第十二章 死の町メサ
山麓の村シャイドを出て、ミゼルたちは砂漠に入った。ここからはずっと砂漠が続くのである。シャイドの村長のムスタファから聞いてあった、人の住んでいるアビスバとアサガイという砂漠の中の町を目指して進む。
砂漠に入って三日目、前方に町の姿が見えた。
「蜃気楼じゃないでしょうな」
ゲイツが物知りなところを見せて言った。
「シンキローって何だ?」
とアビエル。
「砂漠に現れる幻さ。言わば、町の幽霊だ」
腰の低いゲイツもアビエルに対しては言葉がぞんざいだ。
「幽霊ってのは、人間がなるもんだとばかり思っていたが、町の幽霊もあるのか。気味が悪いな。さっさと通り過ぎようぜ」
「そうはいかん。水が残り少ないから、井戸を探してみよう」
近づいていくと、それは蜃気楼ではなく、本物の町だったが、どうも様子がおかしい。人の気配がない。
町は城壁で囲まれた城塞都市だったが、門は開いていて、番兵もいない。
門の上にはカラスが群をなしてとまっている。カラスたちは、門の下を通っていくミゼルたちを見下ろして、不気味なしゃがれ声で鳴いた。
町の通りには、生き物の姿はまったく無かった。時折吹く熱い風で土埃が舞い上がるだけである。
大通りの両側に泥と煉瓦で造った四角な家々が並んでいるが、その家々の戸口の中は黒い闇があるばかりだ。
ミゼルたちは、酒場らしい大きな建物に入った。先頭のミゼルは、中に入ったところで、思わず足を止めた。酒場の中には幾つかのテーブルがあったが、そのテーブルの椅子には、椅子にかけたままの姿で何体ものミイラがあったからである。ミゼルの後から入ったアビエルとゲイツは、それを見て悲鳴を上げた。
「何があったんだろう。みんないきなり死んでしまったみたいだ」
アビエルが、怯えたような声で言った。
「熱風だろうな。それも、おそろしく強烈な奴だ。一瞬で町が滅びるほどのな。でなけりゃあ、悪魔の仕業だ」
ゲイツがアビエルを脅すように言う。アビエルには迷信深いところがあるので、それを聞いてますます怯える。
「よせよ。悪魔だなんて」
ミゼルたち四人は、井戸の在処を探した。やがて、町の長官の屋敷跡と思われる建物の中庭に、水のある井戸を見つけ、一行は一息ついた。
どの家にもミイラ化した死体が転がり、盗賊どもに荒らされた後らしく、金目の物はほとんど残っていなかった。
ミゼルたちは、この気味の悪い町を早々に後にした。
山麓の村シャイドを出て、ミゼルたちは砂漠に入った。ここからはずっと砂漠が続くのである。シャイドの村長のムスタファから聞いてあった、人の住んでいるアビスバとアサガイという砂漠の中の町を目指して進む。
砂漠に入って三日目、前方に町の姿が見えた。
「蜃気楼じゃないでしょうな」
ゲイツが物知りなところを見せて言った。
「シンキローって何だ?」
とアビエル。
「砂漠に現れる幻さ。言わば、町の幽霊だ」
腰の低いゲイツもアビエルに対しては言葉がぞんざいだ。
「幽霊ってのは、人間がなるもんだとばかり思っていたが、町の幽霊もあるのか。気味が悪いな。さっさと通り過ぎようぜ」
「そうはいかん。水が残り少ないから、井戸を探してみよう」
近づいていくと、それは蜃気楼ではなく、本物の町だったが、どうも様子がおかしい。人の気配がない。
町は城壁で囲まれた城塞都市だったが、門は開いていて、番兵もいない。
門の上にはカラスが群をなしてとまっている。カラスたちは、門の下を通っていくミゼルたちを見下ろして、不気味なしゃがれ声で鳴いた。
町の通りには、生き物の姿はまったく無かった。時折吹く熱い風で土埃が舞い上がるだけである。
大通りの両側に泥と煉瓦で造った四角な家々が並んでいるが、その家々の戸口の中は黒い闇があるばかりだ。
ミゼルたちは、酒場らしい大きな建物に入った。先頭のミゼルは、中に入ったところで、思わず足を止めた。酒場の中には幾つかのテーブルがあったが、そのテーブルの椅子には、椅子にかけたままの姿で何体ものミイラがあったからである。ミゼルの後から入ったアビエルとゲイツは、それを見て悲鳴を上げた。
「何があったんだろう。みんないきなり死んでしまったみたいだ」
アビエルが、怯えたような声で言った。
「熱風だろうな。それも、おそろしく強烈な奴だ。一瞬で町が滅びるほどのな。でなけりゃあ、悪魔の仕業だ」
ゲイツがアビエルを脅すように言う。アビエルには迷信深いところがあるので、それを聞いてますます怯える。
「よせよ。悪魔だなんて」
ミゼルたち四人は、井戸の在処を探した。やがて、町の長官の屋敷跡と思われる建物の中庭に、水のある井戸を見つけ、一行は一息ついた。
どの家にもミイラ化した死体が転がり、盗賊どもに荒らされた後らしく、金目の物はほとんど残っていなかった。
ミゼルたちは、この気味の悪い町を早々に後にした。
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