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虐待の明確な親の親権停止

虐待可能性のある親の親権を停止するというのは一案だが、里親制度が有効に機能するか、また、里親制度を利用した犯罪の可能性は無いか、など詰める部分は多いと思う。しかし、虐待の明確な証拠がある場合には、それしか救済手段はないのかもしれない。虐待をする親が改心する可能性はほとんど無いだろう。子供を虐待しながら何の心の痛みも感じない人間が改心するはずが無いではないか。


(以下引用)


「おねがい ゆるして」と書いた結愛ちゃんは、どうやったら救えたのか
2018年06月08日 06:01


日々、子どもに関わるソーシャルワークを行っているNPO法人フローレンスの駒崎です。


本当に悲しいニュースが飛び込んできました。 


死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑(朝日新聞デジタル)


殺された5歳の結愛(ゆあ)ちゃんのメモにはこうありました。


ママ


もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから


もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします


ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして


きのうぜんぜんできなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす


これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったい


やらないからね ぜったいやくそくします 


もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ


僕は、このメモを見て、大変恥ずかしながら泣いてしまいました。


自分にも5歳の息子がいて、毎日僕が帰ると「パパーっ!」と言って抱きついてきてくれて、そんな年頃の可愛い子どもが、覚えたてのひらがなで一生懸命「ゆるして」と書いたと思うと、涙が止まりませんでした。


しかし、僕は児童福祉の実践者の一人なので、悲しむだけで終わらせず、どうしたら良かったのか?を考えました。


後々の検証を読まないと確たることは言えませんが、しかしそれを待っていると数ヶ月、長い場合は1年以上かかるので、今ある情報に基づいて考えを書きます。

事件の流れ

事件の流れを最もよく書いているのは、以下のニュースです。 


5歳女児死亡 両親「虐待発覚恐れ病院行かず」(NHKニュース) 


タイムラインを簡易的にまとめました。 


201612月 「家の外に出されたり、怪我をしたりして」一度めの一時保護


20173月 「家の外に出されたり、怪我をしたりして」二度目の一時保護


      本件で2回書類送検


178月 体にあざがあるのを医師が見つけ、児童相談所に連絡。「パパに蹴られた」と開示。 


1712月 雄大容疑者(父)が仕事の関係で東京 目黒区に引っ越し、翌月には優里容疑者(母)と結愛ちゃんも雄大容疑者のもとに引っ越す


201814日 「児童福祉司指導」を解除


181月 香川県児童相談所が品川区児童相談所に資料を送り、引き継ぎ


181月末 目黒区「今年の1月末から要保護児童対策地域協議会 個別ケース検討会議を開催する準備を進めていた」


182月 引き継ぎを受けた品川児童相談所の担当者がアパートを訪問。優里容疑者(母)に「関わってほしくない」などと言われた 


183月 結愛ちゃん虐待死 

親権停止してたら救えた可能性

タイムラインでは、四ヶ月間で二度も親から引き離し、一時保護しています。 


これは、相当深刻度が高く、命に関わるシチュエーションです。


こうした場合、自動的に親権停止し、里親委託や特別養子縁組に移行する仕組みになっていたら、彼女は亡くならずに済んでいたでしょう。 


しかし、日本の親権停止件数はわずか17件。ドイツが12000件以上、イギリスが5万件以上なのに対し、ほとんど行われていないレベルです(出典:2012年度資生堂児童福祉海外研修報告書)。


日本では長年、子どもの権利よりも親権が優先されてきた歴史があり、いまだにそれが続いてしまっています。


例えば児童養護施設に子どもを預けたまま、何年も会いに来ないケース。たとえ里親や養親さんが見つかっても、親がノーと言ったら、子どもに里親・特別養子縁組委託はできません。 

児相職員の専門性がもっと高く、もっと人数がいたら救えた可能性

現場の児相職員の方々は、昼夜を問わず働いてくださっていて、心から敬意を持っています。


しかし、今回のケースは、2回も一時保護し、父親は2回書類送検され、さらには医療サイドからの通告もあり、子どもも「パパに蹴られた」と言っているわけで、明らかに一時保護から家庭に戻してしまってはいけないケースだったのではないでしょうか。


