[PR]

 22日投開票の衆院選と同時に実施される最高裁裁判官の国民審査に向け、朝日新聞社を含む報道各社は、審査対象の裁判官7人に共通アンケートを行いました。質問と回答の全文は次の通りです(文意を損なわない範囲で、表現の一部を変えています)。

 ◇質問


 【最高裁裁判官としての信念、あるべき裁判官像】


 ①最高裁裁判官としての信条や審理にあたる心構え、仕事の印象、難しさは。


 ②国民が裁判所に期待する役割は何だと考え、身近な司法とするために取り組んでいることは。


 ③これまでに関わり、最も記憶に残っている裁判とその理由は。


 ④最高裁裁判官の任命手続きについての考え、出身母体や出身別の割合は妥当だと思うか。


 【憲法】


 ⑤憲法改正をどう考えるか。


 ⑥憲法9条が戦後日本で果たした役割と、9条に自衛隊を明文で位置づける論議をどう考えるか。


 ⑦国政選挙で「一票の格差」の問題が長く続いていることをどう考えるか。


 【行政・民事】


 ⑧東京電力福島第一原発事故を踏まえ、司法の責任や原発関連訴訟への司法の姿勢をどう考えるか。


 【刑事】


 ⑨裁判員制度で、公判前整理手続きの長期化や裁判員候補者の辞退率上昇が問題視される現状をどう考えるか。制度の課題や見直すべき点は。


 ⑩静岡県で1966年に起きた一家4人殺害事件など、再審無罪判決が続くなか、刑事裁判の現状への感想や反省点、冤罪(えんざい)を生まない司法の実現への教訓は。


 ⑪日本弁護士連合会が昨年の人権擁護大会で死刑制度の「廃止宣言」を採択した。死刑制度の存廃や、再審請求と死刑執行との関係をどう考えるか。


 ⑫取り調べの録音・録画や司法取引制度の導入が刑事裁判にどんな影響を与えると考えるか。新制度導入にあたり、司法判断はどうあるべきか。


 【司法行政】


 ⑬法科大学院の募集停止が相次ぎ、法曹志望者が減少するなか、法曹養成制度の現状をどう評価し、どうあるべきだと考えるか。


 ⑭経済活動の国際化に伴い、国をまたぐ法的な争いを円滑に解決するために日本の裁判所に求められることは何だと考えるか。


 ⑮諸外国で裁判手続きの電子化が進むなか、国民が使い勝手のよい裁判所にするにはどうすべきだと考えるか。電子手続き導入への賛否やアイデアはあるか。


 【人柄】


 ⑯最近の出来事で、最もうれしかったこと、腹立たしく感じたことは何か。


 ⑰趣味、尊敬する人物、好きな言葉、座右の銘と、それぞれを選んだ理由は。


 ⑱最近読んで感動した本、面白かった本とその感想は。


     ◇


■小池裕氏の回答


 ①常に中立公正であること。法と良心に従い、幅広い視野から事件に取り組み、考え方の筋道がよく分かる判断をするように努めたい。


 ②適正迅速で分かりやすい裁判をすること。利害や見解の対立する事柄について、証拠と法に基づき筋道立てて判断を示す裁判の役割への期待に応えることが大切だと考えている。


 ③これ一つと挙げることは難しい。医療事件は、事実認定、法律判断、科学的知見の理解、当事者の心情などについて考えを巡らせることが多く、深く記憶に残るものが少なくない。


 ④最高裁判事の任命権は内閣にあるので、回答は差し控えたい。


 ⑤国のかたちを定める憲法の改正については、国民的な議論を経て国民が判断することであるので、回答は差し控えたい。


 ⑥具体的な事件を離れて、憲法条項の在り方について見解を述べることは差し控えたい。


 ⑦議員定数訴訟の判決の中で示した意見のとおりである。具体的な事件を離れて見解を述べることは差し控えたい。


 ⑧具体的な事件を離れて見解を述べること、個別事件に対する見解を述べることは差し控えたい。


 ⑨裁判員制度は、課題はあるが、おおむね順調に運営されていると考えている。司法の国民的基盤に関わる極めて重要な制度であるので、課題については実証的な検討を重ね、中長期的な構想をもって粘り強く対応していくことが大切だと考えている。


