紋を呼んでいる。


 ふん。狙い通り、だ。学校現場で採用されようがされまいが、波紋を呼べばそれでオッケー、でもって国家だの愛国心だのについて議論が巻き起これば大成功……と、まあ、もともとがそんな調子のアジテーションなわけだから、煽りに乗って議論の輪に加わるのはテキの思う壺というのか、飛んで火に入る火中の栗獲り素浪人……って何言ってんだオレは。


 ともかく来年には日韓共催でサッカーのW杯が開催される。ってことは、なんとしてもあと一年間は韓国と仲良くやっていかねばならないわけで、私としても愛するサッカーの栄光のために、作る会の諸君と闘わざるを得ないのだね。面倒だけど。


 諸君の「愛国心」は国益を損ねている。「誇り」もそうだ。諸君が「誇り」を言い立てる分だけ確実にお国は屈辱的な状況に追い込まれている。だから歴史を云々する前に、まず歴史から学ぶことだ。かつてこの国を勝てない戦争に走らせ、撤退の機会を見誤らせ、壊滅的な敗北に導いたのは何だ? 愛国心じゃなかったのか? 


 「新しい歴史教科書」という言い方も気に食わない。「新しい」って、歴史を改訂する気か? いいか? 歴史はそもそも過去の事実である以上改訂不能なものだ。仮に歴史を更新しようとする者があるのだとすれば、それは事実を歪曲ないしは捏造しようとする勢力にほかならない。違うか?


「いや、歴史が改訂不能だというのはいくらなんでも硬直的だと思いますよ」


 そうか?


「歴史というのは過去の事実である以上に、その過去の事実に対する解釈なわけです」


 うん、そうかもしれない。


「とすれば、解釈である限りにおいて、それは百人百様で、結論は出ないわけです」


 結論が出ないんじゃ教科書は書けないぞ。


「ですからなるべく断定的な言い方は避けて、両論併記を旨とし、事実についても〔あったらしい〕というふうに含みを持たせた表現を心がけてですね……」


 ……って、おまえ……もしかして


「そうです。『あったらしい歴史教科書を作る会』の者です」


 だからさ。この期に及んでそういうふうに話を紛糾させるような会を……


「史観無くして歴史無し。肝心要の歴史観が揺らいでいるようでは歴史的事実を云々する資格もないと言えましょう」


 おお、明快なご意見。


「人類の歴史は階級闘争の歴史であったと、ここのところをまずはっきりさせ……」


 い、いきなり中学生の教科書には……


「歴史に子供用も大人用もありません。学問はすべからくプロレタリア独裁の……」


 ……も、もしかしてあなたは


「そうです。『アカらしい歴史教科書を作る会』の者ですが何か?」


「っていうかさ、歴史をどう考えるかも含めて個人の自由なわけでしょ? 憲法が保障している思想信条の自由ってのはそういうことじゃないですか。だとしたら、教科書があること自体ヘンなワケですよ」


 ……かもしれないな。


「だからね、歴史の教科書は白紙でオッケー。一人一人の生徒が一から作ることから本当の自分らしさが……」


 ……もしかして、キミは『あなたらしい歴史教科書を作る会』とか?


「ははは、実は全部ひっくるめて『アホらしい歴史教科書を作る会』だよ」


 なるほど。「作る会」乱立による国定教科書の相対化。良いかもしれない。韓国のみなさん。大丈夫。ワシらはアホです。 




「すべからく」の用法が間違っていますが、歴史を直視する意味で直さないことにしました。 本当はめんどうくさかっただけですがてへぺろ。

ではごきげんよう。

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HN:
酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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