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少年騎士ミゼルの遍歴 43

第四十三章 分かれ道

 ミゼルたちがレハベアムを北に向かっている間に、周りはすっかり初冬の寒々とした風景に変わっていた。しかし、北の土地は、乾燥地や荒れ地の多い中南部に比べて、地味は良いらしく、黒土の畑が多くなってきた。ほとんどは小麦畑だと思われるが、もう大方の畑では刈り入れは終わっている。
 ミゼルたちは、なるべく人目につかないような裏道を通って旅を続けた。
「まもなく、西のシズラへの道と、東海岸のイソズラへの道と二つに分かれます」
 オランプが言った。
 ミゼルは足を止めて考えた。そして、心を決めたように言った。
「みんなに言いたいことがある。長い間一緒に旅をして貰ったが、ここから先は危険すぎる。ここで別れることにしよう。マキル、ザキル、メビウスの三人はイソズラに行き、船を手に入れて、南の海岸に戻り、我々が乗ってきた船を探してアドラムに戻ってくれ」
「そんな、ミゼルさん、あんたたちだけで行くなんて……」
 マキルが抗議したが、現実主義者のメビウスがそれを止めた。
「ミゼルの言う通りだ。俺達が居たって足手まといになるだけさ。ここまで命があった事さえ珍しいくらいだ。ミゼルが思いきって戦うためにも、俺達は居ないほうがいいんだ」
 メビウスの言葉はミゼルの考えを代弁していた。道案内のオランプはともかく、マキルやザキル、メビウスには戦う力はない。戦いの時に彼らを庇っていては、戦力が削がれるのである。
「ここまで危険を冒して付き合ってくれて有り難う。これは謝礼だ。これだけあれば、小舟を買っても十分に残るだろう。三人で分けてくれ。メビウスの作った船も、君たち三人の物にしてくれ」
 ミゼルは、金貨六百金と、大きなルビーの指輪をマキルに渡した。
「金は今、これだけしか持ち合わせがないのだ。だが、この宝石をミゼルから貰ったと言ってアサガイのアロンの所に持っていけば、高く買い取ってくれると思う。あるいは、ゲイツという商人のところでもいい」
「その指輪なら、二千金はする。元泥棒のピオ様が保証するぜ」
 ピオが横から口を出した。
 マキル、ザキル、メビウスの三人は名残惜しげに振り返りながらミゼルたちと離れ、東への道へと消えて行った。特にザキルはリリアに未練ありげであったが、これから先の危険を思うと、臆病者のザキルはミゼルたちに付いていく勇気はなかったのである。
 マキルたちと別れて、ミゼル、ピオ、リリア、オランプの四人は西の方、レハベアムの首都シズラへと向かった。
 シズラのある西の方には大山脈があり、灰色の冬空の下、その黒々とした陰鬱な姿は、ミゼルたちに不安な気持ちを与えた。

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酔生夢人
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仙人
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自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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