 ⑩司法制度改革以降、刑事司法は大きく改善されてきたと思う。事実認定については、常に謙虚さと恐れをもって取り組み、誤りのないよう様々な角度から慎重に証拠を吟味することが大切であると考えている。


 ⑪究極の刑罰である死刑については、様々な意見や議論があるところであり、格別の検討が必要であると考えているが、具体的な事件を離れて見解を述べることは差し控えたい。


 ⑫かねてよりの懸案事項が立法化されたものであり、刑事司法の適正化などが更に促進されることを期待している。


 ⑬具体的な政策についての見解を述べることは控えたいが、幅広い素養を備えた法律家が養成され、司法制度を支え、更に様々な分野で活躍することを期待している。


 ⑭国際取引事件、家事渉外事件をはじめとする国際的紛争事件に円滑に対応するためには、手続き的整備のほか、裁判所における人材の育成、専門集中部などの処理態勢の整備を図ることが重要であると考えている。


 ⑮裁判も一種の情報処理作用であるから、情報処理革命の外にいられない。法的手当て、関係者の発想転換などが必要になるが、情報伝達、情報の整理検索などの切り口から従来方法の思い切った見直しを図ることにより、アクセス、迅速性などが大きく変化するであろう。


 ⑯若いスポーツ選手、棋士たちが伸び伸びと活躍していることを頼もしく、うれしく思う。理不尽な事柄に対しては、感情によるより、事実を見つめて捉えるようにしている。


 ⑰好きなことは、読書、速歩による散歩、総菜作りなど。好きな言葉は「初心忘るべからず」。市井に生きた両親への感謝と尊敬の念を忘れることはない。


 ⑱コリン・パウエル氏の「マイ・アメリカン・ジャーニー」。パウエル氏の軌跡からアメリカの社会構造を興味深く感じ取ることができた。



■戸倉三郎氏の回答


 ①当事者に主張立証を尽くす機会が与えられ、裁判所が適正で公平な審理判断をしたかという観点から原審までの手続き・判断を先入観なく審査したい。上告理由など該当性の判断と結果の妥当性とのバランスや従前の判例との整合性など、上告審、法律審としての判断の在り方に難しさを感じている。


 ②納得性の高い審理に基づき、分かりやすい理由を示した適正で迅速な裁判が行われ、その内容が社会一般の正義の観念にも合致するものであること。傍聴して内容を理解できる分かりやすい審理・判断をすることが重要であり、最高裁で行われ始めた判決理由要旨の告知などもよいことだと思う。


 ③任命後半年余りに過ぎず、無我夢中で事件に取り組んできたというのが正直なところであり、まだ記憶に残る事件を申し上げられるだけの経験がない。


 ④最高裁判事の任命の在り方などについては、最高裁判事の任命権が属する内閣において検討される事柄であるので、お答えは差し控えたい。


 ⑤憲法改正は、国会による発議と国民投票によるものであり、司法権に属する立場から個人的な意見を述べることは差し控えたい。


 ⑥諸情勢が変化する中で憲法9条を巡り様々な議論があることは承知しているが、司法権に属する立場から個人的な意見を述べることは差し控えたい。


 ⑦具体的な事件の中で判断を示すべき事柄であるので、回答は差し控えたい。


 ⑧高度な科学技術を用いたシステムの効用とリスクや社会的許容性の的確な判断は困難だが、中立公平な姿勢で双方の意見に耳を傾け、多角的な判断をするよう心掛けたい。


 ⑨長期化は証人らの記憶の減退、被告人の身柄拘束の長期化などの弊害を招く。法曹三者が具体的な長期化要因を分析・共有し、改善策を協議することが重要。辞退率上昇の原因は様々だと思うが、法曹三者は、審理期間、審理・判断の難易度、心理的負担感等、裁判員の負担感を軽減するための努力が重要。


