第四十七章 神の武具の複製
隠れ家に戻ったミゼルたちは、リリアの手でマリスを介抱して貰い、長い牢獄生活で衰えた体を回復させた。
「そうか。お前たちはカリオスをも倒すつもりか。だが、それは不可能だろう。あの男の魔力は、悪魔そのものだ」
マリスの言葉に、三人は顔を見合わせた。
「こちらには、神の武具が三つも揃っています」
ミゼルが言った。
「それを揃えるのには大変な苦労をしただろう。だが、カリオスを武力で倒そうとするのは、風を剣で斬るようなものだ。この世に、奴を倒せる人間がいようとは思えん」
「カリオスは不死人なのですか?」
「不死以上のものだ。不死人は、ただ死なないというだけの存在だが、カリオスは人間の何万倍の生命力を持ち、あらゆるものに姿を変える。不死だとも、七つの命があるとも言う」
「なら、話は簡単だ。その七つの命を全部奪えばいい」
ピオがあっさり言った。
「だって、こちらは神の武具で人間の数千倍の力があるんだからな。勝負はできるさ。それとも、このまま故郷に帰ってのんびりと暮らすか?」
ミゼルは頭を振った。カリオスがいる限り、真の平和と安心はやってこない。
「それにしても、カリオスと言う奴は、得体が知れねえな。そんな力があれば、レハベアムだけでなく、世界中を征服して、世界の王にだってなれるじゃねえか」
ピオの言葉に、マリスが答えた。
「その気になればな。今のところ彼は、そんなことに興味がないのだよ。彼がどんな手段で魔力を手に入れたか分からんが、そのために、ある種の関心を失ったのかもしれん。たとえば、相手が子供で、必ず勝てると分かっていては、チェスをする気にはならんだろう。それと同じだ。しかし、奴がいつその気になるかは分からん。人間にとっては危険極まりない存在なのだ」
「どうも、納得のいかない話だな。なら、国王であることもやめりゃあいい」
「わしはカリオスではないから、そこまでは分からん。常人と方向が違うだけで、まったく欲が無いわけでもないのだろう。とにかく、恐ろしい奴だよ」
リリアが口を出した。
「確かに、カリオスの魔力は、通常の魔法とは違うと、父も言ってました。幻覚ではなく、実在するものを変化させ、しかもそれに巨大な力を与えることができるそうです。彼がその力で神殿の周りに巨竜や得体の知れない怪物を置いて、神殿を守らせているのを、父の魔法の鏡で見たことがあります」
「こりゃあ、普通の人間の出番はないな」
「もしも、ピオさんも戦うのなら、神の武具の力を他の武具に移すことができますわ。力は、半分以下になりますけど、普通の人間でも着られます」
「そりゃあ、願ってもないことだ。ここまで来て自分だけ指をくわえて見物しているのは御免だぜ」
「では、ピオさん、ミゼルさん、もう一度町に戻って、鎧兜などをあと三組盗んできてくださいな。ピオさん、マリスさん、私の分です」
「分かった」
ミゼルはピオと一緒に立ち上がった。
ミゼルたちが戻ってきた時、その手には三組の鎧兜、盾、剣、槍があった。
リリアは外にそれらの武具を積み重ね、その上に神の武具を置いた。
そして、呪文を唱えると、天から稲妻が地上の神の武具の上に落ちた。
「これで、これらの武具は神の力の一部を宿しました。これを着れば、自分の持っている力の数百倍の力が出せるでしょう。ただし、その力は数日間しか続きませんし、疲労回復の力もありません。カリオスを倒すなら、明日か明後日には出発しましょう」
リリアの言葉に、ミゼルは心配そうにマリスを振り返った。
「お父さん、大丈夫ですか?」
マリスは笑って答えた。
「ああ、もちろんだ。このお嬢さんの薬草と魔法で、体はすっかり元に戻った。今夜一晩寝れば、以前と変わらぬ働きができるさ」
四人は、明日の決戦に備えて、その晩は、早く床についた。
