第五十章 魔獣たち
「ドラゴンまで倒すとは驚いたな。だが、安心するのはまだ早いよ。こちらにはまだいくらでも新手がいるからね」
ミオスの声が響いた。
その声と同時に、神殿の向こうから何者かが現れた。川を渡ってこちらに歩いてきたのは、三体の動く石像である。騎士の姿をし、手には巨大な剣と盾を持っている。その剣と盾が陽光にきらめいた。
こちらに近づいてきた姿を見ると、その石像は、高さが五、六メートルほどある。片足でミゼルたちを簡単に踏み倒せる大きさだ。
ミゼルたちはそれぞれ離れて三体の騎士に対応した。
石像たちの動きは緩慢であるが、振り下ろす剣の勢いは凄まじい。ミゼルたちは、その剣を避けながら石像の足に斬りつける。しかし、足に傷を負っても、石像たちには何の変化もない。
「手足を切り離すのよ! 手首を切りなさい」
リリアが叫んだ。
ミゼルは、自分に剣を振り下ろす石像の手首に斬りつけた。一度では切り離せないが、二度、三度と連続して斬りつけると、石像の手首は剣を持ったまま地に落ちた。
すると、その手首が再び宙に浮き上がり、石像目がけて飛んでいき、その心臓に突き立ったのである。リリアが念力を掛けたのだ。
石像は自らの巨大な剣を心臓に突き立てられて、地面を揺るがせながら倒れた。
他の二体の石像も、マリスとピオに手首を切り落とされ、同じやり方で倒された。
「石像も駄目か。なら、これではどうだ」
再びミオスの声が響いた。
その言葉と同時に、空の彼方に一点の黒い姿が現れ、見る見るうちに大きくなっていった。それは小山ほどもある巨大な鷲であった。体は先ほどのドラゴンよりも大きい。
凄まじい羽ばたきと共に舞い降りた巨鳥は、あっという間にその足の爪でピオとマリスを掴み、再び空高く上がっていった。はるか上空から二人を落とすつもりだろう。いかに神の武具を着ていても、そうなれば二人の命はあるまい。
「ミゼル、行くわよ!」
リリアが叫んだ。
ミゼルの体は宙に浮かんだ。
先ほどとは違って、自分の意志でではなく、何かの力でただ運ばれていくだけである。その代わり、速さは段違いに速い。
目のくらむような上空である。
下に雲が見え、その下の地上はもはやぼんやりとした藍色にしか見えない。
上を見ると、あの巨鳥の姿があった。太陽に向かってなおも上昇している。
ミゼルは背中の矢筒から矢を抜いて、巨鳥に狙いをつけた。
矢の射程に巨鳥の姿が入った。
ミゼルの手から矢が放れ、矢は巨鳥の背中に突き立った。だが、巨鳥は、何の痛痒も感じないように飛び続ける。
「リリア、ぼくをあの鳥の背中に下ろしてくれ!」
ミゼルは、自分と並んで飛んでいたリリアに向かって叫んだ。
リリアが頷くと同時に、ミゼルの体は巨鳥の真上に来ていた。
巨鳥の両翼の間に飛び乗ったミゼルは、その巨大な羽毛に掴まりながら、王者の剣を抜いて鳥の背中に突き立てた。一度だけでなく、何度も何度も斬りつけ、鳥の背中に穴を開ける。さらに、剣で切り裂きながら、その血塗れの肉の中にミゼルは体ごと潜り込んでいった。
巨鳥は、自分の体の中に潜り込んだ異物による痛みを感じて、苦痛の叫びを上げた。
どろどろの肉塊の中で、ミゼルはやがて巨鳥の心臓を探り当て、そこに王者の剣を突き刺した。
巨鳥はピオとマリスを掴んでいた足を放した。
落ちていく二人を、リリアが思念で受け止め、空中に浮かばせる。
しかし、巨鳥の体内にいるミゼルに対しては、どうしてやることもできない。
心臓に剣を突き立てられ、命を失った巨鳥は、地上に向かって落下していく。
リリアたちもその後を追った。