 ⑩誤判はあってはならず、裁判官は、虚心に被告人の弁解や証拠を精査し、わずかな疑問点でも納得するまで解明する姿勢を堅持しなければと自戒している。


 ⑪死刑制度の存廃は国民の間で様々な観点から議論されるべき問題であり、司法権に属する立場から個人的な意見を述べることは差し控えたい。


 ⑫新制度の下で得られる証拠が事案の解明に効果的であればあるほど、証拠としての適格性や信用性の判断も一層慎重に行わなければならないと考えている。


 ⑬法科大学院の教育の更なる充実を図るとともに、プロフェッションとしての法曹の価値に対する社会の評価を高め、需要の裾野を広げることも重要。


 ⑭国際感覚を身に付け、事案に応じて外国の法制度、文化、生活様式、価値観などを適切に考慮した判断を行うことのできる裁判官の育成が求められる。


 ⑮電子手続きは、裁判所へのアクセス負担を軽減する等の効用が期待できるが、当面はコストに見合う利用と効果が期待できる分野から始めるのが現実的。


 ⑯うれしかったことは、1968年メキシコ五輪の年に100mで10秒の壁が破られてから49年後に日本人も10秒の壁を破ったこと。体格差を考えると偉業。腹立たしく感じたことは、歩きスマホ、自転車スマホの人とぶつかりそうになった時。本人も危ないが、相手に負わせるかもしれない被害を想像してほしいと思う。


 ⑰鉄道趣味全般。古い車両に乗るのが楽しい。健康維持で始めたウォーキングは10年になり、街歩き、街道歩き(ゴールは遠い)も楽しんでいる。小学校から高校時代の恩師の中には人間形成面で重要な影響を与えてくださった方がおられ、折に触れて思い出し、感謝の気持ちを新たにしている。好きな言葉、座右の銘は、「一隅を照らす」。どんな仕事でも受けた以上責任を持って行わなければならないという戒めとして。「一度に一つずつ」(One thing at a time)。トム・クランシーの小説の中で主人公が緊迫した状況で出る言葉で、仕事が交錯して煮詰まった時の呪文として。


 ⑱少し前に読んだものであるが、鎌田浩毅著「地球の歴史(上)(中)(下)」(中公新書)。地球46億年の歴史がコンパクトに記述され、億年単位の長いスパンの地球の活動の前では人類は微小な存在であることが素人にもよく分かる。



■山口厚氏の回答


 ①当事者の主張に耳を傾け、証拠に基づいて、中立・公平で公正な判断をすることが必要だと考えています。最高裁として判断すべき事件数の多さと事件の多様さに直面して、最高裁判事の使命の重大さを改めて痛感しています。


 ②詰まるところ、中立・公平で公正な裁判を迅速に行うことが求められているのだと思います。結論に至る過程をできるだけ分かりやすく示すことも大切だと考えております。また、裁判所としては、情報発信をさらに進めていくことが望まれるように思います。


 ③就任直後に関与したGPS捜査に関する大法廷判決が、刑事手続き法に関する近年の最も重要な判決の一つであるだけに強く印象に残っています。


 ④任命権者が判断すべき事項ですので、回答は差し控えさせていただきたいと思います。


 ⑤憲法改正の是非などは国民が判断し、決めるべきことで、憲法を尊重し擁護する義務を負う立場にある者としては、回答を差し控えさせていただきたいと思います。


 ⑥⑤と同様の理由により、回答は差し控えさせていただきたいと思います。


 ⑦私の考えは、当審に係属した具体的な事件について判断する中で示すべきものと考えております。


 ⑧今後当審にも関係する事件が係属する可能性がありますので、回答は差し控えさせていただきたいと思います。


 ⑨全体的に見れば、課題はあるものの、うまくいっているのではないかと考えておりますが、制度の運用上、裁判員の負担軽減に配慮することが必要だと思います。


 ⑩判断の誤りを避けるため、様々な観点から証拠評価をしっかりと行い、手続きを適正に運用することが重要だと思います。


 ⑪死刑の存廃などについては国民的な議論が大切だと思います。一般論としての回答は差し控えさせていただきます。


 ⑫法改正に向けた法制審の審議には私も参加いたしました。改正法は現状を改善する方向に向けた重要な一歩だと考えております。今後、関係者がそれを適切に運用していくことが大切です。