隠れ家に戻ったミゼルたちは、リリアの手でマリスを介抱して貰い、長い牢獄生活で衰えた体を回復させた。
「そうか。お前たちはカリオスをも倒すつもりか。だが、それは不可能だろう。あの男の魔力は、悪魔そのものだ」
マリスの言葉に、三人は顔を見合わせた。
「こちらには、神の武具が三つも揃っています」
ミゼルが言った。
「それを揃えるのには大変な苦労をしただろう。だが、カリオスを武力で倒そうとするのは、風を剣で斬るようなものだ。この世に、奴を倒せる人間がいようとは思えん」
「カリオスは不死人なのですか?」
「不死以上のものだ。不死人は、ただ死なないというだけの存在だが、カリオスは人間の何万倍の生命力を持ち、あらゆるものに姿を変える。不死だとも、七つの命があるとも言う」
「なら、話は簡単だ。その七つの命を全部奪えばいい」
ピオがあっさり言った。
「だって、こちらは神の武具で人間の数千倍の力があるんだからな。勝負はできるさ。それとも、このまま故郷に帰ってのんびりと暮らすか?」
ミゼルは頭を振った。カリオスがいる限り、真の平和と安心はやってこない。
「それにしても、カリオスと言う奴は、得体が知れねえな。そんな力があれば、レハベアムだけでなく、世界中を征服して、世界の王にだってなれるじゃねえか」
ピオの言葉に、マリスが答えた。
「その気になればな。今のところ彼は、そんなことに興味がないのだよ。彼がどんな手段で魔力を手に入れたか分からんが、そのために、ある種の関心を失ったのかもしれん。たとえば、相手が子供で、必ず勝てると分かっていては、チェスをする気にはならんだろう。それと同じだ。しかし、奴がいつその気になるかは分からん。人間にとっては危険極まりない存在なのだ」
「どうも、納得のいかない話だな。なら、国王であることもやめりゃあいい」
「わしはカリオスではないから、そこまでは分からん。常人と方向が違うだけで、まったく欲が無いわけでもないのだろう。とにかく、恐ろしい奴だよ」
リリアが口を出した。
「確かに、カリオスの魔力は、通常の魔法とは違うと、父も言ってました。幻覚ではなく、実在するものを変化させ、しかもそれに巨大な力を与えることができるそうです。彼がその力で神殿の周りに巨竜や得体の知れない怪物を置いて、神殿を守らせているのを、父の魔法の鏡で見たことがあります」
「こりゃあ、普通の人間の出番はないな」
「もしも、ピオさんも戦うのなら、神の武具の力を他の武具に移すことができますわ。力は、半分以下になりますけど、普通の人間でも着られます」
「そりゃあ、願ってもないことだ。ここまで来て自分だけ指をくわえて見物しているのは御免だぜ」
「では、ピオさん、ミゼルさん、もう一度町に戻って、鎧兜などをあと三組盗んできてくださいな。ピオさん、マリスさん、私の分です」
「分かった」
ミゼルはピオと一緒に立ち上がった。
ミゼルたちが戻ってきた時、その手には三組の鎧兜、盾、剣、槍があった。
リリアは外にそれらの武具を積み重ね、その上に神の武具を置いた。
そして、呪文を唱えると、天から稲妻が地上の神の武具の上に落ちた。
「これで、これらの武具は神の力の一部を宿しました。これを着れば、自分の持っている力の数百倍の力が出せるでしょう。ただし、その力は数日間しか続きませんし、疲労回復の力もありません。カリオスを倒すなら、明日か明後日には出発しましょう」
リリアの言葉に、ミゼルは心配そうにマリスを振り返った。
「お父さん、大丈夫ですか?」
マリスは笑って答えた。
「ああ、もちろんだ。このお嬢さんの薬草と魔法で、体はすっかり元に戻った。今夜一晩寝れば、以前と変わらぬ働きができるさ」
四人は、明日の決戦に備えて、その晩は、早く床についた。
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