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階級社会と「見えない人間」

私は、この「酔生夢人ブログ」では、できるだけ無駄話を中心にしたいと思ってこのブログを「徽宗皇帝のブログ」と別に立てたのだが、根が真面目なもので、真面目な話が多くなるのは我ながら残念だ。

市民図書館の子供向けコーナーには宝物が多い、というのは何度か書いているが、子供向けの本というのは、実は子供向けを企図しても、現実には大人でないと理解できない内容が多い。たとえばアガサ・クリスティの作品を子供が読めるように翻訳しても、子供が理解できるのはその大筋だけだろう。と言うのは、今読みかけの「スペイン櫃の謎」は事件の当事者の浮気疑惑が話の中心だと思われ、それを子供がどこまで理解できるか、怪しいものであるからだ。
で、話の中にシェークスピアの「オセロ」の話が出てくるのだが、私は「オセロ」を子供のころに読んで、オセロが奥さん(デズデモーナと言ったか)の浮気を疑って彼女を殺す話だという大筋しか読み取れなかった。まあ、オセロの悲しみとか、感じはしたが、イアーゴーという悪党に手玉に取られる馬鹿、という印象のほうが強い。
で、問題は、これまで私はまったく疑問にも思わなかったが、イアーゴーはなぜオセロをそういう罠(奥さんの浮気疑惑)に嵌めたのかが、描かれていたのかどうかだ。単に黒人将軍(だったか)に仕えるのが白人として不愉快だったのか、それともオセロの失脚で彼は昇進できる当てがあったのか。
そこで、(たぶん)まったく書かれていない「理由」をここで推理すると、実はイアーゴーはデズデモーナに言い寄って振られ、その復讐をしたのではなかったか、ということだ。あるいはちゃんとそう書かれていたが、子供の私にはそこが理解できなかった可能性もある。
まあ、子供の読書とはそういう「半端な読書」が多いだろう、という話だ。

ついでに、「スペイン櫃の謎」を7割ほど読んだ段階で推理すると、この話のポイントは、階級社会では、下層民は上級階級には「自分たちとは別種の存在」と考えられていて、従僕が主人に逆らうこと、あるいは殺意を持つことは「ありえない」と最初から思われていることではないだろうか。これはたとえばロシア人(スラブ人という名前は「スレイブ(奴隷)」から来ているらしい。つまりロシアは「奴隷」が作った国である、という深層心理が西洋人にはある。)に対する西洋人の根深い嫌悪が、ウクライナ戦争へのNATOの異常な関与の根底にあるのと同じような症状だと私は思う。上級階級にとって下級階級の人間は人間ではなく「何かの役目を果たす存在」でしかないから、チェスタトンの「見えない人間」になるわけだ。
あるいはイアーゴーもオセロやデズデモーナにとっては「見えない存在」までは行かなくても軽視の対象だったのではないか。その憎悪が彼をあの犯罪に走らせた、というのがここでの推理である。





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酔生夢人
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男性
職業:
仙人
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考えること
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空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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