第五十三章 人と悪魔
ミゼルたちが地上に落ちたのを見て、すぐさまアルージャが稲妻の杖を振り上げたが、素早くプラトーがミゼルたちの前に再び光の壁を作った。
「ミゼル! 弓を射るのよ。光の壁は、魔力は防ぐけど物は通すわ」
リリアの言葉で、ミゼルは背中の矢筒から矢を抜いて、アルージャ目がけて射た。
矢は見事にアルージャの胸に突き刺さった。
「うぐっ!」
アルージャは口から血を吐いて倒れた。思ったより、物理的な力には弱い。
ミゼルは今度はゴンダルヴァ目がけて矢を射た。
「馬鹿め!」
ゴンダルヴァは、飛来する矢に炎の息を吹きかけた。
矢は炎に包まれて燃え上がった。
しかし、続けてガルーダ目がけて放った矢の方は、ガルーダの首に刺さった。と思った瞬間、その矢はガルーダの体に跳ね返されていた。一瞬のうちに体を鋼のように固くしたらしい。
「矢ではだめか。なら、剣で戦うまでだ」
ピオが前に飛び出た。アルージャのいない今、相手の魔力はさほど恐れる必要はない。
マリスもその後に続き、それぞれ、ゴンダルヴァとガルーダの前に剣を構えた。
ゴンダルヴァがピオに斬りかかろうと意識がそれた瞬間、ミゼルの矢がゴンダルヴァの顔の真ん中の一つ目に刺さった。
「ぎゃああっ!」
ゴンダルヴァは凄まじい悲鳴を上げた。
マリスはガルーダに斬りつけるが、ガルーダはその度に体を固くして、剣を跳ね返す。だが、リリアが念を送ってガルーダの思念を掻き乱すと、彼の術は破れ、マリスの剣が初めてガルーダに傷を負わせた。一度傷つくと、その苦痛から彼の精神はもはや集中できず、もはや体を固くすることはできなかった。
ピオは、目が見えず剣を盲滅法振り回すだけのゴンダルヴァを、その剣を注意深く避けながら料理し、マリスもガルーダをやがて倒した。
ミゼルとリリアは、息を弾ませているピオとマリスに駆け寄った。
「残りの四つは?」
マリスがミゼルに聞いた。
「いつの間にかいなくなっている」
「しかし、こいつら、デモンの武将と言っていたな。ならば、カリオスは、悪魔そのものなのか? なら、人間の力で奴を倒すことなど、不可能だろう」
マリスの言葉にミゼルとピオは顔を見合わせた。
プラトーが、微笑を浮かべて言った。
「お前たちは、悪魔というものを大げさに考え過ぎとる。悪魔とは、ただ一つの存在ではない。人間の悪の思念の実体化した物が悪魔なのだ。だから、悪魔はいつでもどこでも現れるし、その強さにも天と地ほどにも開きがある。カリオスの魔力は強大だが、もともと人間であったことは確かだ。ならば、同じ人間に倒せぬはずはあるまい」
マリスは、プラトーの言葉に頷いた。
「じゃあ、さっきの魔物は、要するに人間の心が作り出した物なんだな。じゃあ、人間よりは弱いに決まってらあ」
ピオの言葉を聞いて、プラトーは厳しい顔で首を横に振った。
「それも間違っておる。人間の作り出した物が人間より弱いとか、劣っているとは限らん。人間ほどの万能性はないにせよ、ある部分では人間以上かもしれん。簡単な話、お前が持っているその剣も鎧も人間が作り出した物だが、人間の体よりも頑丈で、斬る力守る力は生身の人間より遙かに優れておるだろうが」
ピオは頭を掻いた。
「分かったよ。だから油断するなってことだろう」
ミゼルたちはピオの単純さに微笑した。
ミゼルたちが地上に落ちたのを見て、すぐさまアルージャが稲妻の杖を振り上げたが、素早くプラトーがミゼルたちの前に再び光の壁を作った。
「ミゼル! 弓を射るのよ。光の壁は、魔力は防ぐけど物は通すわ」
リリアの言葉で、ミゼルは背中の矢筒から矢を抜いて、アルージャ目がけて射た。
矢は見事にアルージャの胸に突き刺さった。
「うぐっ!」
アルージャは口から血を吐いて倒れた。思ったより、物理的な力には弱い。
ミゼルは今度はゴンダルヴァ目がけて矢を射た。
「馬鹿め!」
ゴンダルヴァは、飛来する矢に炎の息を吹きかけた。
矢は炎に包まれて燃え上がった。
しかし、続けてガルーダ目がけて放った矢の方は、ガルーダの首に刺さった。と思った瞬間、その矢はガルーダの体に跳ね返されていた。一瞬のうちに体を鋼のように固くしたらしい。
「矢ではだめか。なら、剣で戦うまでだ」
ピオが前に飛び出た。アルージャのいない今、相手の魔力はさほど恐れる必要はない。
マリスもその後に続き、それぞれ、ゴンダルヴァとガルーダの前に剣を構えた。
ゴンダルヴァがピオに斬りかかろうと意識がそれた瞬間、ミゼルの矢がゴンダルヴァの顔の真ん中の一つ目に刺さった。
「ぎゃああっ!」
ゴンダルヴァは凄まじい悲鳴を上げた。
マリスはガルーダに斬りつけるが、ガルーダはその度に体を固くして、剣を跳ね返す。だが、リリアが念を送ってガルーダの思念を掻き乱すと、彼の術は破れ、マリスの剣が初めてガルーダに傷を負わせた。一度傷つくと、その苦痛から彼の精神はもはや集中できず、もはや体を固くすることはできなかった。
ピオは、目が見えず剣を盲滅法振り回すだけのゴンダルヴァを、その剣を注意深く避けながら料理し、マリスもガルーダをやがて倒した。
ミゼルとリリアは、息を弾ませているピオとマリスに駆け寄った。
「残りの四つは?」
マリスがミゼルに聞いた。
「いつの間にかいなくなっている」
「しかし、こいつら、デモンの武将と言っていたな。ならば、カリオスは、悪魔そのものなのか? なら、人間の力で奴を倒すことなど、不可能だろう」
マリスの言葉にミゼルとピオは顔を見合わせた。
プラトーが、微笑を浮かべて言った。
「お前たちは、悪魔というものを大げさに考え過ぎとる。悪魔とは、ただ一つの存在ではない。人間の悪の思念の実体化した物が悪魔なのだ。だから、悪魔はいつでもどこでも現れるし、その強さにも天と地ほどにも開きがある。カリオスの魔力は強大だが、もともと人間であったことは確かだ。ならば、同じ人間に倒せぬはずはあるまい」
マリスは、プラトーの言葉に頷いた。
「じゃあ、さっきの魔物は、要するに人間の心が作り出した物なんだな。じゃあ、人間よりは弱いに決まってらあ」
ピオの言葉を聞いて、プラトーは厳しい顔で首を横に振った。
「それも間違っておる。人間の作り出した物が人間より弱いとか、劣っているとは限らん。人間ほどの万能性はないにせよ、ある部分では人間以上かもしれん。簡単な話、お前が持っているその剣も鎧も人間が作り出した物だが、人間の体よりも頑丈で、斬る力守る力は生身の人間より遙かに優れておるだろうが」
ピオは頭を掻いた。
「分かったよ。だから油断するなってことだろう」
ミゼルたちはピオの単純さに微笑した。
PR