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立派な人が感心できない行為をすることもある

松本清張の「清張日記」の中に、玄宗皇帝と僖宗皇帝(徽宗皇帝とは別)が、反乱を逃れて蜀に行き、そこに雌伏してやがて再起を果たした、という記述があり、その原因は「蜀の桟道」にあった、ということが書かれていて、そこで、おや、と思ったのが諸葛孔明の「天下三分の計」である。うろ覚えだが、たしか、孔明が劉備に蜀を根拠地にすることを勧めた理由の一つが、蜀は防御がしやすい、という点にあったのではなかったか。つまり、「蜀の桟道」は軍隊が通りにくい険難である、ということだ。ということは、蜀に引っ込んで守りを固めてさえいれば、蜀の国は長く安泰だったのではないか。
ならば、孔明が幼主を説得して、魏との戦いに打って出ることを決意させたのは、これは亡国のふるまいではなかっただろうか。孔明ファンは多いから、こういうことを言う人はあまりいないようだが、現実に魏との戦いで疲弊した蜀は三国のうちで一番最初に滅んだはずだ。
そして、その原因を作ったのは、まさに孔明その人だ、と言えるのではないだろうか。
つまり、国の存亡よりも、孔明は自分の感情を優先するという、軍師としては最悪の行為をしたのではないか、というのが、私が言いたいことだ。その感情とは、「軍師としての名誉」「青史に名を残したい」という野望ではなかったか、と私は疑っている。もちろん、「出師の表」で言われたのは、先主劉備の恩義に報いるため、という名目だが、それをそのままに受け取っていいものか。何しろ、蜀が守るに易く、攻めるに難い地形に守られていて、そこを出さえしなければ国は安泰である可能性が高いことは十分に彼には分かっていたはずなのだから。
国の存亡よりも彼には優先したいものがあった、としか思えない。それが劉備の恩義に報いることだ、というのは立派に聞こえるが、果たしてそれは真実だったのだろうか。

立派な人が感心できない行為をすることもあるが、世間はそれを(彼の言葉だけを)善意に受け取って彼を許してしまう、ということがありそうだ。





(以下引用)




諸葛孔明の「出師表(前出師表)」の原文と書き下し文です  
 
 
 
●現代語訳
 
陛下の家臣である私(わたくし)、亮(りょう)が申し上げます。
 
先の帝(劉備)は、この国の基礎を作り始められてから、
その事業の半分も行えないままに完成の途中でお隠れになって
(亡くなって)、
 
今の天下は三つの国に分かれて、この益州(えきしゅう)の地は
疲れ果ててしまい、これは本当に危急存亡の時なのです。
 
そんな中でも陛下(劉禅)の護衛をしている兵士たちは
怠慢の気持ちを起こすことなく、心のこもった志を抱く役人たちは
外部の務めをこなしているのは、
 
つまりは先の帝に特別の礼でもてなされたことを思い慕って、
その御恩を子の陛下に報いようと思っているからなのです。
 
陛下はそのお心を広く開かれるご様子は、偉大なる先の帝の残された
徳により行われれば宜(よろ)しいと存じます。
 
わが国に尽くそうという志のある人々の心を広めて、
むやみとその相手の人格や能力によって、
昔のたとえを引用して主君と家臣の筋道をなくしてしまい、
それによって家臣たちが真心を持って陛下を諫める道を
ふさがないようにしていただきたいのです。
 
宮廷の中と役所の中の者たちが、ともに一体となって、
功績による官位の上昇や、罰による官位の下降、
人物の善し悪しの判断については、
人によって異なる点があってはならないのです。
 
もし悪事を行って法律を犯し、それによって真心によって
善行をしたのだということになれば、役人に任じてその刑罰と功績による
褒美を与えることについて判断をさせるときには、
 
陛下の公平で明らかな道理をはっきりとさせることによって
判断をさせるのが宜しいでしょう。
 
そのときには特定の人をえこひいきしたりして、
国内・国外の法を曲げないようにしなければなりません。
 
陛下に政務のことを申し上げる侍中(じちゅう)や役所の次官(じかん)
である侍郞(じろう)の郭攸之(かくゆうし)や、費?(ひい)や、
董允(とういん)らは、彼らは皆な善良で実直であり、
その志は真心があって素直であり、
 
そのことを見抜かれた先の帝によって多くの者たちから選び出されて、
そして陛下のために残されたのです。
 
私めは彼等に任じて宮中の仕事をすすめていき、
仕事の大小に関わることなく、すべて彼等に相談をして
その後に実施することで、必ずよく手落ちとなっている部分を
助けて補って、利益になるところが大きいのです。
 
将軍の向寵(こうちょう)は、性質と行いは穏やかで公平であり、
軍事に関する道理に通じており、以前、彼を試みて用いてみると、
先の帝は彼を賞賛して能力のある人と仰せられました。
 
