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少年騎士ミゼルの遍歴 34

第三十四章 美しい仲間

「とうとう、破邪の盾を手に入れる者が現れたか。これで、この神殿も役目を終えたわけだ。ミゼルよ、リリアも共に連れていくがよい。お前だけの力では、まだカリオスを倒すことはできないだろう。リリアには霊力がある。きっとお前を助けることができるだろう」
 神官は、感無量の面もちでミゼルに言うと、美しい娘に向き直って言った。
「リリアよ、この若者と共に行くのだ。この若者には、常人にない力がある。カリオスを倒せるのは、このミゼルだけだろう。今カリオスを倒さないと、やがては全世界が悪魔の支配下に収められるはずだ。奴を倒すのは容易なことではないが、お前たちが力を合わせれば、可能かもしれない。まずは、最後の聖なる武具、神の鎧と兜を手に入れるために、森の島エタムに行くがよい」
「でも、お父様、私が行くと、お父様はここで一人ぼっちになってしまいますわ」
「心配はいらぬ。お前がどこにいようが、わしの魔法でお前と話すことはできる」
「それなら、私は参ります。ミゼルさん、ご一緒してよろしいでしょうか?」
「ええ、それはもちろんですが……」
 ミゼルは、思いがけない展開に戸惑っていた。この美しい娘が仲間になるのは嬉しいが、あまりにも危険な旅に、この娘を伴っていいのだろうか。
「ミゼルよ、お前が思うより、この子は強いぞ。魔物と戦う力は十分にあるはずだ。世間知らずな娘だが、よろしく頼む」
 神官は、ミゼルの心を見抜いたように言った。
「はい、分かりました」
 ミゼルたちは、先ほどリリアが降りてきた階段を上って外に出た。
 何百段もある階段の先は、明るい出口になっており、そこを出ると、島の頂上の丘だった。ミゼルが洞窟を彷徨っている間に、外は朝になっていたようだ。東の海の上から、今、朝日が昇りつつあった。
「この出口は、魔法で封印されていて、普通の人には見えないのよ」
 リリアが教えた。
 ミゼルたちを見送るために付いてきた老神官は、そこで足を止めた。
「では、これでお別れだ。カリオスを倒した暁には、ここにもう一度戻ってくるがよい」
「はい、お父様。それでは、お体にお気をつけて」
「お前もな。では、さらばじゃ」
 老神官は、リリアを強く胸に抱いて、別れを告げた。その目には、うっすらと光るものがある。
 ミゼルとピオは、リリアとライオンのライザを伴って仲間たちの所に戻った。仲間たちは、突然現れたこの美しい娘と不思議な獣に驚き、戸惑ったが、もちろんこの新しい仲間の参加を喜んだ。しかし、ミゼルには、ザキルの、リリアの体をなめ回すようにを見る目が不愉快で、気にかかった。ピオもマキルもメビウスも、美しい娘の出現を喜び、はしゃいでいたが、ザキルの目つきは、それらの無邪気な喜びとは異なるもののように思われたのである。田舎者だが、ミゼルはそういう勘は良かった。

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HN:
酔生夢人
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男性
職業:
仙人
趣味:
考えること
自己紹介:
空を眺め、雲が往くのを眺め、風が吹くのを感じれば、
それだけで人生は生きるに値します。

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