 ⑬私は最高裁判事就任前には法曹養成教育の一端に携わっており、様々な課題があることを痛感しておりました。関係者の地道な努力が実を結ぶことを願うばかりです。


 ⑭裁判を行うという点では変わりがないと思いますが、両当事者の主張・立証をしっかりと踏まえた適切な判断を可能な限り迅速に行うことが大切だと思います。


 ⑮課題は多いとは思いますが、利用者の利便性向上の観点から、手続きの電子化の導入に向けた検討が行われてよいと思います。


 ⑯人生はうれしいこと、腹立たしいことの連続ですが、法科大学院教授時代の教え子から司法試験合格の報告が届いたことは最近うれしく感じたことの一つです。


 ⑰趣味はウォーキングと読書(乱読です)。いままでに大変多くの人と出会い、その出会いを大切にするようにして参りました。特定した「尊敬する人物」の名前を挙げるのは難しいように思います。好きな言葉、座右の銘というほどのものはありませんが、研究者のときには、どのように小さなものを執筆する場合であっても、常に「全力投球」を心がけておりました。


 ⑱多分野の書物を乱読するのが趣味ですので、特定の書名をあげることは難しいように思います。小説でいえば、人の生き方を描いたものに感動したり、歴史的な事件を題材にしたものをとくに面白いと感じたりしています。



■菅野博之氏の回答


 ①誠実と共感を信条とし、意識的に多数の観点から見ることを心がけてきました。更に広い視野から見直しながら、バランスのとれた適正な判断ができるよう努めたいと考えます。個別事件の問題と法解釈の問題、更には社会的影響や将来にわたる問題などが混在している事件に接するとき、頭を悩ませることが多いです。


 ②迅速さを含めた質の高い判断が期待されていると考えます。常に社会の進歩・変革に即していくとともに、安定感のある判断が求められているのではないでしょうか。最高裁においても、分かりやすい判決に留意したいと考えます。


 ③外国人の親と子どもの退去強制処分事件、フィリピン人母の子どもたちの国籍事件、台湾ハンセン病訴訟、様々な会社更生事件など、多数の事件が心に残っております。子どもの人権や自立性の確保が難しい事件、あるいは、多数の人々の利害の調整が難しい事件が一番記憶に残るように思います。


 ④最高裁判事の任命に関しては、意見は差し控えたいと思います。


 ⑤憲法改正については、議論のもと、各国民が決めることであり、その解釈適用に当たっている裁判官が発言すべきではないと考えます。


 ⑥憲法9条については、国民一人一人が考えていく問題であり、裁判官が一般的意見を述べるべきではないと考えます。


 ⑦具体的事件において考えを示すべき事柄と考えます。


 ⑧具体的事件にかかわる点については、意見を控えさせていただきます。ただ、一般論として言えば、裁判所は、法令に照らして厳密に検討しているものと考えます。


 ⑨裁判員制度については、全体としては順調に進んでいると思います。ただ、迅速さを含めた適正な刑事司法の理想に向けて、一層の工夫や研究が欠かせないと考えます。


 ⑩誤判はあってはならないことです。それを防ぐには、各裁判官が、客観的証拠を重視するという裁判の基本を再確認しながら、多面的に考え抜くことが重要と思います。


 ⑪死刑制度の存廃などは、国民の意見により決められるべき立法の問題と考えます。


 ⑫刑事司法改革関連法の影響などについては、最高裁判事として意見を言う立場にはありませんが、今後各制度の趣旨に沿った運用が積み重ねられていくものと考えております。


 ⑬司法、ひいては法曹界は、専ら人によって支えられていますので、志の高い誠実な法曹候補者が増えていくことを願っております。


 ⑭国をまたぐ争いであっても、スピード・費用・公正さに着目されるのは変わりません。また、裁判官が広い視野を持ち、必要な場合には専門家の助力も得られるよう、工夫を継続することが重要と考えます。


 ⑮司法手続きにおける国民の負担をできる限り減らしていくことが重要です。電子手続きの活用も、そのメリット、デメリット双方を検討しながら、適する分野につき進展していくのではと期待しております。


