多摩美のサイトに掲載されていた佐野研二郎の代表作が、削除(公開停止)されてしまった。
──
前項 では、佐野研二郎の代表作として、多摩美のサイトに掲載されていたサイトを紹介した。(代表作の画像つき。)
→
http://www.tamabi.ac.jp/prof/pr/adv.htm これは、昨日の深夜の段階では、きちんと表示されていた。
ところが、今では、この作品が削除されてしまった。脱殻のようなページだけが残っている。
つまり、著名な広告賞を四つも受賞した、佐野研二郎の代表作が、「なかったこと」にされてしまったも同然だ。少なくとも多摩美としては、その方針である。
──
いったいどういうことかと思って、検索してみたら、こういう事情だった。
佐野氏が教授を務めている同氏の母校・多摩美術大(東京都)は、大学ポスターを含む他の盗用疑惑で、理事会の討議次第では来年以降に予定する講義が取りやめられる可能性があることを示唆。
同大の総務課によると、エンブレム問題に関しては「組織委員会が見解を示していますし、当校としては問題にするつもりはありません」と、撤回が決まったものの不問にする構え。ただ、問題となるのは、先月中旬に発覚したサントリーのキャンペーン賞品デザインと、数日前からネット上で指摘されている同大学の広告シリーズポスター「MADE BY HANDS.」の盗用疑惑だ。
特に「MADE―」は、大学に関わる問題とあって重要視。総務課では「近日中に行われる予定の理事会で、間違いなく議題として上がるのではないでしょうか」としている。現在、大学は夏休み中で、学内では騒動となっていないが、学外からメールなどによる指摘が届いているという。
同課の担当者は「理事会の結論次第では、佐野氏の講義が行われなくなることもあるのか」との質問には、「その可能性は否めないと思います」とした。理事会の緊急討議次第では、来年以降に予定されている「佐野プロジェクト」と名付けられた3、4年生の講義がなくなる可能性がある。
( → 2015年9月3日 スポーツ報知 )
他に、次の記事もある。
→
佐野氏母校の多摩美大困った…13年ポスターに疑惑 こういうふうに世間で話題になったことで、多摩美としても問題を放置できなくなったようだ。
で、当の画像が公開されなくなったので、何とか保存しようとして、Google キャッシュを探したり、魚拓を探したり、Web Archive を探したりしたのだが、どこにも残っていなかった。すべて削除済み。
せっかくの作品が、もはや見られなくなった状態だ。
──
ただし、必死に探すと、いくらかは見出すこともできる。たとえば、これだ。(サムネイルのみ。)
→
http://j.mp/1JPHP3y こっちのサイトもある。
→ http://www.dandad.org/awards/professional/2014/branding/23324/tamabi/
→ http://www.spoon-tamago.com/2013/05/09/made-by-hands-tama-art-university-ads-by-kenjiro-sano/ なお、佐野研二郎のサイトは、現在、閉鎖されているのも同然なので、何の情報も見つからない。
[ 余談 ] それにしても、ここまで来ると、もはや「すべてを失った」という状況だ。業界内で生きていくことも困難だろう。あらゆる仕事を失いかねない。その一方で、事務所の維持には、莫大な金がかかる。
→
MR_Design(佐野研二郎代表)のオフィスがオシャレすぎ このままだと、収入がないまま莫大な支出を迫られ、破産しかねない。人生そのものが破滅になりそうだ。
思えば、サントリーのトート・バッグの件が話題になった時点で辞退しておけば、これほどひどくはならなかっただろう。なのに、あくまで「おれは正しい、パクリはしていない」と言い張ったせいで、徹底的に絞られて、すべてを失うハメになった。
すべてを望んだせいで、すべてを失うことになった。
──
なお、私は前に、次のようにコメントしておいた。
佐野研二郎は、もはや自発的にデザインの撤回を申し出るべきだ。
一方、本人が何もしないでいると、どんどん世論の糾弾を浴びて、本人がぼろぼろになる。自殺行為も同然だ。
巨大な敵から巨大な攻撃を受けているときには、白旗を掲げるのが、生き延びるための唯一の策だ。
無為無策でいると、そのうち、原爆を落とされて、莫大な損害をこうむるだろう。
( → コメント by 管理人 at 2015年08月30日 10:17 )
ここで忠告したとおりになってしまった。(上記を書いたのは 30日だが、その翌日の 31日に、多摩美のポスターの盗用が発覚した。 →
別項 )
(引用2)
私は、デザインやデザイナーというものに興味がない。
しかし、「五輪エンブレム問題」をめぐるネットやマスコミの「騒動」には興味がある。
私が「ネット右翼亡国論」で問題にするテーマが、そこにあるからだ。
今回は、「盗作」や「パクリ」が問題になっている。デザインにおける盗作とパクリ。そもそもデザインにおける「オリジナル」とは何か。
ネットの世界では、「似ている」ということが、即、盗作やパクリということなっているようだ。「似ているか、似ていないか?」は、素人にも理解できる。
いわば、これが「ネットの正義」「ネットの倫理」である。
私は、そこに問題があると考える。
少なくとも、今回は、デザイン業界が、「アマチュアの倫理」に過ぎない「ネットの正義」に屈服した事件と見ていい。
これからデザイン業界は、「模倣」や「模作」「パスッテイッシュ」「オマージュ」という芸術や文学・・・に不可欠な技法に敏感になり、そういう技法に躊躇するようになるだろう。むろん、これによって、デザイン業界も、貧困化、凡庸化、幼児化していくだろう。