この美術館を作った人(大塚製薬創業者)は、日本の金持ちには珍しく、金の使い方を知っている人である。
私は昔からオロナイン軟膏を愛用してきたが、これからはいっそう愛用することにした。私の使った金の一部が、この美術館を形成しているわけだ。まあ、道路の砂利1個分くらいは。
(以下引用)
2015.08.23(日)
■驚愕と茫然の大塚国際美術館
大塚国際美術館、名前だけは聞いたことがあった。世界中の名画を原寸大で陶板に焼き付けた作品が並ぶ美術館だという。徳島にあるという。大塚製薬の創業者が一念発起して作った美術館だという。正直、偽物がずらずら並んでるだけかー、なんか変なお金持ちの道楽か?珍スポットの一種か?と思っていたんですよ。しかし、行った人はみんな大いに満足しているらしい。そしてこんな記事である
君は「行ってよかった美術館ランキング」1位の大塚国際美術館を知っているか。 - いまトピ
これは一度は行ってみなければなるまい…これまで47都道府県のうち、徳島と宮崎が未踏の身としては、徳島に行く機会にもなるし。と、阿波踊りの熱狂が通り過ぎた後の日曜日。阿波踊りのイメージが氾濫する徳島阿波踊り空港に降り立ち
路線バスで鳴門市にある大塚国際美術館に向かう。途中、大塚国際美術館がある島に渡る橋の手前に、巨大な大塚製薬の倉庫が並び、その壁面にポカリスエットやオロナミンCやボンカレーの壁画が並ぶのを見ると、ああもう戻れないのだ、と、MIHOミュージアムにバスで向かった時のような緊張感と高揚感に包まれてくる。
MIHOミュージアム『中国・山東省の仏像-飛鳥仏の面影』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
そして美術館に近づくにつれて、目の前にインパクトのある建物が迫って来て『いったいどっちなんだろう…』と不安になってくる。一つは山の下に竜宮城のような大伽藍、もう一つは山の上に某学会の記念講堂のようなギリシア風大伽藍。結論からいうと、両方なのである
竜宮城は、大塚グループの保養所か何かであるらしい。そして目の前に大塚国際美術館、エントランスどーん
瀬戸内海国立公園の敷地内にあるために高い建物は建てられなかったというその美術館は、山の下にエントランスがあり、山をくりぬいて地下三階までの巨大空間が広がり、山の上にギリシア風…と言ったらいいのだろうか、2階建ての建物からなる、延べ床面積29,412平方メートルの美術館である。これは翌日、展望台からみた美術館です
3,240円と相当お高い入場料を払い、エントランスを入ると、地下三階の展示スペースに向かう長大なエスカレーターがどーん。そしてエスカレーターを登りきると、巨大なフロアがどーん、そして目の前に、この美術館の目玉でもある、原寸大システィーナ礼拝堂がどーん
建物が目に入った時から『ふぁー』みたいな頭の悪そうな声しか出なくなっており、これはちょっと、気持ちを落ち着かせてから見学したほうがいいのではないか、レストランがあるので飯を食ってからにしよう…と、案内の人にレストランの場所を聴く。目の前のエレベータではなく、その通路を入った先に大きめのエレベーターがありますから、それで上がっていただければー、というので脇の通路に入るとですね。いくつか写真パネルがあって、なぜかシスティーナ礼拝堂で歌舞伎
大塚国際美術館 「第六回システィーナ歌舞伎」鑑賞ツアー|国内旅行(ツアー)|ANA SKY WEB TOUR
なんなんだここは。そして『大きめのエレベーター』は50人は乗るのではという、本当に大きなエレベーターで、このあたりで圧倒されすぎて、もうなんか、展示物ちゃんと見る前から負けましたという感じになってきて、笑いが止まらなくなってくる。なかなか美味しいレストランのお食事をいただきつつ(最後の晩餐をイメージしたメニューもあるけどやめておきました…)、お庭を眺めてしばし
展示スペースの広さ…普通に順路を巡るだけで4kmぐらい歩くらしい…に軽く眩暈がしてくるようなカラーの『館内のご案内』と、16ページ1,074点に渡る『展示作品リスト』、ひたすら名前を聞いたことのある名画が目白押しな、地球を征服した宇宙人が押収した地球の壁画絵画リストかな?というような展示作品リストを読み込みつつ、さてだいぶん、元気も回復してきたので地下3階に戻り、展示作品を見て行きましょう
システィーナ礼拝堂である。ミケランジェロである。もちろん、偽物である。偽物ではあるけれど、陶板に転写焼成されたその出来栄えはなかなか見事なもので、そしてこのスケールである。原寸大のスケールである。『はー』『ほへー』『すごいねえ…』と感嘆の声ばかりあがる。
この地下三階の空間、『環境展示』と名付けられた、展示空間をそのまま再現した空間が売り物になっている。システィーナ礼拝堂を出ると、古代中世の作品たち、聖マルタン聖堂
さらには、ポンペイの秘儀の間やら、鳥占い師の墓やら…カッパドキアの聖テオドール聖堂などは、洞窟までそのまま再現されてしまって、もう笑うしかない、いや笑ってる場合じゃないけど、よくまあここまでやったわ!と感嘆するしかないのであった。そしてこれらが、写真撮り放題、触り放題なのである。明るい光で空いている空間でいくらでも見放題なのである。
もちろん現物を見るのが一番なのであるけれど、大混雑していて照明も暗く…という現物にはないアドバンテージがここに。そして原寸大環境再現の偉大さよ、現地に実物を見に行く研究者が、全体をじっくり見てイメージを形成するために、さきにこの美術館を訪れてから行くこともあるらしい。そういう使い方があるんですね…
系統展示と称して、時代の作品をずらりと並べた空間も、どこまでもどこまでも作品が並び、どれもこれも、あ、教科書で見たことある!みたいな作品ばかりであり。地下三階だけでもかなり満腹感があるのに、さらにこれが地下二階のルネサンス、バロックへと続き…
レンブラントばかり集まった部屋、受胎告知ばかり集まった部屋、最後の晩餐は修復前後が両方あるぞ…
修復前後を並べて展示するという、普通ならできないような体験を原寸大でできる、すごい
なんかもう、このあたりまで来ると、途中で止まらなくなってとりあえず名画という名画は全部再現しちゃいましょうか、みたいな狂気に近い情熱になっているのだろうか…と、とにかくすごいものを見せられているなあ、と。展示スペースがわりと複雑な構成になっていて、もうその奥まで行かなくてもいいか…と思いつつ入り込むと突然大空間が出てきて大作品に圧倒されたりですね。さすがに疲れてきて
1/4くらいのあたりから、まだあるのか…と途方に暮れる規模なのである。よもや、途方に暮れ具合でルーブルやウフィツィや大英博物館を疑似体験できる施設が日本にあるとは思いませんでしたよ…。
陶板画の作成方法について解説しているスペースもなかなか興味深いものがあったし
そうだよなあ、キトラ古墳の再現とか、まさにこの技術を使うためにある、って感じだよなあ…。このあとは近代の作品になってくるので、ちょっと、そこまでする必要はあったのかな…みたいな気にもなるけれど、あ、これこないだ日本の美術館に来ているのを見た!みたいな楽しみ方もできるのだった
ゲルニカにポロックまであるんですからね…なんだかんだ言って、原寸大って偉大だわ
全1,074点、ゆっくりまわっても数時間、歩く距離だけで4km、3,240円という入場料がまったく高いとは思わない、一大エンタテイメントだったのです。話のネタに、だまされたと思って一度は来る価値のある美術館であります、大塚国際美術館