第五章 昆虫の王
その頃、真たち同様にロシュタリアの北側の大森林の中に投げ出された陣内は、気が付くと、バグロムたち、つまり真たちがエル・ハザードで最初に遭遇した昆虫人間たちに周りを取り囲まれていた。
「な、何だ、お前たちは。私が東雲高校生徒会長と知っていて危害を加えるつもりか!」
意味不明の言葉を言いながら、陣内は逃げ場を探した。
しかし、昆虫人間たちは互いに顔を見合わせながら、戸惑っている様子である。
(セイトカイチョウ? ナンダ、ソレハ)
(ドウモ、エライ者ノコトノヨウダ)
(デハ、ダイジニアツカウ必要ガアル)
(でぃーば様ノトコロニ連レテイコウ)
なぜか、陣内の言葉が彼らには通じているらしいのである。
「何だ、お前たち、案外いい奴ではないか。そうか、そうか、私の偉さがお前たちにも分かったか」
陣内は、ご満悦である。自分の存在を高く評価してくれるなら、相手が人間だろうが、虫だろうがかまわないらしい。
バグロムたちが陣内を連れていったのは、森の奥の谷間にある巨大な建造物であった。蜂の巣か蟻の巣をより高層化し、立体的にしたような要塞で、外壁は土を固くしたもので作られている。
そこで陣内が引き合わされたのは、バグロムたちの女王であった。これが何と、見かけはほとんど人間の女と変わらない。頭から触角が出ていることを除けば、まあ、いい女と言ってもいいくらいである。これが卵を産んで、すべての兵隊蟻たちの母親になるのだと考えると、あまりぞっとしないが、陣内にはそういう偏見は無い。彼の唯一の美点は、人間も昆虫も同じレベルで見ることができるということであろう。
「お前がこの昆虫たちの女王か。なかなか美人ではないか」
そう言われて、バグロムの女王ディーバはポッと顔を赤らめた。生まれて初めてお世辞を言われたのだから、虫とは言え、嬉しいことは嬉しいのだろう。
「まあ、何と好いたらしいお方」
「そうだろう、そうだろう。私の名は陣内克彦、この世の支配者となることを運命づけられている男だ」
「何と、この世の支配だと? それこそ我々バグロムの望むこと。我々は、人間どもを駆逐して、エル・ハザード全体を我々の支配下に置くことが、かねてからの望みなのだ」
「それでは、お前たちは願ってもない男を手に入れたことになる。私の頭脳をもってすれば、相手がどんな奴だろうが打ちのめすのは容易なこと」
「そ、そうか。では、陣内殿、我々のために働いてくれると?」
「そうだ。まあ、それなりの待遇はして貰わんと困るがな」
「いいだろう。毎日、アブラムシ十匹ずつ与えようか? 」
「アブラムシだと? そんなもの食えるか。まあ、食事は自分で適当に見繕うからいい。まず、この世界の様子を話してくれ」
陣内の見たところでは、この昆虫人間どもの知能指数、精神年齢は、人間なら小学低学年程度であった。
(こいつら、体力だけはありそうだし、女王の命令には絶対服従ときている。まさに理想的兵隊というもの。支配者たるべき私のために準備されたも同然の連中。この世界こそ、まさしく私のためにある! キャッハハハハハ)
心の中で高笑いしながら、陣内はかねてからの夢である世界征服に一歩を踏み出した喜びに打ち震えるのであった。
その頃、真たち同様にロシュタリアの北側の大森林の中に投げ出された陣内は、気が付くと、バグロムたち、つまり真たちがエル・ハザードで最初に遭遇した昆虫人間たちに周りを取り囲まれていた。
「な、何だ、お前たちは。私が東雲高校生徒会長と知っていて危害を加えるつもりか!」
意味不明の言葉を言いながら、陣内は逃げ場を探した。
しかし、昆虫人間たちは互いに顔を見合わせながら、戸惑っている様子である。
(セイトカイチョウ? ナンダ、ソレハ)
(ドウモ、エライ者ノコトノヨウダ)
(デハ、ダイジニアツカウ必要ガアル)
(でぃーば様ノトコロニ連レテイコウ)
なぜか、陣内の言葉が彼らには通じているらしいのである。
「何だ、お前たち、案外いい奴ではないか。そうか、そうか、私の偉さがお前たちにも分かったか」
陣内は、ご満悦である。自分の存在を高く評価してくれるなら、相手が人間だろうが、虫だろうがかまわないらしい。
バグロムたちが陣内を連れていったのは、森の奥の谷間にある巨大な建造物であった。蜂の巣か蟻の巣をより高層化し、立体的にしたような要塞で、外壁は土を固くしたもので作られている。
そこで陣内が引き合わされたのは、バグロムたちの女王であった。これが何と、見かけはほとんど人間の女と変わらない。頭から触角が出ていることを除けば、まあ、いい女と言ってもいいくらいである。これが卵を産んで、すべての兵隊蟻たちの母親になるのだと考えると、あまりぞっとしないが、陣内にはそういう偏見は無い。彼の唯一の美点は、人間も昆虫も同じレベルで見ることができるということであろう。
「お前がこの昆虫たちの女王か。なかなか美人ではないか」
そう言われて、バグロムの女王ディーバはポッと顔を赤らめた。生まれて初めてお世辞を言われたのだから、虫とは言え、嬉しいことは嬉しいのだろう。
「まあ、何と好いたらしいお方」
「そうだろう、そうだろう。私の名は陣内克彦、この世の支配者となることを運命づけられている男だ」
「何と、この世の支配だと? それこそ我々バグロムの望むこと。我々は、人間どもを駆逐して、エル・ハザード全体を我々の支配下に置くことが、かねてからの望みなのだ」
「それでは、お前たちは願ってもない男を手に入れたことになる。私の頭脳をもってすれば、相手がどんな奴だろうが打ちのめすのは容易なこと」
「そ、そうか。では、陣内殿、我々のために働いてくれると?」
「そうだ。まあ、それなりの待遇はして貰わんと困るがな」
「いいだろう。毎日、アブラムシ十匹ずつ与えようか? 」
「アブラムシだと? そんなもの食えるか。まあ、食事は自分で適当に見繕うからいい。まず、この世界の様子を話してくれ」
陣内の見たところでは、この昆虫人間どもの知能指数、精神年齢は、人間なら小学低学年程度であった。
(こいつら、体力だけはありそうだし、女王の命令には絶対服従ときている。まさに理想的兵隊というもの。支配者たるべき私のために準備されたも同然の連中。この世界こそ、まさしく私のためにある! キャッハハハハハ)
心の中で高笑いしながら、陣内はかねてからの夢である世界征服に一歩を踏み出した喜びに打ち震えるのであった。
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