このことによって多くの人の相談によって彼を軍の指揮官としました。
私めは彼に軍事上のことを任せて、すべてを彼に相談することによって、
必ずよく部隊をうち解けさせて、その個々人の能力にあった役割を
与えていきました。
 
才能や仁徳にすぐれた家臣に親しんで、
人格の劣ったくだらない者たちを遠ざけるのは、
これは初期の漢の国の盛んになって栄える理由なのです。
 
一方で人格の劣ったくだらない者たちに親しんで、
才能や人格にすぐれた家臣たちを遠ざけるのは、
これは漢の国の末期に、勢力が衰えてしまった理由なのです。
 
先の帝がご存命の時、常に私めとこの事を議論なされまして、
どの日も後漢の国家を衰えさせた桓帝(かんてい)と霊帝(れいてい)の
時代を嘆いておりました。
 
侍中(じちゅう)や、中央官庁の長官である尚書(しょうしょ)や、
宰相である私の次官である長史(ちょうし)や、
軍の相談に当たる役人の参軍(さんぐん)の者たちは、
 
彼等はすべて志がまっすぐですぐれており、
大義のためには命を惜しまない家臣たちであります。
 
陛下にはどうか彼等と親しまれて信頼なさって、
それによって漢の王室が栄えることを、
日々はかりごとをめぐらしながら待たれることを願います。
 
私めは元々庶民の身分で、南陽という土地で自分で田畑を耕すことに
よって、何とかこの命を乱世のなかで天寿を全うさせることだけを
望んで、有名になって君主にまで出世をすることを
求めることはなかったのです。
 
先の帝は私を下品な田舎ものとして取り扱うことをなさらず、
むやみとご自身をへりくだって来訪を重ねられ、
三度も私を私の粗末な草葺きの庵(いおり)の中を振り返られて、
私に今の世の中のことを相談なされました。
 
このことによりまして私めは感激し、
ついには先の帝のために駆け回って尽くすことを許されました。
 
後には国家の滅亡に遭遇し、任務を軍が敗れる時期に受けて、
災難に遭う時にご命令を謹んで受けて、
その頃から今まで二十一年になります。
 
先の帝は私めの行いが慎み深いことを知られて、
それによりまして先の帝がお亡くなりになるときに、
私めに国家の重大な仕事を任せられました。
 
私めはそのご命令を受けて以来、朝早くから夜遅くまで、
思い悩んでため息をつき、人に頼むことによって
成果を出すことが出来ないことで、
先の帝の道理の明るさを傷つけてしまうのを恐れておりました。
 
そこで五月に瀘水(ろすい)という川を渡って、
作物が十分に育たない土地の中へと深く入っていきました。
 
現在は南方はすでに平定されて、武器とよろいかぶとは
すでに十分にそろっておりますので、
今こそ大軍を統率して北にある天下の中央部である
中原(ちゅうげん)を平定して、
 
家臣たちは皆でその鈍い才能を尽くして、悪者たちを払い除いて、
漢の王室を元通りに復興し、昔の都に戻すのがよいのです。
 
もしその功績が上がらなければ、私の罪をきめて、
そして先の帝の御霊(みたま)に報告します。
 
もし民衆に恩恵を施す言葉がなければ、
それならば郭攸之(かくゆうし)や、費?(ひい)や、董允(とういん)らの
過ちを責めて、そして彼等の怠慢を明らかに致します。
 
陛下もまたご自身で調べられて、そして臣下に意見を求めて相談して
正しい方向へ導き、良い言葉を聞き入れて、
深く先の帝のご臨終の時のお言葉を思い出していただきたいのです。
 
私めは陛下の御恩を受けて感激をこらえることができません。
 
今、私めは任務を受けて陛下の元を遠く離れるにあたり、
私の心意を申し上げることで涙を流し、
何を言うべきかわからないほどです。
 
 

ベストアンサー以外の回答

1〜2件/2件中


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    2011/12/2203:15:45



    戦争は
    「いかに敵より多くの兵を維持・運用できるか」
    極論すればコレですので、質問者様の仰るとおり、そこさえ解決すれば魏を叩けます。

    ただ難点は他の回答者様も言うとおり、蜀の桟道ですね。
    守り安い地形は打って出にくい地形でもあります。
    蜀の補給難はまずここの解決からでしょう。
    また、孔明の指揮能力はさて置いて、実際は魏の方が人材の層は厚いです。
    蜀は本来成都で業務を行っているべき内政官まで総動員して遠征しているのを見ても分かると思います。

    加えて魏の統治は安定していますから、漢の劉邦の様に次々と味方を増やしつつ進撃できるわけでもありません。
    ですので、非常な困難が予想されます。
    戦争で不利、と言う事は多くの場合複合的な要因がありますので。


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