逆転写されてゲノムに取り込まれる代表的なウィルスがレトロウィルスです。ゲノムへの遺伝子導入にしばしば使われるレトロウィルスベクターはレトロウィルス由来のものです。ベクターは外来遺伝物質を別の細胞に人為的に運ぶために利用されるDNA (またはRNA) で、分子生物学や細胞生物学で汎用されます。レンチウィルスはHIV (human immunodeficiency virus、ヒト免疫不全ウィルス) を代表とするレトロウィルスの一種で、レンチウィルスベクターはHIVゲノムから作られています。HIVは核膜を越えるための特別なタンパクの tatを持っており、レンチウィルスベクターはtatを使って核膜を乗り越えてゲノムに感染します。レトロウィルスベクターは核膜を乗り越えるタンパクを持ってはいませんが、ゲノムに感染できます。それはなぜでしょうか?ヒントはレンチウィルスベクターは増殖しない細胞にも感染できるが、レトロウィルススベクターは増殖中の細胞にしか感染できないという事です。
実は細胞増殖の途中に「核膜が無くなるタイミング」があるのです。細胞周期とは1つの細胞が2つの娘細胞を生み出す周期の事です。1つの細胞周期の間にゲノムDNAの複製と娘細胞への分配が起こります。細胞周期は、G1期 (間期1) -> S期 (染色体複製期) -> G2期 (間期2) -> M期 (分裂期) というように進行します。M期に染色体が凝縮し、反対側の極に引っ張られ、半分ずつ2つの娘細胞に受け継がれます。このM期には核膜が崩壊し、一時的に消失します。レトロウィルスベクターはこの核膜消失時に核に侵入し、そしてゲノムに挿入されます。M期に核膜が消失するという事は生物学の基礎知識でもあります。
RNAワクチンが逆転写されてゲノムに取り込まれる事はあり得るのでしょうか。ワクチンではないのですが、コロナウィルス自体のRNAゲノムがヒト細胞由来の逆転写酵素によって逆転写されてゲノムに挿入される事はあるようなのです。
以前にも書かせていただきましたが、私が選ぶタイムリープものナンバーワンは、高畑京一郎作「タイム・リープ あしたはきのう」ですね。体言止めの多用に最初こそ眉をひそめましたが、ストーリーにぐいぐい引っ張られて夢中になって読みました。
未来から来たタイムトラベラー、という設定とは趣を異にしますが、スペイン映画「熱愛」A LONG RETURNING/LARGO RETORNO(1975年)が子供の頃にテレビで見て、しびれました。
『難病のため死を目前にした愛する妻を、治療法が見つかるまでコールド・スリープさせる事にした夫。40年後、当時のままの姿で目覚めた妻に、年老いた夫は会うことをためらってしまう……。冷凍睡眠をテーマとした、スペイン製の異色SFラブ・ロマンス。』(ヤフー映画解説より)
一言でいうなら40年の時を経てお爺ちゃんになった夫と若々しいままの妻との再会を描いた映画です。
この逆パターンとしては、クリストファー・リーヴ、ジェーン・シーモア主演「ある日どこかで」(Somewhere in Time 1980年)が良い出来らしく、「観るたびに号泣するの~」という男友達の言葉につられて昔DVDを購入しましたが、封を切らないうちにワープしちゃったらしくいくら探しても見つからないざんす。