 ⑯うれしかったのは、この数年、何人もの日本人科学者がノーベル賞を受賞したこと。夢をかきたてられました。


 ⑰好きな言葉は、誠実と共感です。裁判、特に民事裁判は、命令や説得ではなく、心を開いて話し合い、それぞれの立場や考えを共有することが重要と考えております。


 ⑱趣味は、読書、特にSFと経済関係です。SFでは、J・G・バラード、スタニスワフ・レム、レイ・ブラッドベリなどが好きです。SFは、思考や感性の幅を広げてくれるものと思います。次いで、音楽鑑賞(シャンソン、カンツォーネなど)。元々天文学者志望だったので、星を見て宇宙について思いをはせることも好きです。



■大谷直人氏の回答


 ①予断を持たずに事件に取り組み、判決などで具体的な理由を示すにあたっては、最終審としての説明責任を果たす内容になるよう、力を尽くしたい。最高裁には多様な紛争についての不服が申し立てられ、どの事件も最終的な決着が求められている。社会的に影響の大きな事件も少なくなく、責任の重さを日々痛感している。


 ②広い視野の下で、公正な判断を行うことが期待されていると感じる。その期待に応えるためには、判断の内容を説得力ある分かりやすいものにすることが大切である。また、裁判所の存在が国民に身近なものとなるよう、情報発信や手続きの工夫などといった面にも一層留意する必要がある。


 ③地裁や高裁で勤務した時代、3人の裁判官の間でさまざまな議論を重ね、充実した判断につながったと感じられた事件は、著名かどうかを問わず長く記憶に残っている。最高裁においても同じだろうと思う。


 ④任命権限に関わる事柄であり意見は差し控えたいが、現在、バックグラウンドの異なる同僚裁判官とさまざまな角度から率直な意見交換ができる環境にあり、日々の仕事にとって大きな意義があると感じている。


 ⑤裁判の中で憲法判断を示す立場にあり、お答えは差し控えたいが、憲法は、我が国における「法の支配」の基盤となるものであり、普段からそのありように国民の目が注がれていることは、大切なことであると考える。


 ⑥⑤と同じ。


 ⑦これまでに関与した定数訴訟についての私の意見は、大法廷判決の中で示してきたところであり、これからも個々の事件の判断の中で示していきたい。


 ⑧法的判断が司法に求められている大きな問題の一つであるが、今後訴訟が最高裁に係属する可能性があるので、意見は差し控えたい。


 ⑨国民の皆さんの理解と協力に支えられて、制度が定着しつつあることを、刑事裁判に携わってきた者としてうれしく思っている。大改革であり長期的なものさしで改善を図っていくべき課題もなお残っているが、刑事裁判が、「開かれた司法」の方向に大きく変わったことは確かである。


 ⑩誤判を防ぐためには、一つ一つの事件において、当事者が適切な訴訟活動を行い、裁判官が曇りなき目で判断を下すことが、何より重要である。制度や運用の改善点については、法曹三者の間で、実情をもとにして、率直で冷静な検討を深めることが欠かせない。


 ⑪国民の間で議論を深めていくべき重要なテーマであると思っているが、具体的事件に関与する立場にあるので、立法論に関わるご質問についてはお答えは差し控えたい。


 ⑫重大な刑事事件は裁判員裁判によって審理されており、今回の新制度の運用については、裁判員裁判の証拠調べにおいてどのような評価が示されるかが、重要なポイントになると思う。裁判員裁判と同様に、長期的なものさしで検討すべき問題であると考える。


 ⑬さまざまな課題を抱えていることは認識している。法曹養成制度も教育制度の一つであり、時間をかけて行うべき人づくりの土台だといえる。長期的なゴールを見定めて、じっくり検討していく姿勢も大事だと思う。


 ⑭国際的な経済活動が原因となった訴訟はこれからますます増加すると思う。裁判官は、紛争の背景にある実情も視野に入れた上で、判断を下すことが求められる。そのためには、研修、人的交流などの機会も一層充実させる必要がある。


 ⑮「開かれた司法」を推進していく上で、テクノロジーの活用は重要な柱の一つだと考える。それだけに、単に「便利かどうか」というのにとどまらず、司法へのアクセスや裁判手続きの将来のあり方も念頭に置いた上で、総合的に電子化などの改革を進めていく姿勢が大切だと考える。


 ⑯個人的には、今年は名演と観客席の熱気が一体となったライブに出会う機会が多く、終演後はその場の一員であった幸福感を味わえた(例えば、ロシアの劇作家チェーホフの「ワーニャ伯父さん」)。


