第十章 ロザリンの失踪
ミゼルたちの一行は、あえぎながら山を登っていった。朝から正午までずっと登っても、まだ山の中腹にもならない。
「魔女さんよ、魔法で空を一っ飛びして山を越えるわけにはいかんのかね」
ゲイツがロザリンに向かって、冗談交じりに不平を言った。
「空を飛ぶ魔法の使える魔法使いは滅多にいないよ。私一人なら、鳥になる手があるけどね。今持っている荷物や道具は全部捨てていくことになるし、鳥になれるのは自分だけさ」
「じゃあ、とにかく、鳥になって、上の様子を見てきてくれよ。どこが一番登りやすいかさ」
アビエルの言葉に、ロザリンは少し考え、いいよ、と言って林の中に姿を消した。
やがて林の中から、一羽の黄色い小鳥が飛び立った。小鳥はミゼルたちの頭上を二、三度旋回して、山頂の方へ飛んでいった。
「あれがロザリンかな」
半信半疑の様子でそれを見送ったアビエルが、先ほどロザリンが姿を消した林の中に入って行った。
しばらくしてミゼルたちの所に戻ってきたアビエルが手に持っていたのは、先ほどまでロザリンが着ていた服だった。
「やっぱり、あれがロザリンだ。この服が落ちていた。いい匂いがするぜ」
鼻の下を伸ばしたアビエルの言葉に、男たちは顔を見合わせた。
「ということは、ロザリンは今、真っ裸ということか」
ゲイツの言葉に、エルロイは困ったような顔で空を見上げて顎の下を掻き、ミゼルは顔を赤くしてうつむいた。
ミゼルたちは、ロザリンの戻るのを待ったが、ロザリンは帰ってこなかった。
とうとう夜になり、朝になったが、ロザリンはまだ帰ってこない。
ミゼルたちはここを出発する決心をした。おそらく、ロザリンの身に何かあったのだろう。この場を離れると、ロザリンとはぐれる危険性はあるが、ロザリンの魔法なら、彼らを見つけることはできるはずだ。それに、今の今にも、ロザリンの身に危険が迫っているのかもしれない。とすれば、早く出発したほうがいいはずだ。
半日ほど登り続けて、やっと山頂に達したミゼルたちは、下界を見下ろした。今自分たちが登ってきたヤラベアムの大半は緑に覆われた土地だが、その反対側のアドラムは、黄色と茶褐色の砂漠がほとんどである。それは、いかにも不吉な眺めであった。
ミゼルたちの一行は、あえぎながら山を登っていった。朝から正午までずっと登っても、まだ山の中腹にもならない。
「魔女さんよ、魔法で空を一っ飛びして山を越えるわけにはいかんのかね」
ゲイツがロザリンに向かって、冗談交じりに不平を言った。
「空を飛ぶ魔法の使える魔法使いは滅多にいないよ。私一人なら、鳥になる手があるけどね。今持っている荷物や道具は全部捨てていくことになるし、鳥になれるのは自分だけさ」
「じゃあ、とにかく、鳥になって、上の様子を見てきてくれよ。どこが一番登りやすいかさ」
アビエルの言葉に、ロザリンは少し考え、いいよ、と言って林の中に姿を消した。
やがて林の中から、一羽の黄色い小鳥が飛び立った。小鳥はミゼルたちの頭上を二、三度旋回して、山頂の方へ飛んでいった。
「あれがロザリンかな」
半信半疑の様子でそれを見送ったアビエルが、先ほどロザリンが姿を消した林の中に入って行った。
しばらくしてミゼルたちの所に戻ってきたアビエルが手に持っていたのは、先ほどまでロザリンが着ていた服だった。
「やっぱり、あれがロザリンだ。この服が落ちていた。いい匂いがするぜ」
鼻の下を伸ばしたアビエルの言葉に、男たちは顔を見合わせた。
「ということは、ロザリンは今、真っ裸ということか」
ゲイツの言葉に、エルロイは困ったような顔で空を見上げて顎の下を掻き、ミゼルは顔を赤くしてうつむいた。
ミゼルたちは、ロザリンの戻るのを待ったが、ロザリンは帰ってこなかった。
とうとう夜になり、朝になったが、ロザリンはまだ帰ってこない。
ミゼルたちはここを出発する決心をした。おそらく、ロザリンの身に何かあったのだろう。この場を離れると、ロザリンとはぐれる危険性はあるが、ロザリンの魔法なら、彼らを見つけることはできるはずだ。それに、今の今にも、ロザリンの身に危険が迫っているのかもしれない。とすれば、早く出発したほうがいいはずだ。
半日ほど登り続けて、やっと山頂に達したミゼルたちは、下界を見下ろした。今自分たちが登ってきたヤラベアムの大半は緑に覆われた土地だが、その反対側のアドラムは、黄色と茶褐色の砂漠がほとんどである。それは、いかにも不吉な眺めであった。
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