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成績を上げられない人間が生存できない社会

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」記事の一部である。この後は有料記事なので読んでいないが、下の部分の指摘はなかなか重要ではないかと思う。

1)例のキャッチコピーは「上からの指示」ではないか。
2)上の人から見て「頑張らない人」を糾弾する社会の空気が今後醸成されるのではないか。

つまり、日本社会のさらなる「ブラック化」が進行するだろう、ということである。


(以下引用)




 もうひとつ不可解なのは、普通の読解力を持っている日本人なら、誰であれ一見して炎上が予想できる
「障がいは言い訳にすぎない」
 というキャッチコピーが、制作段階でチェックされずに制作→印刷→掲出にまで至ってしまった点だ。
 
 この種のPRにかかわる制作物は、通常、ラフ案の検討から最終版下の下版に至るまでの制作過程の各所で、様々な立場の人間の目による複数のチェックを通過して、はじめて完成に至ることになっている。
 ということはつまり、誰が見ても炎上しそうなこのコピーが、最後まで無事にチェックを通過したこと自体が、極めて例外的ななりゆきだったと申し上げねばならない。



 しかも、あらかじめ炎上上等の鉄火肌で業界を渡り歩く覚悟を決めているやぶれかぶれの集団ならばいざしらず、当該のPRポスターの制作主体は、炎上やクレームを何よりも嫌うお役所である東京都だ。



 どうして、こんなトンデモなブツが刷り上がってしまったのだろうか。
 私のアタマで考えつく範囲のシナリオとしては、当該のコピーが
「上から降りてきた案件」
 だった可能性くらいだ。



 たとえば、組織委員会なり、都庁なり、あるいは競技団体なりのボスかでなければその側近、あるいはさらに上の人あたりが、このコピーの発案者であるのだとしたら、これはもう、現場の人間は誰も口を出せない、という状況もありえるだろう。



 ともあれ、ポスターは制作され、掲示され、撤去された。
 制作過程で何があったのかは、どうせわれわれには明かされない。
 私もこれ以上は詮索しない。



 ただ、「障がいは言い訳にすぎない」なる文言を大書したポスターが掲出されるにふさわしい空気は、五輪招致決定以来、東京都内に蔓延しはじめているとは思う。



 どういうことなのかというと、アスリートを前面に押し出して
「頑張る人を応援する」
 という一見前向きなメッセージを発信しつつ、その実、
「頑張らない人」
 や
「甘えている人間」
 や
「現状に安住している市民」
 を攻撃する言説を広めようとしている人々が、各所にあらわれはじめているということだ。





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