「ドラゴンまで倒すとは驚いたな。だが、安心するのはまだ早いよ。こちらにはまだいくらでも新手がいるからね」
ミオスの声が響いた。
その声と同時に、神殿の向こうから何者かが現れた。川を渡ってこちらに歩いてきたのは、三体の動く石像である。騎士の姿をし、手には巨大な剣と盾を持っている。その剣と盾が陽光にきらめいた。
こちらに近づいてきた姿を見ると、その石像は、高さが五、六メートルほどある。片足でミゼルたちを簡単に踏み倒せる大きさだ。
ミゼルたちはそれぞれ離れて三体の騎士に対応した。
石像たちの動きは緩慢であるが、振り下ろす剣の勢いは凄まじい。ミゼルたちは、その剣を避けながら石像の足に斬りつける。しかし、足に傷を負っても、石像たちには何の変化もない。
「手足を切り離すのよ! 手首を切りなさい」
リリアが叫んだ。
ミゼルは、自分に剣を振り下ろす石像の手首に斬りつけた。一度では切り離せないが、二度、三度と連続して斬りつけると、石像の手首は剣を持ったまま地に落ちた。
すると、その手首が再び宙に浮き上がり、石像目がけて飛んでいき、その心臓に突き立ったのである。リリアが念力を掛けたのだ。
石像は自らの巨大な剣を心臓に突き立てられて、地面を揺るがせながら倒れた。
他の二体の石像も、マリスとピオに手首を切り落とされ、同じやり方で倒された。
「石像も駄目か。なら、これではどうだ」
再びミオスの声が響いた。
その言葉と同時に、空の彼方に一点の黒い姿が現れ、見る見るうちに大きくなっていった。それは小山ほどもある巨大な鷲であった。体は先ほどのドラゴンよりも大きい。
凄まじい羽ばたきと共に舞い降りた巨鳥は、あっという間にその足の爪でピオとマリスを掴み、再び空高く上がっていった。はるか上空から二人を落とすつもりだろう。いかに神の武具を着ていても、そうなれば二人の命はあるまい。
「ミゼル、行くわよ!」
リリアが叫んだ。
ミゼルの体は宙に浮かんだ。
先ほどとは違って、自分の意志でではなく、何かの力でただ運ばれていくだけである。その代わり、速さは段違いに速い。
目のくらむような上空である。
下に雲が見え、その下の地上はもはやぼんやりとした藍色にしか見えない。
上を見ると、あの巨鳥の姿があった。太陽に向かってなおも上昇している。
ミゼルは背中の矢筒から矢を抜いて、巨鳥に狙いをつけた。
矢の射程に巨鳥の姿が入った。
ミゼルの手から矢が放れ、矢は巨鳥の背中に突き立った。だが、巨鳥は、何の痛痒も感じないように飛び続ける。
「リリア、ぼくをあの鳥の背中に下ろしてくれ!」
ミゼルは、自分と並んで飛んでいたリリアに向かって叫んだ。
リリアが頷くと同時に、ミゼルの体は巨鳥の真上に来ていた。
巨鳥の両翼の間に飛び乗ったミゼルは、その巨大な羽毛に掴まりながら、王者の剣を抜いて鳥の背中に突き立てた。一度だけでなく、何度も何度も斬りつけ、鳥の背中に穴を開ける。さらに、剣で切り裂きながら、その血塗れの肉の中にミゼルは体ごと潜り込んでいった。
巨鳥は、自分の体の中に潜り込んだ異物による痛みを感じて、苦痛の叫びを上げた。
どろどろの肉塊の中で、ミゼルはやがて巨鳥の心臓を探り当て、そこに王者の剣を突き刺した。
巨鳥はピオとマリスを掴んでいた足を放した。
落ちていく二人を、リリアが思念で受け止め、空中に浮かばせる。
しかし、巨鳥の体内にいるミゼルに対しては、どうしてやることもできない。
心臓に剣を突き立てられ、命を失った巨鳥は、地上に向かって落下していく。
リリアたちもその後を追った。
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