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無人レジの拡大は何をもたらすか

後日考えるための資料として保存しておく。
雇用問題に関する暗い未来が予感される。もちろん、庶民のさらなる貧困化の予感も。


(以下引用)




ユニクロ系、究極の人員削減施策が始動か…ほぼ手間ゼロの画期的セルフレジ開始の狙い
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 ファーストリテイリングが展開する格安ファストファッションチェーン、GU(ジーユー)の4店舗で実験が始まったセルフレジ。昨年夏からGU全店、今年6月からユニクロ全店に順次導入するとのことだったが、かなり遅れているようだ。実験店の一つである横浜市の港北ノースポート・モール店では、ほとんど稼働していなかった。セルフレジがあるのかどうかさえもよくわからなかったが、今年6月からその店でも本格稼働するようになった。


 スーパーマーケットなどのセルフレジは、客自身がバーコードをスキャナーに当てて読み取らせる方法が一般的だ。セルフレジに近いものとしては、バーコードは店側のレジ係が読み取り、清算(支払い)だけ客が自身で行うという半セルフ方式もある。


 GUのセルフレジはもっと進んでいる。客はレジ前に行き、コインロッカーのようなボックスに商品を入れる。すると瞬時に読み取って、画面に商品名や値段、合計金額が表示される。客はそれを確認し自分で清算するというものだ。


 画期的なのは、商品を一つひとつスキャンしないで済むことだ。スーパーのレジは、10商品あると10回スキャンをしなければならないが、GU式はボックスに入れた商品をすべて瞬時に読み取ることができる。


 自動認識の媒体には、昔の入学試験などでよく使われたOCR文字、マークセンテンス、バーコード、QRコードなどのほか、SuicaのようなICカードもある。GUなどで使われている媒体は、Suicaと同じ無線を使用する電子タグ(IC チップ入り非接触タグ)と呼ばれるものだ。無線でデータを通信するので、接触する必要がない。


 画期的といったが、このシステムは最近開発されたわけではなく、30年以上前に完成されていた技術だ。著者は会社員時代、自動認識業界にいたことがある。昭和の時代には、バーコードはすでに広く使われ一般的になっていた。普及間もないその時代に、あれだけ便利なバーコードだったが、業界はそれに満足していなかった。一つひとつの商品をスキャンするのではなく、一度にすべての商品を読み取りたいという需要が非常に大きかった。


 人間の欲求はとどまることがないが、バーコードの自動読み取りが便利だからこそ、それ以上のものを求めた。自動認識の発展形を要望する声は、流通業界やFA(ファクトリーオートメーション)業界だけでなく、ほとんどの業界で湧き上がり、その企画・開発に各企業はしのぎを削った。


 その需要に応えて、ICチップを商品に取り付けて瞬時に読み取るシステムも開発された。著者も当時、同業者の人たちと、そのシステムが公開された展示会に出かけ実演を見たことがある。システム的に問題はあったが、著者も含め一緒に見た同業者の人たちも「レジ時間の短縮など、省力化には強力な武器となることは間違いない」という感触を持った。


●問題はコスト


 そこで問題なのがコストだった。それも、システムやハードではない。媒体のICチップ(ICタグ)のコストである。


 システムやハードの導入は一時的な費用だが、ICタグはリサイクルもできないわけではないが、消耗品として考えなければならずランニングコストになる。約30年前当時、ICタグ1個10円で、さまざまな業界の人たちが「それは高すぎる。とても導入できるコストではない」と開発企業に詰め寄った。なぜなら、「コストさえクリアできれば普及することは間違いない」と直感したからだ。


 すると、開発企業の担当者から返ってきたのは「来年には5円くらいになると思います」という返事だった。「それでもまだ高い。せめて1円か2円でないと無理だ」というのが、業界共通の感触だった。ちなみに、その1年後に5円になることはなかった。


●利益面でのメリットがないのに、なぜ?


 ビジネスホテルでもセルフレジは急速に進んでいるが、どの業界でも「慢性的な人手不足」「人件費の節減」「現金を従業員に触れさせたくない」といった課題を少しでも解決したいからこそ、便利なシステムを導入したいのだ。棚卸、在庫管理や店間移動などの効率化では、物足りない。


 ファストリも、同じ課題を抱えている。その課題を解決する妙案がセルフレジだ。しかし、ユニクロも含めた全店舗で展開できるのだろうか。できないとすれば、その理由は、ICタグのコストに尽きる。GUが採用するのは「ICラベル」だが、果たしていくらで仕入れているのだろう。ラベル代だけでなく、それを貼付する手間もかかる。


 1枚1円+貼付代1円の計2円で済んだとしても、高額商品なら吸収できるかもしれないが、低額商品のGUには負担がかなり重い。もちろん、それ以外にシステムやハードの費用も発生する。


 では、なぜ全店舗展開が遅れているのだろうか。それは、省力化のメリットが利益として反映されていないからだ。それでもセルフレジを展開したいのはなぜか。


 それは、顧客に対するイメージ戦略もあるが、何よりも望んでいるのは「他社の皆さん、ぜひ採用してください」という思いしかない。その他社というのは、衣料品業界ではない。食品・日用品を扱う流通業界全体に対してだ。他社が利用することで、ICタグのコストを下げたいのだが、衣料品業界だけでは規模が小さい。これを流通業界全体で使ってくれれば、コストが劇的に安くなる。


 ただし、業界がICタグを採用したセルフレジを導入するには、今でも大きな壁がある。それについては別の機会で解説するが、それを承知でファストリは挑戦している。


© Business Journal 提供

●小さな革命


 バーコードを媒体としたPOSシステムを最初に本格導入したのは、セブン-イレブンである。その当時「こんなもの成功するわけがない」という声が大きかった。しかし、しぶしぶの企業もあったが、業界をあげて協力して成功の道をつかんだ。その結果、セブンだけでなく、流通業界全体の発展に自動認識システムは多大なる貢献をした。


 人の目に触れるというのは、大きなインパクトを与える。どんな方式だろうが、セルフレジが流通業界に小さな革命を与えることは間違いない。そして、遅かれ早かれ業界全体に普及していくだろう。


 しかし、その反面として「雇用が失われる」という大きなデメリットもある。たとえば、セルフレジの導入で、ファストリの従業員が半分に削減されたとすると、それは社会にとっていいことなのだろうか、危惧すべきことなのだろうか。どんなものでも、便利なものを求めれば、その反動は必ずあるものだ。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)




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