 ⑰「尊敬」という意味とは少し違うように思うが、強さ、弱さを含めて、人間的魅力に富んだ人物として、最近興味があるのは、森鷗外。趣味はコンサート、観劇。好きな言葉はゲーテの「人間は努力する限り迷うものだ」。


 ⑱千葉聡の「歌うカタツムリ」。身近な生物を手のひらの上に乗せながら、生物進化に関するダーウィン以降の研究の歴史が物語られており、科学読み物として非常に新鮮だった。



■木沢克之氏の回答


 ①約40年間、弁護士の活動から培った経験や市民感覚を踏まえ、弁護士出身の裁判官であることの自覚と誇りを持って、正義と公平にかない、かつ、健全な社会常識にかなう法律の解釈・適用に努めていきたいと考えております。最高裁裁判官に就任して約1年3カ月経過しました。最終審としての判断の重さを更に自覚し、一つ一つの事件に謙虚に向き合い、よりよい判断・解決のため、誠実に職責を果たしていく覚悟です。


 ②裁判所に対して、一つ一つの事件について、迅速かつ適正妥当な判断を期待していると思います。最高裁判所としては、主な事件の判決などについて、ホームページなどでも公表していますし、法廷の傍聴人の方々にも事件の争点など概要がわかるような工夫を積極的に進めています。


 ③個別事件の判決の中で示した意見のとおりであり、これを離れてお答えするのは控えさせていただきます。


 ④いずれの質問についても、憲法で定められている任命権者が判断する事柄ですので、お答えするのは控えさせていただきます。


 ⑤憲法の改正は、国会の発議により国民投票を経て行われるもので、主権者としての国民が判断される事柄であり、各国民が真剣に考え議論すべきものと思います。


 ⑥国家存立の基盤である国の安全保障政策については、各国民が自分の問題として真剣に考えるべき事柄であり、司法の立場にある者として、個人的意見は控えさせていただきます。


 ⑦具体的事件において考えを明らかにすべき事柄と思います。


 ⑧裁判所は、どのような訴訟においても、法にのっとり公平かつ適正妥当な判断をしていかなければならないものと考えております。


 ⑨裁判員制度はおおむね順調に運営されてきていると思いますが、問題点もご指摘のとおりあります。更なる審理の工夫や制度の広報に努める必要があると考えております。


 ⑩誤判は絶対にあってはならないものです。刑事事件の事実認定においては、思い込みを排し、様々な視点から十分に証拠を吟味することが大事です。刑事司法に携わるすべての者が、誤判防止に向けて、それぞれの立場で誠実に職務を行わなければなりません。


 ⑪死刑制度の存廃や終身刑の創設などは、最終的に国民の意見により決められるべき立法の課題であり、司法の立場からの意見は控えさせていただきます。とはいえ、死刑は究極の刑罰であり、その適用は極めて慎重に行われるべきものと考えております。


 ⑫新制度は、捜査・公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存している状況にあるとの指摘を受けて立法化されたものであり、これにより、刑事手続きにおける証拠収集方法の適正化及び多様化がされ、公判審理の更なる充実が期待されます。


 ⑬具体的な政策についての発言は控えさせていただきますが、法科大学院で5年間教壇に立った者として、法曹養成の理想に向けて開校した有力な法科大学院で募集停止が相次ぐこととなり、残念でなりません。社会の様々な分野で法律家が活動することは、法の支配する公正な社会を実現するために必要であり、大変意味のあることだと思います。わが国社会の今後の発展を支える有為な人材として質の高い法律家をいかに計画的に養成するかという観点で検討されることを望みます。


 ⑭国際取引事件、家事渉外事件をはじめとする国際的紛争事件に十分対応できるよう、裁判所における人材の育成が求められるものと考えております。


 ⑮裁判手続きのIT化のあり方としては、裁判手続きの利用者の利便性の向上だけでなく、本人訴訟への対応を含む関係者の手続き保障、情報セキュリティー、事務の合理化を含めた費用対効果などの諸般の事情に配慮しつつ、裁判手続きにとって真に望ましい姿を探る必要があります。