後知恵となってしまいますが、アセスメントが甘すぎたと感じます。


児相職員の方々の多くは、他の部署からの異動によって来られた方々で、数年経つとまた異動されます。それによって専門性が磨きにくい、という制度的な限界もあるでしょう。


また、ケースワーカーが持つケースも多すぎで、1人で100件近いケースを持つ場合もあります。


ちなみに東京都は人口約1300万人で11の児童相談所が管轄しているので、いち児相あたり100万人のエリア感。子どもの人口は約12%ですから、12万人以上の子どもを数人(4万人あたり1人の基準)で担当しています。


こうなると、常にケースに追いまくられるため、十分なアセスメントを行えなくなるのも必然です。

里親・養親がもっといれば救えた可能性

児相が親子を引き離す「一時保護」を躊躇する理由のひとつが、一時保護した「後」です。


一時保護所は数が少ないので、もともと通っていた学校には通えなくなったり、虐待児と非行児が一緒の部屋になったりと、子どもの心理的負荷は大きいです。また「一時」保護なので、一定期間しか保護できません。


一時保護した後に、適切に受け入れてくれる、少人数で家庭的な施設や里親、あるいは養子縁組をしてくれる養親さんがたくさんいれば、一時保育はしやすくなります。


しかし、現在はそうした施設や里親さん達は圧倒的に不足しています。よって、児相が一時保護したくてもできない事情もあります。 

警察と全件共有していたら、救えた可能性

今回のケースは、品川児相が2月に訪問したのに、母親が「関わって欲しくない」と面会を拒否しています。


ここで、警察が介入し、子どもを保護すべきでした。 


3月時点で12キロという小ささだったので、目視をすれば虐待事実が確認できたはずです。 


足立区のうさぎ用ケージに3歳児が監禁され虐待死した事件でも、児相から子どもに会わせてくれないと警察に連絡が行き、警察が子どもが家にいないことが確認し、虐待されていた次女も保護しました。


親が子供に会わせない、威嚇・過去に虐待歴がある等の場合は、児相は即時に警察と情報共有をし、会えない場合は警察が家に踏み込んでいくべきです。


それ以外のケースについても、月1回等と頻度を決め、児相と警察でケースを共有するべきです。いずれにせよ、すべてのケースを児相と警察で共有するのです。 


実際に、愛知・茨城・高知では、児相と警察との全件共有が行われています。 


しかし、今回の事件があった東京都や香川、その他多くの児相は警察との全件共有を行なっていません。 


子どもの命に関わる問題なのに、地域ごとにバラツキが出てしまっている状況です。


2月の訪問失敗の1ヶ月後に、結愛ちゃんは亡くなっています。


あの訪問時に警察が踏み込んでいたら、ギリギリのところで救出できたはずです。


しかし昨日(7日)、都議会では虐待防止NPOが提案した全件共有の要請を、警察消防委員会では不採択。厚生委員会では後ろ向きな「継続審議」となったそうです。

最後に

親権制限や警察との全件共有は、政治がルールを変えれば良いだけ。児相のキャパ不足も予算をつければ良いだけ。


なぜそれができないか。この社会的養護の分野は、最も票になりにくいからです。だから熱心に動く議員自体が少ない。


でも、票にはならなくても、「評」(評判)にはできます。この分野で動こうという政治家を、ネットや街頭で応援しましょう。あるいは次の選挙で駅前に立つ政治家に「児童虐待に取り組む?」と聞いてください。


子どもが虐待で死ぬニュースを見て、その場だけで胸を痛めても、悲しくなっても、再発は防げません。


一過性の感情だけで終えず、制度を変える、お金の使い道を変えることに繋げて、構造的な再発防止を目指しましょう。


それが彼女を助けられなかった我々大人にとって、せめてもの償いではないでしょうか。




編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年6月7日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。


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