 ⑯うれしかったことは、稀勢の里関の優勝と横綱昇進です。


 ⑰趣味は、歌舞伎鑑賞です。尊敬する人物は自分を育ててくれた両親で、感謝と尊敬をしています。好きな言葉には「道を伝えて、己を伝えず」という言葉があります。日本の幕末から明治にかけての動乱期に、キリスト教の伝道を行った宣教師チャニング・ムーア・ウィリアムズの生き方を表現した言葉です。私はキリスト教の信徒ではありませんが、ウィリアムズは、幾多の困難に全身全霊で立ち向かいながら人々の心を一つにまとめ、教会や学校・病院を造り、社会や世界を動かしました。そのような信仰の姿こそが、「『道を伝え』ることではないか」と思われます。そして「己を伝えず」。真の意味はいまだ計り知れないものの、「自分の考えを相手に独善的に押しつけようとしない」とか、「自分の名誉や欲望のためにけっして人を利用しない」と解釈されています。事実、ウィリアムズは一介の宣教師に過ぎない自分の名が記憶されることを徹底して拒み、日記や手紙の多くを燃やしまでしたとも言われています。


 ⑱松井今朝子「師父の遺言」。歌舞伎の演出家武智鉄二と師弟関係にあった著者の波瀾(はらん)万丈の半生を描いた自伝です。



■林景一氏の回答


 ①重大な責任を心に留め、公平・公正な審理を尽くしていきたいです。職務上の文書の量が膨大で、あらゆる分野にわたることに強い印象を受け、難しさを日々感じています。


 ②最終審として、公平・公正な裁判を通じて納得のいく判断を下すことが期待されており、そのことが身近な司法ということにつながると思います。


 ③まだ、関与してから日が浅いので、件数は限られていますが、どの案件も関係者にとって重大な結論を出しているのだという意味で重みがあり、心に残ります。


 ④任命された側ですので、個人的な考えを申し述べるべきではないと思います。


 ⑤国会が発議し、国民投票で決まる話ですので、最高裁の一員として考えを申し上げることは差し控えます。


 ⑥憲法9条を巡る議論が活発化していることは承知しています。最高裁の一員としてこの議論に加わるのは適当でないと思います。


 ⑦9月27日に参院選に関する大法廷判決に際して個別の意見を申し述べました。私の基本的な考え方は、そこにあるとおりです。


 ⑧原発訴訟についても、個別事例に即して判断していくべきものと考えます。


 ⑨裁判員の方々は、真摯(しんし)に役割を果たしておられると承知しています。分かりやすく公正・迅速な刑事裁判、国民の司法参加という意味で良い制度だということの理解を更に広げていくことが必要かと思います。


 ⑩冤罪(えんざい)はあってはならないことであり、裁判の段階においては先入観にとらわれず、証拠に基づいた裁判をしていくということだと思います。


 ⑪死刑は、刑罰として究極の選択であり、そのあり方については国際的な潮流も踏まえながら、国民の皆様、その代表である国会において議論が深められるべきものだと考えます。


 ⑫今の段階では、具体的な話を述べるのは尚早ですが、所期の目的に沿って刑事司法プロセスへ信頼が高まる一助となることを期待しています。


 ⑬意見は差し控えます。


 ⑭グローバル化につれて国際ルールも変化していきます。そうした国際潮流の展開を的確につかむだけでなく、自ら潮流を作っていくとの気構えが必要だろうと思います。


 ⑮裁判に限らず、電子化は賛否の問題ではなく必然です。世代間ギャップへの配慮も必要ですが、日本標準、世界標準に乗り遅れないようにすることが必要でしょう。


 ⑯うれしかったのは、サッカー日本代表のワールドカップ(W杯)本大会出場決定です。腹立たしいというか心配なのは、北朝鮮をめぐる情勢です。


 ⑰娯楽としてはサッカー観戦と音楽が好きです。尊敬に値する先達ばかりで、特に一人挙げることは難しいです。日頃の心構えとしているのは「一期一会」という言葉です。


 ⑱「外交官の一生」(石射猪太郎)。先輩から勧められた戦前の知中派外交官の回想録で、内政・軍事と外交の交わる難局における身の処し方につき考えさせられました。